出遅れ銘柄というとこれから投資しようという方には魅力的な対象のように聞こえますが、そこには出遅れているだけの背景もあり、かなり投資リスクも潜んでいます。

 本コラムでは研究成果を無償で提供していますが、当然のことながらリスクは皆さんの負担になります。本コラムを鵜呑みに投資して損をしたとしてもそれは自己責任であることを留意願います。

 ちょっと前置きが長くなってしまいましたが、宜しければご参照下さい。

【出遅れ銘柄の選定】

◇PER:
 東証1部予想平均PER21.9倍、平均PER22倍に対しての出遅れ感、10倍以下の水準にとどまっていて、PERの修正と業績向上の相乗効果で高い運用成果が得られる可能性を秘める。

◇PBR:
 東証1部実績平均PBR1.3倍、実績PBRが市場平均以下の銘柄のなかに、極端に低い銘柄が見出せる。PERや配当利回りなどの指標も比べて割安銘柄を見出せれば投資成果が生まれやすい。

◇配当利回り:
 1.8%前後まで低下してきた東証1部市場平均よりも高い2~4%程度の配当利回りの銘柄がまだまだ見出せます。収益の安定度と成長性、バリュー価値を 総合的に見て出遅れ銘柄を見出していくことが成果につながりやすい。個人投資家であれば株主優待制度も念頭に入れておきたい。


 こうして銘柄を選定したとしても株価の位置が既に過去の安値に対して倍以上にもなっていたりすれば出遅れ銘柄だとは言いにくい状況になります。市場の過 去の上昇率よりも上昇率が低いことも出遅れ銘柄の条件の一つとも言えます。ただ、そうした出遅れ銘柄は業績への不安があっての結果なのかと考えられます。 市場はそうしたネガティブファクターを事前に察知しているケースが多く、結果として業績面の下方修正が起きやすいので注意が必要となります。つまり割安で 出遅れていると見られても、結果としては業績の下方修正で割安感が薄れてしまうこともありうるのです。

◇選定ステップ

1)予想経常利益5億円以上の銘柄に限定
2)今3月期の予想経常利益に対して10倍以下の銘柄を選定
3)実績(第3四半期)PBR0.8倍以下の銘柄を選定
4)配当利回り2%以上の銘柄を選定
5)3つの指標のうち2つ以上の投資指標の評価が高い銘柄を選定する。
6)更に流動性もチェックしてみる。

こうした流れで皆さんも選定してはいかがでしょうか。

 出遅れ銘柄をどの観点を重視して選定されるかは皆さんの主観にもよりますが、割安感もある出遅れ銘柄を見出して株価の変動を見ながら、流動性も勘案して投資のチャンスを伺う皆さんもお見えだろうと思います。

 カネコ種苗(1376)は前橋に本社を置く農業関連企業。種苗事業や農薬、農業資材、花卉なども販売しており、決算期は5月。今期の新四季報ベースの EPS85.1円に対して株価は786円。PER9.2倍、実績PBR0.75倍、配当利回り2.67%で3つの指標で割安感あり。また、昨年10月安値 663円から18%余りの株価上昇に留まっており、出遅れ感が残っています。

 豊橋を本拠にした住宅会社であるサーラ住宅(1405)は10月決算企業で今期の予想業績を減収減益で発表して株価は穏健な動きに留まっています。時価 749円は今期予想EPS100円に対してPER7.5倍、実績PBRは0.63倍、予想配当利回り4.0%となっており、割安感があります。株価は 2011年から上昇傾向を続けておりますが、昨年12月安値631円から18.7%の上昇に留まっています。

 同じ住宅でも万年割安銘柄になってしまった感がある桧家HD(1413)も時価1460円は今12月期予想PER6.8倍と低い水準。利益の蓄積期間が 短いためBPSがまだ積みあがっておらず、実績PBRこそ2.4倍と高いが予想配当利回りは3.15%と高い点が魅力。名古屋2部銘柄ながら出来高は比較 的多い。これら住宅株は27日に上場予定しているタマホームとの比較がなされる可能性があり、短期的な株価の変動も想定されます。来年以降は消費税前の需 要拡大と消費増税後の需要ダウン落ち込みによる株価の変動が想定されます。

 兵庫県姫路市に本社を置く美樹工業(1718)は大阪ガスなどのガス会社の工事を行う比較的地味な企業だが、33億円足らずの時価総額に比べ、年商規模 は260億円前後と大きい。子会社でセキスイハイムを販売。メガソーラービジネスも展開しているが、印象が薄いため、注目されていない。時価284円に対 して今12月期の予想PERは6.2倍に留まっており、実績PBRも0.45倍と低い。配当は年8円を継続して実施しており、配当利回りは2.8%の水準 となっています。昨年10月安値216円に対して時価は31%上昇した水準です。流動性にやや乏しいという欠点を除けば指標面での割安出遅れ感が残ってい ます。
 2010年の経常利益13億99百万円がピークでしたが、これをクリアできるかどうかが株価面でのポイントになりますが、その可能性を秘めているようにも感じます。

 計装エンジニアリングの大手で業績の横這い傾向が見られる日本電技(1723)も万年割安銘柄の一つです。無借金経営ながらリーマンショック後の業績停 滞が株価の動きを鈍くさせています。時価739円は直近の高値になっており、出遅れ感がなくなっているようにも見られます。10月安値581円からは 27%の上昇水準で今3月期予想EPS73.2円に対してPERは10.1倍。実績PBRは0.5倍、配当利回り3%と指標面ではなおも割安感がありま す。問題は来期の業績。新四季報では83円のEPSを予想しており、PERは8.9倍の水準に低下します。この業績見通しに信憑性があるかはともかく現状 の時価総額は61億円で無借金経営で現預金57億円を持っていることからも割安感があると言えます。

 日本電技と同様、空調制御設備建設のオーテック(1736)も出遅れ感があります。今3月期の予想EPS69.9円に対して時価653円はPER9.3 倍。実績PBRは0.39倍、配当利回りは2.3%の水準。来期の業績について明るい見通しが四季報では示されており、来期予想EPSは77.7円。株価 はじり高歩調にはあるが地味な動きを継続中。流動性の問題がネックだが、外国人にも関心を持たれている同社だけにいずれは評価を高めてくると見たい。

 JR東日本系の第一建設(1799)は好財務内容で安定した業績を計上している企業の一つ。万年割安銘柄で、時価887円に対して今3月期予想PERは 7.9倍、実績PBR0.48倍、予想配当利回りも2.1%となっています。成長株ではないし株価も相応に上昇はしていますが出遅れ感が残っている銘柄だ と言えます。

 新日鉄住金系のエンジニアリング会社として存在感を高めている太平工業(1819)も出遅れ気味です。時価345円に対して、今3月期予想PERは四季報ベースでは9.7倍。実績PBR0.47倍。配当利回りは年10円
配当を前提にした場合、2.89%(年1回)となっています。会社計画に対して業績の下方修正が新四季報では予想されていますが指標面では出遅れていると感じられます。

(炎)

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)