無事に通過か、と思われた日本の10連休。連休明け直前5月5日の驚きの発信源は、米国トランプ氏のツイートでした。
既に、ご存じのように、米中貿易交渉において、「中国側が約束を破った」ことを理由に、中国製品への10%から25%への輸入関税引き上げや対象商品拡大の方針が打ち出され、中国からも米国からの輸入製品への関税引き上げが報復措置として取られ、資本市場は都度、リスク回避となり、5月相場は波乱でのスタート。特に異例の長い連休ボケにかかりつつあった日本への目覚ましともなりました。
相場格言にSell in Mayというのがあります。6月の半期決算を前にポジションを調整する傾向を示唆したものですが、今回は、まるでMay Stormでした。
5月5日から10日経過して、そろそろ一連の材料も消化されつつあり、また、米中貿易協議の再開もあるようなので、一旦は落ち着きどころ探しでしょうか。相場格言に、「売りは早かれ、買いは遅かれ」というのもあります。
慌てず買い場を探っていくのももありかもしれません。
5月に入ってからのリスクオフ相場で、米国長期金利のベンチマークである10年国債は2.4%水準まで低下(4月末時点では2.5%)。このレベルまで低下してくると、短期金利3カ月物金利2.5%と逆転。今後の利下げも織り込む利回り曲線は、短期から長期にかけて、ゆるい右下がり曲線になっています。市場の利下げ確率予想は、9月、10月あたりから50%を超えています。
利下げ予想もある背景には、来年の米大統領選挙を意識して、やたらと利下げ圧力をFRBに向けるトランプ大統領の存在があるでしょう。
5月のFOMC(米国の金融政策を決定する連邦公開市場委員会)は4月30日~5月1日に行われました。決定は、現状維持。利下げ観測をけん制するためか、現在の金融政策スタンスが適切、中立であり、バイヤスは利上げも利下げにもなく「データー次第」「様子見」を今回は表明しました。
なにしろ、今回のFOMC直前の米株式市場は高値を更新する堅調ぶりでしたから、株価へ配慮する必要はなく、中立スタンスを強調したのは不思議ではありませんでした。
この5月のFOMCの声明文で注目するのは、インフレについての記述です。
声明文の中にも、インフレ率が2%を下回っていることを明記。ただ、パウエル議長は終了後の記者会見でインフレ率が一過性な要因で抑制されているとして、インフレ率は低下していないともしました。一過性の要因が今後一巡していく可能性も視野に、様子見ということでしょうか。
今後、中国からの一般消費者向けの消費財への25%の関税が物価上昇に影響する可能性、また、消費行動にも影響し景気への悪影響がでる可能性も懸念されます。大統領選という要因もありますので、金利を上げるのは難しいと思いますが、一方で下げるにも株価の大きな下落など条件が整うことが必要です。
そんな中で、9月から再開されるFRBバランスシート上の国債の再投資で期間を短期にして短期金利の低下に寄与していくようにしていく可能性もあるかもしれません。
為替市場は、株式市場ほどの大きな変化にはなりませんでしたが、リスクオフの時に起こりやすいケースである、円とスイスフランが買われ、ユーロはほぼ横ばい、他の主要通貨はほぼドル高通貨安に動きました。ユーロの動きが限定的だったことから、ドルの相対的強弱の指数であるドル・インデックスは、弱含みではありましたが、ほぼ横這いの推移。
一方で、このところの動きで目立つのは、人民元の下落です。
4月末での対米ドル6・73台から、直近は6.8750近辺という人民元安。通貨安容認を、米国の増関税に対抗する手段としていると見られます。
ドル円相場の方は、連休前の4月末、111円40銭水準でしたが、5月13日に109円割れ寸前までのドル安円高水準に下落。今年の3月以来の109円台で急落ではありましたが、株の下落幅にしては、ドル円相場は意外と下値はしっかりしているという印象です。
米中貿易摩擦の後は、日本にも米側から圧力がかかるのでは?
為替相場では円高になるのでは?
との懸念も聞かれますが、昨年来続いている為替変動率の低下、日本の超低金利政策の出口がまだまだ遠いこと、一方で米景気に決定的な悪化の気配は見られないことから日米金利金利差の大きな縮小もなさそうです。
年初来のドル円相場は、瞬間についた104円台を除くと、107~112円レンジでした。当面は、著しい円高への動きも予想しがたく、引き続き、ボックス相場で推移する可能性が高いのではないかと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※5月15日東京時間午後2時執筆
本号の情報は5月14日ニューヨーク市場終値ベースを参照しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)