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期待過熱で迎えた7月末の日銀の金融政策決定会合。
出たら仕舞い? 出なければ売り?との声も聞こえていましたが、出てきたのは日銀によるETF買い入れ額6兆円へ(これまでの約倍額!)という株価支援 策でしたが、市場は、「次回の決定会合でこれまでの経済、物価動向や政策効果に『総括的な検証を行う』」という部分に大きく反応しました。
この『総括的検証』に対する解釈により、Brexitショックの緩和と新たな政策期待で過熱していた相場は、冷や水がかけられた格好になりました。
そして、それに追い打ちをかけたのが、その後発表された第2四半期の米国GDP数値の下振れで弱気が先行、ドル円相場は一時101円を割る場面もありました。
8月4日に英国中銀の量的緩和パッケージは好感され、下値は支えられた格好にもなりましたが、大きく反転するきっかけになったのは、先週金曜日発表の7月米国雇用統計で非農業部門の雇用者数が予想外に増えたことでした。
今週に入ってもその流れは続き、株価の上昇、ドル相場の持ち直しが進んでいますが、8月は夏季休暇時期で大きな経済イベントもなく、今年はオリンピック開催も重なり、ここから更に買い進んでいくような強い動きにはならないのではないかと個人的には思っています。
主要国の金融政策決定会合カレンダー、8月は夏休み入り。次のECB理事会9月8日。さらに9月は日銀、FRBの会合が(時差はありますが)9月20~21日同時開催です。この日程に向けて、これから思惑が交錯していくものと思います。
ところで、7月末の日銀政策決定会合で話された「総括的な検証」以来、日本国債市場では、これまでマイナス圏にかなり沈んでいた金利の底入れが注目され出しました。
会合直前の7月27日、10年国債利回りは一時マイナス0.30%、2年債もマイナス0.37%をつける場面がありましたが、会合後、10年債は一時 0%近くまで利回りが上昇。直近の利回りはマイナス0.09%、2年物もマイナス0.17%に上昇しているように、金利の下限を意識した神経質な動きが続 いています。
総括的検証=金融緩和縮小、マイナス金利のさらなる深堀はないのでは?の連想がちらつきます。
一方、この動きのもう一つの背景と思われるのが、Brexitショックに配慮した日銀によるドル資金の供給拡大です。
これまでマイナス金利でも日本国債を買えば利益が出るという、あるパターンがありました。それが崩れてきたことも国債市場に変化をもたらしているとも言えます。
あるパターンというのは、ドルが潤沢にある外国金融機関がドル円ベーシススワップというデリバティブ取引を利用して、円を国債利回りよりも安く手に入れ、日本国債を買って利益確保するという取引を可能にしていたことです。
会合直後には、この取引パターンが不利になった場面もあり、市場環境が以前よりも魅力的ではなくなりました。それが、国債利回りの反転に繋がった一因とも言われます。
そんな中、日銀のスタンスのヒントになりそうな材料として、今週8日に7月末の日銀政策決定会合で出た「主な意見」が公表されました。
その中で、超長期国債利回りが低下(20年物は一時0.014%)による悪影響、国債市場の変動率の上昇によって日銀の国債買い入れが困難になるリスクなどへの懸念が会合で出されたことが分かりました。
短期金融市場でのマイナス金利導入が超長期国債市場への行き過ぎた金利低下に繋がり、国債の価格変動リスクが高まることを日銀は懸念しているとも解釈もできます。
マイナス金利の深堀りなども選択肢として期待された7月の決定会合後、逆に意識されだした緩和縮小論。今後、金利体系の変化が他の市場にどのように影響していくのか注目していきたいと思います。
さて、Brexit以降、ほぼ100円~106円のレンジでの動きが続いているドル円相場。
このところの円金利の変調は上値を重くする要素として働くと思われる一方で、やはり相場に最も影響する材料は、米国経済の動向ではないかと思います。利上げは、来年以降に持ち越されるだろうとする見方が今のところ大勢で、年内の利上げ確率は直近50%未満です。
そんな中で、8月末に米国ジャクソンホールで予定されているイエレンFRB議長の講演内容も今後の政策動向を見るうえでのヒントとして注目されます。
そして、9月20日の日米の政策決定会合、特に米国FOMC、終了後にイエレン議長の会見があります。大きな流れが出てくるのは、秋の声が聞こえてくる頃かもしれません。
最後までお読みいただき、、ありがとうございました。
猛暑が続いています。体調にお気をつけてお過ごしください。
*8月9日東京時間午後9時執筆
本号の情報は、8月9日ロンドン市場始値ベースを参照しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)