閉じる
閉じる
×
■相川伸夫ピックアップ銘柄フォロー
※9月14日(金)執筆時点
・山王(3441)2016年12月19日配信
株価560円⇒1470円(+163%)
・テノックス(1905)17年2月20日配信
株価815円⇒987円(+21%)
・LCホールディングス(8938)17年4月3日配信
株価894円⇒1621円(+81%)
・特殊電極(3437)17年6月12日配信
株価2922円⇒4670円(+60%)
・東北特殊鋼(5484)17年9月4日配信
株価1831円⇒1408円(-23%)
・新報国製鉄(5542)17年10月2日配信
株価1577円⇒1395円(-12%)
・パウダーテック(5695)18年2月19日配信
株価4845円⇒3420円(-29%)
・東京エレクトロンデバイス(2760)18年4月6日配信
株価1970円⇒1901円(―4%)
・アバント(3836)18年6月25日配信
株価945円⇒1536円(+63%)
・神戸天然物化学(6568)18年8月13日配信
株価2718円⇒2571円(―5%)
山王が本決算に向けての期待で急伸しました。
しかし、新規事業に関しての特段の言及はなかったので、週明けは売られる展開になると思われます。
テノックスが先週末金曜日に自社株買いを発表しました。
今年から新代表になった佐藤氏に代わってから中期経営計画の発表に始まり、ストックオプションの発表、そしてこの度の自社株買いの一連の動きは非常に興味深いです!
佐藤代表について調べてみたところ前職は住友商事(1978年入社)であり、2004年には住友商事の完全子会社である住商セメント(主事業はセメント関連分野の国内販売の専門商社)の社長を務めた実績もあるようです。
テノックスへの入社は今から3年前の2015年の4月であり、そこから代表になるまでの速さを鑑みるにもしかすると面白いことがあるかも?と期待できるかもしれません。
LCHDが業務受託収入及び違約金収入の計上のIRが出ました。
基本的にはポジティブとして市場は判断するのではないかと思われますが、詳細を知りたいところですね!
それでは、本題に入ります。
今回も先月に続いて個別銘柄について、取り上げるのは丸順という名証二部に上場している知る人ぞ知る自動車部品のプレス加工会社です。
細かい話は9月5日に『みんなの運用会議』にて記事を掲載しているので、こちらをまずご覧になってもらえればと思います
https://double-growth.com/3422-marujun/
こちらでは同社の『アツさ』についてフォーカスを絞り、語らせていただきたいと思います。
■丸順のどこにアツさを感じたのか?
丸順はホンダ車(日本・中国・タイ)向けプレス部品関連で売り上げの70%を占めており、超ハイテンの冷間加工ではトップクラスの技術を持ち、33業種区分では金属製品セクターに属しています。
2015年と16年の赤字で一時はGC注記の手前である重要事象も付きましたが、現在は解消。2015年以前とは会社としての事業価値が全く変わっているというのが私の認識です。
構造改革前の営業利益の最高が2011年の22億5千万円。
構造改革後の17年にいきなり過去最高益更新で26億8千万円。
翌年の18年はさらに大幅続伸で40億9千万円
今期会社予想は42億円。中期経営計画では5年後の23年では営業利益は57億円を予定していますが、東プレとの資本業務提携も効果を発揮してくるので、決して無茶な数字ではないと思われます。
現在2月末の高値である1350円から約40%下落し、株価は826円。
東プレとの資本業務提携の時に増えた総発行済株式数1185万7200株での今期予想EPSは185.5であり、現在のPERは4.45です。
四季報では会社予想を超えると予想されており、こちらで計算するとPERは4.0です。
PER4という数字をどのように解釈するかがポイントです。
■PERが低い=「割安だ!!」は危険な考え?
丸順の解説に入る前に、みんな大好きPERについて話したいと思います。
一般的な教科書的説明で行くと…
「PERとは、現在の株価が企業の利益水準に対して割高か割安かを判断する目安として利用されます。」
この解説は間違っていません。しかし言葉ってのは大変難しいもので、この『割安』という言葉は非常に多くの勘違いを生みます。
まったく同じ事業をやっている会社が2つあり、しかも財務も同じであればPER10とPER5で行けば、数字が低い方が割安だと言えます。
しかし、現実的にそんなことはまずありません。
「私の推し銘柄はPERが5で日経平均のPER13よりもすごく低くて割安なはずなのにPER50などの割高な株ばかり上がるのは市場がおかしい!!」
こういった嘆きを頻繁に耳にします。
PERとはいったい何なのでしょうか?
株価を形成する要素には業績、資産、キャッシュフロー、配当利回り、上場している市場(1部とかマザーズとか)、成長性、業種、業態、安定性、期待、思惑……etc
ざっと書くだけでもこれだけあります。
色々な要素を含めたうえで株価を利益から評価するとPER○○のようになるのです。
つまり、PERを誤解を恐れずに説明すると以下のようになります。
「PERとは、業績成長への『市場からの期待値』の高さを株価と利益から表している」
…と私は考えています。
そのうえで、医薬品セクターはPER29で不動産セクターはPER14と、これほどに違うのは、不動産セクターの業績が大きくぶれやすいため、来期のEPSが20%上がる見込みと言われても、景気変動で一気に赤字になることもあるセクターなので高値まで買いにくいのが理由の一つです。
「サラリーマンでもアパート経営はできる」のCMでおなじみのシノケンは、2013年⇒2017年までにEPSが62円⇒254円と4倍になっています。
EPSの伸びに応じて株価も大きく上昇しましたが、この期間PERはおおむね4~8の範囲で推移しました。
シノケンの利益の7割は不動産販売事業で成り立っており、販売先の99.5%が公務員含むサラリーマンかつ、その72%は年収1000万円未満となっています。
シノケンに対する市場からの人気は高かったにも関わらず、PERが2桁に乗らないのは、スルガ銀行に端を発した今回のような信用収縮懸念、景気後退懸念のリスクがあったためです。リスクがひとたび顕在化すると業績が大きく崩れてしまう可能性があるからです。
現在売られているのは来期の数字が大幅に低下することを懸念した売りです。
これはシノケンに限らず、不動産セクター全体で同様のことが起こっています。
PERが安いと思って飛びついても、その元であるEPSが下がっては元も子もありません。
逆にPER50で高いと思っても、ストック性の高いビジネスを手掛けている企業で業績のブレが少なく、来期もそのまた来期も収益が倍増していく可能性が高いなら、それは買いと言えるでしょう。なぜなら再来期にはPER12まで下がるからです。
このようにPER=『割安の度合い』と解釈してしまうのはミスリードにつながりやすく危険ですが、それでもPERがこれほどまでに使われているのは、直感的に買われ過ぎかどうか判断するのに便利だからだと思っています。
※特損や特益などがあったり、EPSの値が-であったり、1に近い値の場合は参考にすらならないこともあるので注意が必要。
■丸順の場合はどうなのか?
本題に戻ります。
まず、参考までに丸順の属する金属セクターは全市場で93社あり、PER70を超えた異常値4社を除いた業界平均PERは15.8、さらにPER20以上の成長期待を評価されているであろう企業21社を除いた平均PERは11.5となります。
丸順のPERは金属セクター最下位であり、次に低い評価の企業でPER5.2です。
ここまで丸順が市場からの評価が低い大きい理由として
・上場市場が名証二部であること
・ホンダへの依存度が高いことによるリスク
・自己資本比率が17%と低いこと(16年は4%だった)
・配当が少額であること(今期は3円の復配で配当利回り0.3%)
等がその主な要因として考えられます。
逆に考えると、市場からすでに評価されていないということは、ここから大きく売られる時=丸順の業績回復のシナリオが崩れた時とも言えます(ホンダ車の想定以上の販売不振や丸順が得意先不具合などで損失計上をする事態等)。
市場に絶対はないので決めつけは禁物ですが、こういった市場から見放されているような企業に実は大きなチャンスがあったりします。
投資の基本はダウンサイドとアップサイドのリスクリターンのバランスです。
現在丸順の時価総額は100億弱であり、経常利益の3倍弱でしかありません。
同社が現在EV関連銘柄になっていることは、おそらくあまり市場で認知されていないのでしょう。
パナソニックからハイテン材でのバッテリ―ケースの受注が決まっており、現在も受注は増えています。
中国は特に今後も環境配慮の影響でEVが伸びることが予想されるのでバッテリ―ケースに関しては増収増益が期待できます。
新代表の斎藤社長になってからIRセミナーや名証IRでの積極的なPR活動、中期経営計画や東プレとの資本業務提携などの精力的な活動も非常に好感が持てます。
丸順の技術力に関してはみんなの運用会議で克明に書き上げたので追記する必要はないでしょう。
直近気になる点としては、ホンダの中国での新車販売台数が前年比でマイナスなことでしょう。
17年と18年の4-6月のホンダの新車販売台数を調べたところ、
・日本乗用車
84,305台(前期比マイナス1,277台)
・日本軽自動車
82,445台(前期比プラス10,435台)
・中国(メーカー販売台数)
308,274台(前期比マイナス30,597台)
・タイ(メーカー販売台数)
24,659台(前期比プラス2,239台)
合計前期比マイナス19,200台ということになりました。
もちろん、丸順の部品の利益率も拠点や部品ごとに違い、またすべてのホンダ車に採用されているわけでも、数字の反映がどの程度ズレているのかもこれだけの結果ですべてが分かるわけではありません。
丸順の第一四半期の決算を見てみると、売り上げは前期比467百万円の増収、営業利益は319百万円の増益となっています。
会社のコメントを見てみると、基本的には構造改革における効果が大きいようで、これは今後も効果が見込まれるため現状のホンダ車の中国での販売が伸び悩んでいることは格段業績に対してマイナスを与えないのではないか?
というのが私の見解です。
同社には少なくとも3年~5年以上の目線で投資を検討するのが良いと私は考えています。
■丸順の投資指標
※2018/9/14現在
終値 826円
時価総額 98億円
※19年3月期会社予想(第一四半期経過時点で計算)
売上 480億円
営業利益 42億円
経常利益 35億円
純利益 22億円
今期末配当 3円
配当利回 0.36%
PER 4.45
PBR 0.79
ROE 17.9%
自己資本比率 17.0%
現在このようになっています。
投資はあくまで『自己判断にて』お願いします。
何かあってもその一切をこちらでは保証できません
それではまた!!
『全力全開全力前進!!!』
(相川伸夫)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)