産業新潮
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
4月号連載記事


■その7 勝利を収めてから戦闘を始める

●絶対に損をしないこと

 バフェットの金言の中には次のようなものがあります。

一、絶対に損をしないこと
二、一、の内容を絶対に忘れないこと。

 念の入った表現ですが、「損をする」ことが大嫌いなバフェットらしい表現です。しかし「損をしない」ということは、「挑戦しない」ということとは少々違います。

 バフェットの投資先の大多数は優良な大企業ですが、その購入のタイミングは、世間一般の常識とは異なった大胆なものです。
 古くはコカ・コーラ。同社に投資を始めたときには、自称専門家などから「成長の止まった企業を高値掴みした」と馬鹿にされましたが、その後の同社の成長ぶり、株価の上昇はよく知られています。
 また、ITバブルでは「テクノロジーがわからない時代遅れのポンコツ」とマスコミに揶揄されながらも、ドットコム銘柄などのいわゆるIT関連には手を出さず、後に彼の正しさを証明しました。

 さらに、リーマンショックでは、恐怖におびえる市場の大多数をしり目に大型の投資を次々と大胆に実行していきました。


 バフェットの「絶対に損をしないこと」というのは、損をしたくないから物影に隠れて縮こまっているとか、何もしないでただ眺めているというようなことを意味しているのではありません。物事を実行するときには、まず自分自身に対して「絶対に損をしない」と納得させなさいということです。
 熟慮の上「絶対に損をしない」という確信を持っているからこそ、世間の多数派の考えの全く逆のことを行っても恐ろしくは無いのです。

 ただし、どのような確信を持っていても、人間の能力には限界があります。
 「神様」と呼ばれるバフェットが、それだけ熟慮をした判断であっても、間違える(損をする)ことはあります。しかし、彼がすごいのは、その間違いを率直に認めることです。
 有名な「バフェットからの手紙」の中で、毎年のように自分の犯した間違いを発表し、株主だけはなく全世界(現在はホームページで誰でも読むことができる)に公開します。もちろん全体としては大成功しているバフェットだからこそできる、という見方もあるでしょうが、このように自分の失敗を大胆に公表しているからこそ、「絶対に損をしないこと」という言葉が胸に刻まれ、極めて失敗の少ない投資を行っているのが「バフェット流」であると言えます。


●投資を始めたら投資家のすることはほとんどない

 バフェットは「1年間株式市場が閉鎖されても平気でいられる企業だけに投資をすべきだ」といいます。まさに「勝利を収めてから戦闘を始めている」がゆえに、途中で何かが起こって株価が乱高下しても気にする必は無いのです。実際「すでに勝利を収めている」投資家が、途中で起こる細かなことを気にする必要があるでしょうか?

 ところが、大多数の投資家は「勝てるかどうかわからない」状態で投資を始めてしまいます。「勝てるかどうかわからない」状態ですから、いつもびくびくしています。そして、市場のちょっとした変化でおたおたした挙句「安値で売って、高値で買い戻す」というような馬鹿げたことを繰り返す羽目になります。


続きは「産業新潮」
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4月号をご参照ください。


(大原 浩)


★2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」
(JKK)を設立しました。HPは<https://j-kk.org/>です。
★夕刊フジにて「バフェットの次を行く投資術」が連載されています。
(毎週木曜日連載)


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(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)