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メルマガ「億の近道」が17周年を迎えました!
これも長年ご愛読いただいている読者の皆様のお陰です、ありがとうございます。
また、運営管理者や初回から執筆されている方々には頭が下がる思いです。
何事も継続するということは本当に大変なことだと思うからです。
私はまだまだ執筆に参画してから日が浅い新参者ではありますが、
今後も皆様に少しでも有益な情報をお届けするべく努力したいと存じます。
さて、今回から複数回に分けて米国金融リテール証券業界の近年の変化についてお届けしたいと思います。
私の所属する株式会社マネーライフプランニングは金融先進国である米国型のファイナンシャル・プランニングを日本でも提供したいと考えており、その為、米国金融業界の辿ってきた歴史を学び、そこから学ぶことが多いです。
日本の金融業界は米国から20年~30年遅れていると言われており、その為、米国の歴史を見てみるとこれから日本の金融業界の進む方向性が垣間見えます。
リーマン・ブラザーズの破綻が引き金となった2008年の金融危機から米国の金融機関は大きな方向転換をしています。
公益社団法人 日本証券経済研究所から出版されている刊行物
「資本市場の変貌と証券ビジネス」
http://amzn.to/2fW5ID0
http://www.jsri.or.jp/publish/general/general_23.html
(Webで公開されていますのでご興味のある方はご一読下さい)
その第14章 「金融危機後の米国リテール証券業」
明治大学国際日本学部特任准教授・当研究所客員研究員 沼田優子氏
http://www.jsri.or.jp/publish/general/pdf/g23/14.pdf
こちらを読み解きながら、金融危機から米国リテール証券業がどういった変化を遂げてきたのか?
そして今後の我が国の金融業界はどういった方向へ変化していくのかを考えたいと思います。
リーマン・ブラザーズの破綻となった2008年の金融危機は、米国資本主義に大きな打撃を与え、この混乱をきっかけして2010年ドット=フランク(DF)法の制定により、大恐慌以来の大きな金融制度改革が行われました。
しかしDF法は
「業界の透明性を向上させ、企業及び政府に社会的責任を果たさせる新たな手段を投資家や一般市民に提供する」
ことなどを目的とした制度なので、投資家保護の規制強化になるのですが、主に変容を強いられたのは投資銀行部門で、むしろリテール証券業における証券会社のビジネスモデルは概ね肯定され、金融危機により投資家の信頼を大きく損ねることはありませんでした。
■なぜリテール証券業界は金融危機時にも投資家の信頼を損ねなかったのか
証券会社の収入構成を見てみると、金融危機直前の2007年収入の6割を占めていたのはM&Aアドバイザリーや私募業務等を含むその他証券業でしたが、2012年の同比率は3割弱まで落ち込んでいます。
一方、委託販売通遼を抜いてリテール証券業の中核を占めるようになった投資信託及びSMA等の資産運用関連業務は、2012年に合計340億ドルと2007年を15%上回る水準まで伸びました。つまり、金融危機後の証券業を収入面で下支えしてきたのはリテール業務でした。
投資信託の投資家の半分弱を占めるのは、1946年~1964年生まれのベビーブーマーです。
金融資産の半分以上を投資信託が占める家計の割合は7割弱で、彼らの9割以上は老後の資産形成のために投資を行っています。
つまり、余裕資金で投機を行っているのではなく、ごく普通のアメリカ人が必要に迫られて投資を行っていることがわかります。
彼らにとって金融危機とは不安材料の一つとはなり得ても、投資をやめる理由とはならなかったのです。
米国リテール証券業界が行っているファイナンシャル・アドバイスは、ポートフォリオ理論に基づいた長期保有・分散投資が主流であり、ポートフォリオの組成には投資信託やSMA、ETF等を使います。
こういったアドバイスに基づき運用している資金は、金融危機の影響を受けても投資家が慌てて引き上げたり市場から撤退したりする事はなかったのだろうと推測されます。
■金融危機後の大手証券事業構成の変化でリテール証券業に軸足が移された
米国の総合証券会社の3大業務はリテール証券業、投資銀行業、資産運用業でしたが、伝統的な大手証券会社の事業構成にも変化が起きました。
金融危機後も唯一専業総合証券として残ったモルガン・スタンレーを参考にしてみると、投資銀行業務で大きな痛手を負った同社は、2009年にスミス・バーニーとの合弁会社を設立してリテール業務に軸足を移し、2012年に完全子会社化すると発表しました。
【モルスタ、スミス・バーニーの全株取得へ シティから】
2012/9/12付 日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1201M_S2A910C1EB2000/
その結果、2014年のモルガン・スタンレーのリテール部門の構成比は2007年の24%から2014年の43%まで拡大しました。
■証券営業担当者数の推移をみてみると、残高手数料型個人向け投資顧問業者(RIA)の時代へ
過去5年の営業担当者数は30万人超とほぼ横ばいですが、従来型の大手及び地方証券会社の営業担当者数が減少し、独立系営業担当者の中でも特に個人向け投資顧問業者であるRIA(Registered Investment Advisor)が伸びています。
【2008年~2013年の営業担当者推移】
(金融機関従業員)
大手証券会社 54,865人→49,913人(▲ 9%)
銀行(証券外務員免許取得者)16,406人→13,728人(▲16%)
地方証券会社 35,994人→30,628人(▲15%)
(独立系営業担当者)
IC *1 90,707人→78,886人(▲13%)
RIA *2 18,582人→27,839人(+50%)
ハイブリットRIA *3 14,769人→18,513人(+25%)
独立系営業担当者とは、金融機関に従業員として所属せずに組織に縛られない営業を行う営業担当者です。
*1【IC(Independent Contractor)】
証券外務員資格を有し、取引連動型の委託販売手数料や販売手数料等を受け取る。
*2【RIA(Registered Investment Advisor)】
投資顧問の資格で個人向けに一任運用も含む証券アドバイスを提供し、預かり資産に応じた残高手数料を得る。
*3【ハイブリッドRIA】
ICとRIAを兼業、主にICを経てハイブリットRIAへの流れとなる
従前から独立系営業担当者は、大手証券会社のベテラン証券マンが顧客を連れて独立し、ICやRIAになる動きはみられたようですが、金融危機の前後からいくつかの変化が見られるようになりました。
1)投資銀行のイメージダウンや親銀行の社風に染まりたくないと考える営業担当者が増えた
2)ハイブリットRIAはRIA専業の通過点と考えられていたが、これを着地点と捉える営業担当者が増え、RIAの間口が広がった
このようにして、金融機関に所属せず、組織に縛られない独立した営業担当者が増えていっているようです。
今後は預かり資産比率の上昇も期待されており、2013年のRIAとハイブリットRIAの市場シェアは20%でしたが2018年には8%増加すると予想されています。
また独立系営業担当者の中でもICからハイブリットRIAやRIAへの移行が進んでいることがわかります。
これは金融商品販売手数料(コミッション)を収益構造とせず、顧客の資産残高に対しての手数料(マジメント・フィー)を収益構造とする流れが出来ているといえます。
■なぜRIAが伸びているのか
投資信託の購入経路は79%が確定拠出年金等となっており、多くの人が確定拠出年金が投資信託の入口となったことがわかります。
その他、専門家経由や直販チャネルを活用する投資家もいますが、直販のみの投資家はわずか2%で、投資信託で資産運用をする投資家は専門家のアドバイスを求めていることがうかがえます。
むしろ金融危機を経験した投資家は、自力で投資判断を行う難しさを実感し、金融の専門家を頼るようになっている様です。
大手証券会社は対面でのアドバイスを求める投資家を金融資産ごとに区別し、それぞれに合ったサービスを提供しています。
具体的には10万ドル~100万ドルを資産形成層、100万ドル以上を富裕層、500万ドル以上を超富裕層と捉えることが多いようです。
従前、大手証券会社はこうした資産形成層に対面にてアドバイスを提供することはコストに見合わないと捉えがちでしたが、その穴を埋めたのが独立系チャネルでした。
資産形成層も対面のアドバイスを必要と考えるようになり、そのニーズに応えたのがRIAであったということが言えるでしょう。
いかがでしたでしょうか?
今回は金融危機後、米国の証券業界がどのように変化をしていったのか、顧客のニーズも併せてご説明してきました。
私は米国金融業界は金融危機で原点回帰したように感じました。
多くの顧客が望んでいるのは老後資産形成であり、その為にはデリバティブ等の投機的商品ではなく、投資信託等で組成し分散したポートフォリオ運用でリスクを管理し、長期的に資産を増やしていくアドバイスです。
資産形成層のニーズに答え裾野を広く対面アドバイスをしていくには、大手証券会社ではなくRIAなどの独立系営業担当者が適しており、近年のRIA増加に繋がっていました。
次回はリテール証券業界が顧客に提案している商品の変化についてご説明していきたいと思っています。
ここにはなぜ米国金融リテール証券業界で金融商品販売手数料(コミッション)を収益構造とせず、顧客の資産残高に対しての手数料(マジメント・フィー)を収益構造とする流れが出来ているかのヒントが隠されています。
このシリーズの最後には、日本では今後どういった変化が必要で、予想されるのかを考えたいと思っていますので、お付き合いいただければ幸いです。
株式会社マネーライフプランニング
パートナーCFP 梶原 真由美
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(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)