岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/12/27
おはよう! 岡田斗司夫です。
岡田斗司夫アーカイブチャンネルの会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。
サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています(2018年12月1日より新サイトに移行しURLが変更されました。これに伴い、ログイン画面も変更されています。詳しくはメール末尾の注意事項をご覧ください)。
(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「メルマガ専用 岡田斗司夫アーカイブ」、「岡田斗司夫 独演・講義チャンネル」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
この記事は、PHP新書から発売された岡田斗司夫の新刊『ユーチューバーが消滅する未来』から、一部抜粋してお届けします。
キャラで政治家が選ばれる現代
2016年11月のアメリカ大統領選において、ドナルド・トランプがヒラリー・クリントンを破って大統領になったことは世界に衝撃を与えました。日本のメディアや政治評論家もほとんどがヒラリーが勝つと予想していましたから。
僕は選挙前から、「最終的にはトランプが勝つ。2016年の大統領選でトランプが負けるとしても、その次の大統領選にはトランプかトランプに似た人が勝つことになる」とたびたび公言していました。僕がそう言うたびに政治評論家たちはちょっと呆れた顔をしていたものです。
別に、僕は政治に詳しいわけではありません。いや、むしろ普通の人よりも政治には疎うとい方です。それなのに、どうしてトランプが勝つと自信を持って言えたのか?
政治に限らず、あらゆる業界の専門家、評論家は強みとなる情報を持っています。政治評論家なら、ずっと政治史を追っていたり、政治家の友達がいたり、いっしょにテレビの番組に出ていて裏話を聞けたりする。麻雀で喩えるなら、全体の4分の3くらいの牌パイが透けて見えているような状態です。次にどんな牌が来るのか、プレイヤーたちがどんな手を作ろうとしているのか大まかにわかっていれば、誰が勝つのか予測するのはそんなに難しくありません。日本も世界も、そんな政治状況がここ20年、30 年続いていました。でも、ここのところ政治の専門家が予想を外すことが増えてきています。トランプ大統領もそうですし、イギリスがEU離脱を決めたブレグジット(Brexit)もそう。それまでは透けていた麻雀牌がまったく見えなくなってしまったのです。
どうしてトランプが勝ったのか、イギリスがEUを離脱する羽目になったのか、専門家たちは既存の枠組みの中で一生懸命、理屈をひねり出そうとしますが、枠組み自体ががらっと変わってしまったのだから無理があります。
トランプの勝因としてよく挙げられるのは、白人低所得者層の支持を得た、ナショナリズムの高まりといったことですが、別に彼らがバカだというわけではないでしょう。「世界の終わりになろうとも迷わず核攻撃で報復する」と発言したロシアのプーチン大統領に、「腐敗した官僚や警察は皆殺しにする」と発言したフィリピンのドゥテルテ大統領。良識ある人からすれば眉をひそめたくなる発言のオンパレードですが、こうした政治家は国民から高い支持を得ています。でも、彼らを支持している人たちがバカだと僕には思えないんですよ。
僕ら人間の8割は、バカです。これは2割賢い人がいて、残りの8割がバカだということではありません。僕らの心の8割はバカでできている、という意味です。僕も1日のうち1、2時間くらい頭のよさげなことを考えたりすることもありますが、食べ物の誘惑に負けて思いっきりリバウンドしてしまったりする。ちゃんと自分たちがバカだと忘れずに生きていくことが本当は一番大事なんでしょうけど、人間はなかなかそうできません。
ここ100年くらい、多くの国が民主制を採用し、できるだけ有能で誠実な人を政治家に選ぼうとしてきましたが、そういうやり方にも限界が見えてきました。
現代社会の問題は、ものすごく膨大で複雑で広い範囲にわたっています。
「社会の不平等はどこまで認めるべき?」、「移民が押し寄せてきたけど、どうすれば自分たちの生活を守れるの?」、「人間は都市に集中した方がいいの?」、「信教の自由はどこまで認めるべきなの?」、「安楽死は認めるべき?」、「原子力発電は推進すべき?」……。
1人の人間がすべての事柄についてきちんと情報を集めてじっくり考えるような余裕はないでしょうし、あらゆる人間の意見を一致させることなんてできません。
アメリカを始めとする民主制の国だと、それなりにちゃんとした政治家は大企業の顔色をうかがいつつ、有権者にもいい顔をしているので、結局みんな似たような主張になってしまう。共和党だろうが民主党だろうが主張に大した差なんてないんです。誰を選ぼうと、「どうせ政治家になるルートに乗った特権階級でしょ」と冷ややかな目で見られてしまいます。
そういう状況で、「悪いのはこいつだ!」と問題発言するヤツが出てくると、有権者からすればキャラが立っていて面白く感じるんです。
キャラを立てることができたヤツは、批判を受けたとしても、一部のファンから熱狂的な支持を集めて人気を高めていく。いったん人気者になることができたら、本来はありえない権力を行使できるようになります。これは政治の世界に限ったことではなくて、あらゆる分野で見られる現象です。例えばアニメ業界だと、最近は監督より声優の方が力を持つようになってきていますね。以前なら、監督が声優をコントロールしていたのだけど、人気声優の出る/出ないで収益が1桁、2桁違うとなれば、監督も声優の言うことを聞かざるをえません。
この記事は、PHP新書から発売された岡田斗司夫の新刊『ユーチューバーが消滅する未来』からお届けしました。
アーカイブサイトへのアクセス方法
限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画など、岡田斗司夫のコンテンツを下記のアーカイブサイトからご覧いただけます。