岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/09/16

 今日は、2019/09/01配信の岡田斗司夫ゼミ「ブラタモリ手法でラピュタ世界を語る〜『天空の城ラピュタ』完全講座ついに第3弾!」からハイライトをお届けします。


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 ということで、じゃあ『天空の城ラピュタ』の話に行きましょう。
 今日は『ラピュタ』の特集です。でもね、内容とかテーマは、2018年の1月7日と1月14日の回で、わりと語り尽くしてるんですよ。

 なので、今回は、ちょっと別方向から話してみようと思います。

 これは、『ラピュタ』に登場するスラッグ渓谷の、宮崎さんがわりと初期に描いたイメージボードです。
(パネルを見せる)

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【画像】スラッグ渓谷 © 1986 Studio Ghibli

 今回、話したいのは、このパズーの生まれ育ったスラッグ渓谷の話なんですよ。「そもそも、このスラッグ渓谷というのはどんな場所なのか?」ですね。
 『ラピュタ』というのは、もともとは、宮崎さんが、かなり昔にテレビシリーズとして企画していたお話だから、このスラッグ渓谷に関しても、何時間もの、テレビ放送何週間分ものエピソードが詰まっているんですよね。
 『天空の城ラピュタ』という作品は、劇場アニメとして作られることになり、カットされてしまったんですけど。本編の中には、そういった「考えたんだけど、カットされてしまった」とか「時間の都合で入らなかった」みたいなアイデアとかエピソードがいっぱいあるんです。
 そういうのを僕はラピュタ遺跡って呼んでいるんですけど。ラピュタの中にまだ残っている初期のアイデアが、本編中にチラチラ出てくるんですよね。
 そういうラピュタ遺跡について、今回は話してみようと思います。

 『ラピュタ』って、すごく話しやすいアニメなんですよ。
 なぜかというと、高畑勲がプロデューサーやってたからなんですね。
 高畑勲は、『風の谷のナウシカ』と『天空の城ラピュタ』でプロデューサーをやったんですけど。イコール、どういうことかというと「宮崎駿にかなりツッコんだ」わけですよね。
 例えば、当初はラピュタの全体像が見えなかったところに、高畑勲が「全体像を見せないと話にならない」と説得して、見せるようにさせたとか、そういう高畑勲の考え方がかなり入っているんです。
 それ以降、『トトロ』と『火垂るの墓』で、2人がお互い別々に監督をするようになってからは、そんなにキツいプロデューサー的な縛りがなくなってしまったので、宮崎駿としては、高畑勲の目を気にしながらも、わりと自由に作れるようになったんですけど。
 なので、『ナウシカ』と『ラピュタ』って、お話としての背骨がすごく強いんです。だから、かなり色々と語れるんですよね。そういう意味では「なぜ、これが入らなかったのか?」という、本編内に残された遺跡を見つけやすい作品になっています。

・・・

 今回は、このスラッグ渓谷を説明するにあたって、こういう簡単な地形の模型を作ってみました。
(模型を見せる)

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【画像】スラッグ渓谷模型

 この谷に住んでいる人にとって、この鉱山というのがどういう場所なのか?
 なぜ、こういうふうに、街が谷の色んな場所に点々と存在しているのか? 底の方にまで存在しているのか?
 なんで、こういう鉄道が走っているのか? パズーの家はこのてっぺんにあるのか? この巨大な穴、この鉱山はどうなっているのか?
 そういういろんな謎が、この地形図を作ったことによって解ける部分もあります。
 他にも、スラッグ渓谷の「スラッグ」とは何だろうかという問題もあるんですけども。こういったスラッグ渓谷の話が、今日語るラピュタ遺跡その1です。

・・・

 次に、その2は……ちょっとこれ、小さいんですけど、ラピュタ自体の模型ですね。
(模型を見せる 株式会社さんけい みにちゅあーとキット ラピュタ城)

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【画像】ラピュタ模型

 これが、クライマックスの舞台になっている天空の城ラピュタです。

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【画像】ラピュタ模型裏

 これを見るとわかるんですけど、この裏側の部分が崩落しています。この不完全さを見て「かつてはどんなすごい城だったのか?」と考えた人もいるんじゃないかと思います。
 『ラピュタ』の設定っていろいろ発表されているんですけど、不思議なことに、このラピュタ自体のサイズはどこにも書いていないんですね。
 なぜかと言うと、映画の中で、サイズ的に矛盾する描写がいくつもあるからなんです。だから、決めようがない。
 しかし、今回の講座では、画面上のいろんな証拠から、ラピュタのサイズを特定することに成功しました。
 その結果、「映画に登場するラピュタのサイズは、直径なんと1760mで、東京の中心にある皇居とか、あと大阪城とほぼ同じサイズである」ということがわかりました。

 しかし、そんな巨大に見えるラピュタですら、実は、大崩壊した後の姿なんですね。そもそも、このラピュタというのは、2500年前に大空に浮かび、この地上の全てを支配していたはずなんですけど。それは、今の崩れたラピュタではないんですよ。
 当時の完全体としては……うーん、どう説明すればいいかな? 「完全体」というと、思わず『ドラゴンボール』で説明したくなるんですけど(笑)。
 完全体のラピュタというのは、なんと直径5.4kmで、高さが3.7km。ほぼ富士山と同サイズなんですね。幅としては、富士山の宝永山あたりまでを含めた全て。高さとしては、富士山より100m高い。それが、完全体のラピュタだと考えてください。
 そうですね。今のラピュタとかつてのラピュタは「フリーザさまの一番最初に車椅子みたいなのに座っている時と、最終形態くらいの強さの差がある」と思ってくれればいいです。まあ、フリーザ様の例えではサイズの差はあまりないから、言っても無駄ですね。
 ラピュタ遺跡その1がスラッグ渓谷だとすると、その2はラピュタそのもの。2500年前に空中に存在した、天空の巨大なラピュタというのを完全再現しようと思います。

・・・

 ラピュタ遺跡その3はポムじいさんです。
(パネルを見せる)

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【画像】ポムじいさん © 1986 Studio Ghibli

 このポムじいさん、実は、かなり重要なキャラクターなんですよね。
 パズーとシータがスラッグ渓谷の地下で会う、人のいいお爺さんなんですけど。この爺さんの重要性に気が付いている人が、ほとんどいないんですよ。
 例えば、ポムじいさんの登場するシーンって、5分もあるんです。124分の映画の中で、まるまる5分あるんですよ。すごく長い。
 セリフの分量で言えば、パズー、シータ、ドーラ婆さんに続いて4番目にセリフが多いんです。実は、悪役であるムスカよりも多い。つまり、それくらい重要なキャラクターなんです。
 おまけに、このポムじいさんが出て来るシーンは、パズーとシータとポムじいさんの3人しかいない。すごく重要なポイントなんですね。
 実は、このポムじいさんこそ、『天空の城ラピュタ』に登場する最重要キャラクターなんです。
 宮崎駿は、とにかく124分という尺に収めるために、いろんなお話とか設定とか、登場人物のセリフを削りに削ったんですけど、やっぱり、このポムじいさんの出番は5分以下には削れなかったんですね。
 では、そんなポムじいさんというのは、何者で、何を象徴するキャラクターなのか?

 これはポムじいさんが登場する、ほとんど最後のカットなんですけど。
(パネルを見せる)

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【画像】パズーとポムじいさん © 1986 Studio Ghibli

 ポムじいさんが残される真っ暗な穴と、パズーが「さあこっちだ!」とシータを誘う地上の光溢れる世界。この何気ないカットで、宮崎駿は何を伝えようとしたのか?
 ラピュタ遺跡その3は、謎のキャラクター、ポムじいさん。この謎を徹底的に追ってみようと思います。

・・・

 あと今日の都市伝説ですね。
 毎回毎回、ちょっとした、ちょっと不思議な話や怖い話、都市伝説の話をしているんですけれども。今日の都市伝説は幻の空中帝国についてです。
 ジョナサン・スウィフトが18世紀に書いた『ガリバー旅行記』の中に出てくるのが、空に浮かぶ王国ラピュータなんですけど。その他にも小人ばかりの国リリパットや、巨人の住むブロブディンナグというのが登場するんですよ。
 この『ガリバー旅行記』というのは、当時、アフリカとかアジアで発見された小さい人種とか、あとは巨人族の骨が次々と発掘されたという事件に大きく影響されてるんですね。
 ジョナサン・スウィフトの『ガリバー旅行記』というのは、一応、政治風刺であったり、社会風刺を目的に書かれたものではあったんですけど、決して元ネタがない話を書いていたわけではないんです。
 じゃあ、この空中帝国ラピュータというのは、一体どんな元ネタがあったのか? 空に浮かぶ王国というのも、何か現実の事件をモデルにして作られた話だったはずなんです。
 では、空に浮かぶ王国というのは何だったのか? これを話してみようと思います。

 これは、当時の『ガリバー旅行記』に載ってたイラストなんですけど。
(パネルを見せる)

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【画像】ラピュータイラスト

 磁石で浮かぶラピュータ。後は、そのラピュータという小さい島の下にある巨大な島がバルニバービという、ラピュタに支配されている島です。
 アジアの果て。アジアの東の果てにある謎の国・日本の、さらに東の海に、バルニバービという大きな島があって、その上にラピュータという、直径4.5マイルの空に浮かぶ島が浮いている。
 実は、これにはモデルになった実際の事件があるんです。
 中世の初め頃、10世紀になる前のフランスでは「雲の上に人間が住んでいる大陸がある」と信じられていたんですね。
 「そこに住んでいる人がいる」と、本当に信じられていたし、その目撃談や、それどころか貿易の記録まで、多数残されています。
 そんなふうに、歴史上、本当にあった空の上の王国の話とかを、都市伝説として紹介したいと思います。

・・・

 あと、今日のプレミアム放送、放課後の時間は、一応、予定としては「岡田斗司夫の妄想劇場」ということで、『ラピュタ2』、『続・天空の城ラピュタ』というのを語ってみようと思います。
 実は、本編の中にいっぱいヒントが入っているんですけど。それをちょっと妄想してみる、と。
 あと、『ラピュタ』の生まれた場所。宮崎駿が『ラピュタ』のアイデアを考えるために使っていた隠れカフェの正体というのを、まあ、放課後の時間には紹介してみようと思います。

 それでは、ここまでが目次です。では、『ラピュタ』語りを始めます。よろしくお願いします。


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