今年も2月24日(土)に、バフェットからバークシャー・ハサウェイ株主へのメッセージ、いわゆる「バフェットからの手紙」が公開されました。
(ちなみに、バークシャー・ハサウェイからの情報の公開は、市場がオープンするまで投資家が十分考慮・分析するために週末に行うのが基本です)
元々は、日本でも多くの上場企業が発行している株主通信の「社長メッセージ」のようなもので、あくまで株主にしか発送されなかったものですが、その優れた内容から大評判となり、今日ではバークシャー・ハサウェイのHPでだれもが読めるようになったわけです。リンクは下記です。
http://www.berkshirehathaway.com/letters/letters.html
しかしながら、バークシャー・ハサウェイの経営権を取得してから53年目の今回は「禅譲」を意識してか、かなりあっさりしたものであり、これまで恒例であった「保険以外の事業の業況解説」が省略され、バークシャーの事業報告書等のページを見てくれということになっています。
また、全体のページ数も例年(最近)に比べて短めで表紙を含めても17ページです。
バフェットの署名の前の文末では、保険部門をAjit Jain が、それ以外の事業部門をGreg Abel が率いる体制が固まったことを報告しています。運用部門に関しては、これまで後任選びに何回も失敗してきたバフェットですが、Todd CombsとTed Weschlerの2名にそれなりに任せています。しかし、まだ一任というわけにはいかないようです。
バークシャー・ハサウェイの企業文化、すなわち「バフェット精神」は長男が受け継ぐことが確実視されているので、これでおおむね「トラック問題」は解決に向かっているということでしょう。
「トラック問題」とは、バフェットが60代になった20年以上前から「もし私がある日突然トラックに轢かれたらどうするか」と、冗談めかして「バフェットからの手紙」の中で繰り返し取り上げてきた後継者問題です。
投資の神様であるバフェットも、この問題については相当苦労しましたが、今年88歳(1930年生まれ)を迎えるにあたって、何とか滑り込みセーフというところでしょうか?
1924年生まれで94歳になる盟友(バークシャーの副会長でもある)チャーリーマンガーともども、まだまだ矍鑠(かくしゃく)としていますが、我々投資家も<バフェット後>を真剣に考えなければならない時期に来ているかもしれません。
長年にわたって書き続けられてきた「バフェットからの手紙」はどの年も学ぶべきことは多いのですが、特に50周年を迎えるにあたって「バフェット流」を集大成した49年目(2014年)のものが最も内容が濃いと思います。
すべてを出し切った感じがあります。また、それ以前の数年間もかなり充実しています。
50周年目も含めたそれ以降は「引退」へ向かってスローダウンという感じが伝わってきますが、それはある意味当然でしょう。
かなり簡略化された今年の「バフェットからの手紙」で、どうしても投資家に伝えたいことが二つ述べられています。
1)短期の株価の動きに一喜一憂しないこと
バークシャー・ハサウェイそのものの株価を事例として取り上げています。
1973年3月から1975年1月まで 59.1%の下落
1987年10月2日から1987年10月27日まで 37.1%の下落
1998年6月19日から2000年3月10日 48.9%の下落
2008年9月19日から2009年3月5日 50.7%の下落
最後のデータはリーマン・ショックのころですが、この時にはバークシャーに限らず大概の企業の株式が大特価で売られていました。
また、1970年ごろからバークシャーの株式を保有していた人々はみんな大富豪です。
2)助っ人(銀行・証券、評論家、アナリストなどの「外野」たち)の助言に金を払う価値はない。投資信託(ファンド)は購入すべきではない。どうしても買いたければ手数料が安いインデックス・ファンドを購入すべき。
昨年の「バフェットからの手紙」でも紹介した、某ファンドの経営者との賭けについて数少ないページの中であえて再び取り上げています。
この賭けは2007年に某ファンドの経営者と100万ドル(実際には途中からいろいろな事情でこの賭け金をバークシャーの株式で運用したため222万ドル)をかけた真剣勝負(バフェットにははした金ですが・・・)です。
某ファンドが選りすぐった5本の個別ファンド(ファンド・オブ・ファンド)が、S&P500の成績を上回るかどうかに賭けたのです。
結果は明らかでした。10年間でS&Pが125.8%(約2.3倍)上昇したのに対して、5本のうち最も成績の良いものでも87.7%しか増えず、最悪の場合たった2.8%(途中で解散したので9年で!)の増加でした。もし、バークシャーの運用成績と比較したら目も当てられません・・・
バフェットは、この結果からも、ファンド(「投資信託」)は投資家が資産を増やすために存在するのではなく、ファンド・マネージャーや運営会社などが運用成績にかかわらず自分の懐に札束を詰め込むために存在するのだとばっさり切り捨てています。
もちろん、助っ人たちの「助言」も同じで、彼らに高い報酬を払っても投資家が得をすることはありません。
ちなみに、過去の「バフェットからの手紙」では、奥様への遺言(遺産相続)にも触れていますが、現金や米国債以外は、手数料の安いインデックス・ファンドで運用するよう指示されています。
(大原浩)
*2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」(JKK)を設立します。HPはこちら https://j-kk.org/
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(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)