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産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/
10月号連載記事


■ナンバーワン企業その1 トヨタ自動車

●武士道と通じるトヨタの社風

 トヨタの「社風」ですが、「カイゼン」と「現地・現物」という二つの言葉に集約されます。

 まず「カイゼン」は、企業の中で行っている業務をより良いものにするための努力を積み重ねることです。
 「現地・現物」とは、たとえ社長や役員であっても必ず製造(作業)現場で製品に触れ、自分の目で確かめてから判断することです。どちらも、日本的な精神を感じますが、数多くの日本企業の中でもトヨタのこだわりはダントツです。

 「武士道とは死ぬことと見つけたり」とは葉隠の中の有名な言葉ですが、あえて誤解を恐れずに言えば、「トヨタ生産方式とは工場を止めることと見つけたり」です。

 トヨタ生産方式の技術的側面はかなり公開されており、トヨタ自動車がジャパン・バッシングの中で、米国での初めての工場をGMと合弁で始めたときも、競 争相手であるGMにノウハウを全面的に提供しました。そして、GM時代にはお荷物だった工場を、合弁事業での改革によって、GMの中でもトップクラスの生 産性を誇る工場に変えました。しかしながら、それから数十年たった現在でもGMは全体としては「ダメ企業」です。

 トヨタ生産方式が固定的なものではなく、常に「カイゼン」されることによって成長するので、少しでも努力を怠ればトヨタのように不断の「カイゼン」を行っている企業に差を広げられるということもあります。

 しかしより根本的な理由は、トヨタ生産方式の根幹である「不良品が出たときにその場で工場を止める」ということが、普通の企業には簡単にできないという点にあります。
 容易に想像できると思いますが、例えば自動車工場の生産ラインの1個のネジに不良品が出たからといって、生産ラインを止めてひとつ前の工程での問題をチェックすれば、莫大な損失が出ます。
 通常は、大量に生産した後、検査係が不良品を撥ねるという方式です。しかし、トヨタ自動車は、「現地・現物」によって製造工程を徹底的かつ合理的に研究 した結果、不良品が出たその場で対応した方が「製品の品質を向上させることができる上に、最終的には生産コストも下がる」という結論が出たので、何の迷い も無く「工場を止める」ことができるのです。

 もちろん、経営者と従業員の信頼関係も必要不可欠です。役員が破格の報酬を受け取り工員とは別の特別食堂で昼食を取るような欧米企業では、現場の一従業 員が(いくら会社から指示されたからといっても責任追及を恐れて)不良品が一つ出ただけで工場を止めるというような大それた決断はできません。

 それに対して、社長・役員であっても作業服を着て現場に足しげく通い、会社の一体感を重視するトヨタを始めとする日本企業では、工員も会社の一員としての責任を自覚しやすくなります。
 またトップダウンでは無く、ボトムアップ型の文化が根付いていますから、たとえ一工員であっても会社を代表して重大な決断を行うことに抵抗が少なくなり ます。また、「個人の責任を追及するのではなく、原因を探究し全員で解決策を考える」という思想も浸透しやすいはずです。

<続く>

続きは、産業新潮
http://homepage2.nifty.com/sancho/
10月号をご参照ください。


(大原浩)


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