岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/06/19
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2019/06/02配信「大人の『ゴジラ』映画の楽しみ方を、「自分の本質は特撮にある!」と語る岡田斗司夫が魂で解説」の内容をご紹介します。
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2019/06/02の内容一覧
- 『なつぞら』感想と『さらざんまい』を見た外国人
- 『ゴジラ キング・オブ・ザ・モンスターズ』ネタバレなしの感想
- 『ルパン三世 死の翼アルバトロス』の見どころ
- 年表で見る怪獣映画のブーム
- 『キング・オブ・ザ・モンスターズ』予習のためのゴジラ映画
- 次回予告『ひとの気持ちが聴こえたら:私のアスペルガー治療記』紹介
- レジェンダリー映画な『ゴジラ キング・オブ・ザ・モンスターズ』
- ゴジラの背びれの意味
- アメリカでのゴジラ人気の理由
- 苦労芸人ケビンと下ネタグランプリ
年表で見る怪獣映画のブーム
それでは、ようやっと『ゴジラ』の話に行きましょうか。
あんまり『キング・オブ・ザ・モンスターズ』の中身については語れないので、外側の話が多くなっちゃいますけども。
まずは、怪獣映画の概論というのをやってみたいと思います。
ちょっと字がちっちゃくなっちゃうんですけども。
(パネルを見せる。怪獣映画の作品名と公開年度の一覧表)
「怪獣映画ブームとは何なのか?」ということで、ここに細かい字でズラーッとまとめてみました。赤い字がゴジラ映画なんですけども。
1954年に『ゴジラ』が公開されてから、1975年に『メカゴジラの逆襲』が終わるまで、これが怪獣ブームというやつです。
1954年から75年まで、この怪獣モノというのが、テレビとか映画などを通じて、20年間以上、子供文化を支配していました。
こんなに長く、1つの作品群というのが子供文化をリードしていた時代はありません。
例えば、『ガンダム』も、萌え美少女も、ロボットアニメも、ここまで集中的に長い間、子供文化全体に影響を与えたことはなかったんですね。
唯一、近い存在はゲームかもわかりません。ゲーセンの筐体からファミコンなどの家庭用ゲーム機、あとは携帯ゲーム、スマホアプリという形で、ゲーム全般で考えれば、怪獣ブーム以上、子供文化を引っ張ってるんですけど。
しかし、ゲームっていうのはジャンルなんですね。それに対して、怪獣ブームというのは1つの作品群なんですよ。
そういった作品群が、20年以上も子供文化の本当にど真ん中にあって、ずーっと熱量を持って引っ張っていたというのは、本当に古今東西未曾有の状態だったわけですね。
怪獣モノを語る時には、まず、これを最初に押さえておかなければいけない。いわゆる、織田信長とか家康を語る時には「戦国時代というのがあった」というのを押さえるのと同じようなものですね。
例えるならば、この20年以上に渡る怪獣ブームというのはローマ帝国みたいなものなんですね。
1954年から75年まで、この20年以上に渡って、ほぼ子供文化というのは、怪獣帝国に支えられていた。
しかし、その巨大な帝国も徐々に滅びていって、ロボットアニメとか仮面ライダー、スポーツ漫画などに攻められ、ついには滅びてしまうわけですね。
でも、そういった『マジンガーZ』などの巨大ロボットも、実は、怪獣帝国の遺跡の上に建てられたものなんですよ。
『マジンガーZ』に出てくる機械獣という敵のロボットは、機械の怪獣であって、『機動戦士ガンダム』が登場するまで延々と、敵の巨大ロボットには叫び声があったんですね。
「行け!機械獣G7!」とか「VX!」と言われると、「ギャァー!」とか「ガオー!」とかって言って出てくるものだったんですよ。『UFOロボグレンダイザー』とか、『コン・バトラーV』とかは、もっと酷かったと思うんですけど。
叫び声を上げて出てくるし、もう「ロボット」とは名ばかりで、撮り方にしても登場の仕方にしても実際の戦闘方法にしても、実は怪獣モノというジャンルを、単にアニメに置き換えて、モダンなマシンにお化粧直ししただけなんですね。
だからこそ、『機動戦士ガンダム』という、本物のロボットを扱ったアニメが出てきた時に、アニメファンはすごくビックリしたわけですね。
なんせ、ロボットなのに叫び声あげないから。いや、今ではそれが当たり前なんですけども。それまでずっと敵のロボットは、登場する時に叫び声をあげてたんです。
『ゲッターロボ』に出てくる敵ロボットなんて、「ゲッタートマホーク!」って胴体を真っ二つに割ったら、中から血が出てきて内蔵が飛び出すわけですよ。
その血の色が、オイルの色に塗ってあったり、内臓が機械で描いてあるんですけど。そういった機械の間にあるのはなんか太めのケーブルで「これ、どう見てもこれ内臓じゃん」というやつで繋がっているわけで。
もう本当に、怪獣モノの描き方でロボットモノというのは描かれていたわけなんです。
当時の子供文化の研究家とか評論をしているような人は、よく「怪獣の時代からロボットの時代になった」って言うんですけど。実際には、そうではなくて「アニメで描いた方が自由度が高かったから」なんですね。
これは、後ほど話しますけど、実は、怪獣映画にも、いわゆる『ウルトラマン』などのTVシリーズにしても、致命的な欠陥があって、子供達が楽しく見るには適さない部分があったんですよ。
そんな中、アニメーションというのは、それを軽々と超える事ができた。そのおかげで、怪獣ブームというのはロボットブームに上手く移行できたわけです。
なので「僕らが知っているロボットアニメブームというのは、ロボットアニメという単独の流れの中にあるのではなく、この怪獣ブームというローマ帝国のような巨大な文化の遺跡の上に建っている建物だ」というふうに考えてもらうと、ちょっと話がわかりやすくなると思います。
怪獣映画という帝国は滅んだんですけど、その遺跡の上に建てられた新しい文化、『仮面ライダー』や『スーパー戦隊』というのは、今のライダーや戦隊モノ、あとは『トクサツガガガ』として、その子孫が今日も発展しています。
まるで「恐竜は滅びたけれど、鳥類になって生き延びた」ような感じなんですね。
では、年表をチェックしてみましょう。
まず、1954年の『ゴジラ』です。
これが、まあ考えられないくらいヒットして、海外にも売れたわけですね。
慌てた東宝は、僅か3ヶ月後に続編を制作します。それが『ゴジラの逆襲』です。
これ、あまりにも慌てて作ったから、予告編すら存在しないんですね。とにかく、出来たらすぐ劇場にかけた。それくらいゴジラがヒットしたんですよ。
急ピッチでですね、撮影、公開しました。
しかし、この『ゴジラの逆襲』の時に、原作者の香山滋は「もうゴジラは作れません」と言っちゃったんですね。
もともと、香山滋という人は、ちょっと不気味なミステリーとかを書く作家だったんですけど。まあ、『ゴジラ』があまりにもヒットしたので、周りの同業者から、もう、やっかみとか羨みで「またあんな変なの書いてるのかい?」とか、「おやおや、君はまた、あんなオバケの話を書くのかい?」というふうに言われて、すごくヘコんでしまった。
あとは、もう来る取材、来る取材、「次はどんな『ゴジラ』ですか?」というふうに聞かれて拗ねてしまった。
その結果、「もう『ガンダム』は作りません!」と言った富野由悠季と全く同じように、「もう『ゴジラ』は書きません!」と言うことになりました。
困ったのは、第3作目を作ろうとしていた東宝です。なんせ、メチャクチャヒットしてたから。
その結果、『空の大怪獣ラドン』というのは、そこから1年半も掛かってしまいました。
『ゴジラ』から『ゴジラの逆襲』って5ヶ月しか空いてないんですけど、次の『ラドン』では、1年半も掛かっちゃったのは、原作者を確保できなかったからなんですね。
ブームが本格的になってきたのは、この1964年頃からです。
『モスラ対ゴジラ』、『宇宙怪獣ドゴラ』、『三大怪獣地球最大の決戦』この辺りから、ブームが本格的になってきました。
『モスラ対ゴジラ』というのは『ゴジラ』を悪役に見立てた怪獣対決モノです。
『ドゴラ』というのは、「もう着ぐるみの怪獣をやめよう! 全部、水槽の中で撮影したクラゲみたいな宇宙怪獣を出そう!」という、大人向けの作品として作られたんですけど、これは大失敗しました。
映画の評判も悪いですし、あんまり客も入らない。まあ、あんまり客も入らないといっても、当時「怪獣映画」と言ったらなんでも客が来た時代なので、映画全体で見れば、そこそこ当たってはいるんですけどね。
『三大怪獣~』というのは、世紀の悪役キングギドラが出てきて、ゴジラが正義側についたという作品です。
この『三大怪獣地球最大の決戦』こそが、さっきからのローマの例えで言うと「ローマが共和制から帝政に移行することになったカエサル登場」のような作品です。ここがもう、ターニングポイントだったんですよ。
「怖い怪獣でなければいけなかったはずのゴジラを、もう正義の側にしちゃおう!」というのは、「それまで共和制だったローマを、独裁者カエサルを中心とした皇帝制度にしちゃおう!」というのと同じことなんです。
それまでの共和制ローマにしてみたら「何だ、それは?」ということなんですけども。やってみたら、案外、それがローマを長続きさせることになった。
それと同じく、この「ゴジラを正義の味方にしちゃう」っていうのは、やってはいけない一手、大人向けの怪獣映画という立場を完全に放棄することになったんですけども、その代りに、怪獣ブームをより強く燃やすことになりました。
まあ、本来はやってはいけないんだけど、これが当たっちゃったということなんですね。
この1964年というのは、皆さんもご存知の通り、前の東京オリンピックがあった年で、都市部からは田畑が失われて、田んぼがどんどんなくなって、ビルがニョキニョキ建ち並ぶという、日本が近代国家に改造された年なんですけども。
「そんな近代国家の象徴であるビルを怪獣が破壊する」という、怪獣映画のブームがやってきたのもこの年です。
1964年というのは、本当に不思議な1年でした。
この1964年について「オリンピック以外に何があったのか?」というのを研究するだけで、たぶん、絶対面白いノンフィクションになると思うので、誰か書いてください。
ちなみに、この怪獣ブームというのは、日本の高度経済成長時代とピッタリ符合します。
高度経済成長期というのは、ウィキペディアによると「1954年12月の鳩山内閣から1973年11月までの第2次田中角栄内閣」と言われてるんですね。もう本当に、不思議なことに、この中に綺麗に入るんですよ。
それくらい、高度経済成長と怪獣ブームというのは結びついています。
1964年、オリンピックの年の話をさっきしました。
その次の年である1965年、ついに東宝以外の、大映という文芸映画の老舗の会社までもが、怪獣映画に進出します。
それが『大怪獣ガメラ』です。
この『大怪獣ガメラ』、モノクロで、しかも、怪獣1匹しか出てこない映画です。
なぜ、この時代の怪獣映画なのに、1匹しか出ないしモノクロなのかというと、実は期待されてない映画だったんですね。
「おいおい、東宝が特撮映画を作ってるぞ! ウチだって戦争映画とか、『釈迦』みたいな歴史モノのスペクタクルを撮るための特撮班があるじゃんか。だったらウチでも作れるだろ? これくらいの予算でゴジラシリーズみたいな映画を撮れよ!」と、大映本社は言ったんですけど、現場は「いや、ちょっと待って。怪獣映画って、デカいセットいるし、特撮やらなきゃいけないし、金が掛かるんですよ。この予算で怪獣映画やるんだったら、もうモノクロにしか出来ません!」と。
そんなふうに喧嘩しながら制作した映画が『大怪獣ガメラ』なんですね。
この作品、制作中は現場でも顰蹙もので、「ついにウチも怪獣映画なんかやるようになっちまったのか。しかも、亀かよ!」なんて言われてたんですけど。いざ、前売り券を売り出したら、これがメチャクチャ売れて、公開後には大ヒットになってしまったんですね。
逆に、本家の東宝は『フランケンシュタイン対地底怪獣』という映画を作ったんですけど、あの、これ、すごく良い映画なんだけど、あんまりヒットしなかったんですね。
結果、「やっぱりゴジラじゃないとダメなんだ」ということで、その年の12月に『怪獣大戦争』というのをやります。
ローマ帝国というのは、外側と内側にそれぞれ滅びる要因がありました。
外側の要因は、もちろんゲルマン民族の大移動。内側にはキリスト教というのを自分たちの国教にしてしまうということが、逆に首を締めることになったんですね。
同じく、ゴジラ映画も、1966年にブームの頂点が訪れたと同時に、滅びの要因というのがやってきたんです。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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