岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/12/26

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2018/12/09配信「『シン・ゴジラ』予習編は妄想全開!続編を、庵野監督が作ると?ハリウッドが作ると?」の内容をご紹介します。
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2018/12/09の内容一覧


怨念と不条理を描こうとした初代『ゴジラ』

 まあ、とにかくすごかったです。この『ゴジラ』っていう映画は。
 とにかく、色がないモノクロ映画ですから、ドキュメント映画を見てるみたいなものなんですね。昔のモノクロの記録フィルムを見ているようなリアリティが全編を通じてあるんです。
 その上、映画に出ている人も映画を作っている人も、「怪獣映画」という概念がないし、「怪獣映画とは子供が見に来るものだ」という考え方もないんです。というか、よくよく取材して聞いてみると、当時『ゴジラ』を作っていた人たちには、そもそも子供が見に来るとは思ってなかったんですね。
 なので、作る時にも一切の手を抜いていないんです。

 例えば、日本にゴジラが現れた時、考古学者の山根博士という人が国会に呼ばれて「あの怪物はなんなんだ?」ということに関して証言するシーンがあるんですけど。
 こういうシーンって、今の怪獣映画だったら「お約束」なんですね。お約束として「怪獣が出た → 対策委員会ができた → 政治家とか官僚が集まって、学者に正体を聞く → しかし、学者はわかりませんと答える」という一連の流れをやるんです。
 だけど、当時の映画では「こんなことが本当にあったら、どうなるんだろうか?」という、手探りで作っている。だから、どのシーンもメチャクチャリアルなんですね。
 カメラの置き方とか撮り方とか、俳優さんの演技の間合いとかが、すごくリアル。ついこの間までやっぱり戦争していたもんですから、そこらへんのリアルさが半端ないんです。

 ゴジラというのは、口から「白熱光」というのをバーっと吐くんですけど。
 後のシリーズになると、それもアニメーションになって、青白く光るものを吐くと「あれは、ゴジラの放射能火炎だ!」とか言われるようになるんですけど。
 第1作の『ゴジラ』の時には、そんな名前も何もついてないんですよ。

 ゴジラが口を開けるシーンの撮影のためには「ギニョール」っていう、小さいぬいぐるみみたいなものを作っているんです。
 大きい着ぐるみでも、もちろん口を開けることはできるんですけど。ゴジラの着ぐるみ自体はゴムでできていて、かなりカチカチの材質だったんですよ。
 そんな着ぐるみではまったく動けないから、しょうがないからナイフでゴムの着ぐるみのそこら中に切れ目を入れて、なんとか動けるようにしていたほどです。なので、口に関しても、そう簡単にパクパク開かないわけですね。
 なので、ギニョールと呼ばれる、下から手を入れるマペットみたいなものを作って口を開いて、その口の中からスプレーをシャーッと噴射して、そのスプレーに斜め横からライトを当てることによって、まるで白い息というか、何かを放射しているように見せているんです。
 そして、その放射しているものが当たると、次は特注で作った鉛製の鉄塔のミニチュアがグニャリと曲がる。これは、高温の風を当てることで表現しています。
 これらはすべて、後のゴジラシリーズで生まれるお約束の「放射能火炎のシーン! 背中が光ります! 口からパーッと出します! すると、景気のいい爆発がドンドンと起こります! ゴジラ、強いぞー!」というシーンとしてではなく、「海から上がってきた怨念のようなものが、口から何かを吐き出すことによって、周りのものを溶かしてしまうエゲツなさ」というのを描こうとしているんです。

 そもそも「なんで口から何かを吐いたら、鉄が溶けるのか?」という説明も一切なしにやってるんですよ。
 つまり、「強い」という表現じゃないんですよ。この時のゴジラというのは「敵わない」とか「不条理」というものの塊なわけですね。

 お話に関しても一切の説明がないんですよ。これは実は『シン・ゴジラ』も同じなんですけど。
 「なぜ、ゴジラが東京を襲うのか?」、「なんで毎晩、夜になったら上陸してきて、東京をひとあたり破壊すると、朝になる前に理由もなく海に帰って行くのか?」について、まったく答えが出されない。
 怖いでしょ、これ?(笑)

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