日本の建国記念日連休前には急落した株式市場も、春節明け後の中国市場の堅調ぶりに、連休明けにはリカバー。さらに、昨日から今日にかけては、米国の暫定予算の期限15日を前に懸念されていた予算案が議会を通過したことで政府機関の閉鎖回避へ、また、米中貿易協議の件でトランプ大統領が柔軟姿勢が見られたことが好感され、投資家のリスク許容度に改善が見られ、空売り派もショートカバーを余儀なくされたようです。
リスクのONとOFFが忙しく交錯、まるで季節の変わり目の天候変化のようです。
為替相場は、2月に入ってから(プチ)ドル高傾向で推移。昨日2月12日にはドル指数(主要通貨をバスケットとした米ドルの相対的価値)が年初来高値となりました。年初から、レンジ内で上下していた相場が、ここへ来て上値を抜いてきた感じです。
最も、ドル高に寄与したのはユーロの弱さです。元々、バスケット通貨の中で比率が高いので、ドル指数はユーロの動きに影響されやすい面はあります。ユーロが年初から下げた背景については後述しようと思います。
ドル円相場も、重石と思われていた110円が上方ブレークしました。オプションがらみの損切り取引、また110円上値のレンジ相場を想定した売りポジションもカットされたのか、直近で年初来高値110.71までありました。年初に(瞬間的に)104円台をつけ「今年は来たか?円高!」と懸念もされましたので、よくぞ、ここまで戻ったものです。
このままドル高円安方向へまっしぐらか?と言うと、ハト派色が出てきた米国の金融政策、米中関係、英国のEU離脱問題、またロシア疑惑のような大統領の弾劾、また水面下のリスクが表面化する可能性なども考えられ、一直線にドル高相場が続くようにも思えません。
年後半に予定される日本の消費増税がらみの事象にも注視して、柔軟に動けるような態勢で臨みたいと思います。
さて、米国の金融政策に携わるFRB(連邦準備理事会)は、国内の物価安定と完全雇用と目指す機関とされています。議長を任命するのは大統領ですが、政府からの独立を遵守するとされています。
現議長のパウエル氏は、前任のイエレン議長から引き続き、金融政策の正常化を粛々と実施してきた印象です。昨年末にも、利上げに神経質になっていた株式市場の一方で、予定通り利上げを決行しました。
そんなパウエル議長が副議長と共に、2月初旬にトランプ大統領、ムニューチン財務長官とのホワイトハウスで行われた夕食会に出席したの報道がありました。
昨年末の利上げについて、トランプ大統領は、パウエル氏をケチョンケチョンに貶していた発言は記憶に新しいところなので、金利安株高志向の大統領からの政治的圧力か?と勘ぐりたくなります。
その勘ぐりを払拭するように、FRBからは会談内容がリリースされ、FRBの独立性の維持は担保されているような主旨のことを伝えました。
ただ、これまでを振り返ると、FRBの議長と副議長と大統領・財務長官が揃っての会談は滅多になかったように思います。トランプ大統領が、滅多にいないタイプの大統領と考えれば、違和感はないのかもしれませんが、来年の中間選挙を意識して株高をキープしたいトランプ氏の立場を考えると、FRBへの何等かの要望(圧力か?)もあったと考えてしまいます。FRBの政策、ハト派バイアスが掛かるのでは?と、やはり勘ぐります。
最近のパウエル議長の講演では、「米国経済は力強いが、恩恵を受けていない地域もある」として、ミシシッピー州のある農村地域の失業率が全米の約2倍の7.3%に達している例を挙げています。
米国の利上げも一旦休止か?の傍らで、世界の主要国の多くからも利上げ後退が観測されています。もちろん、カナダのように利上げ期待が残る国もありますし、今日は政策金利を据え置いたものの来年には利上げがありそうなニュージーランドといった国もありますが。
昨年、量的緩和を修正してきたユーロ圏の欧州中央銀行も、当初は2019年秋頃には利上げが?と思われていたものの、どんどん後退して、直近では2020年第4四半期にあるかないか程度の期待です。2月7日には、欧州委員会が経済予測でドイツ、イタリアを中心に成長率見通しを引き下げ、景気減速懸念が更に強まりました。また、英国の離脱の行方がどうなるのか分からないことも輪をかけています。
ドイツ10年国債は、昨年0.76%まで上昇した場面がありましたが、直近0.11%まで低下。他のユーロ加盟国、例えば、反政府デモのフランス国債、財政悪化が懸念されるイタリアなども対ドイツ国債利回りスプレッドが拡大して、今後の景気への期待値が下がっているのがうかがえます。当面は、通貨ユーロも売られやすい展開となりそうです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※2月13日東京時間14時執筆
本号の情報は2月12日のニューヨーク市場終値ベースを参照しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)