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孫社長率いるソフトバンクグループ(9984)の株価がこのところ低迷傾向にある。一方で重田会長率いる光通信(9435)の株価は比較的堅調に推移している。
世界に打って出て大発展を遂げようとしている孫社長に対して国内での安定した継続課金型ビジネスでキャッシュをため込みながら安定した成長を遂げようとしているように見える重田会長の戦略は地味ながら興味深い。
どちらの生き方が良いかなどとここでは言うつもりはないが、ほぼ同じ時期にIPOした両社の時価総額には大きな差があり過去の時価総額の伸びと言う点ではソフトバンクグループに軍配が上がるのかも知れない。
例えばソフトバンクグループの自己株を除く時価総額約8兆円(税前利益2.1兆円)に対して光通信は約1.1兆円(同815億円)と8倍近い違いがある。とは言え、出している利益に対しての評価と言う視点ではソフトバンクGが3.8倍なのに対して、光通信は13.5倍。圧倒的に光通信への評価が高いことになる。
継続課金型のビジネスに特化した光通信と投資ファンドという生き方を選択したソフトバンクGの評価に違いがあっても当然かも知れないが、投資家の評価は実に面白い。
卓越した目利き能力のある孫社長が自分の目で見出したAI系企業に投資するAI群戦略をベースにした20兆円にも及ぼうかというファンド運用の行く末を今から想像することは不可能だが、多くの投資家の期待は過去の孫社長への評価と同様、更なる成功への期待を水面下では醸成している。
一方の光通信は自社で積み上げてきたキャッシュを用いた国内株への株式運用を基盤としているようだが、派手さはないとしても着実に影響力を増そうとしている。
この世の中には様々な継続型課金にぴったりの商材がある。これをうまくビジネスに取り入れて成長してきたのが光通信と言える。現在、ひそかに投資している企業の株式も現状は純投資だとしても、いずれは何らかの格好で生きてくるのではないかと想像すると極めてしたたかな戦略にも映る。
ソフトバンクGが世界のユニコーン型AI企業に投資するという戦略を掲げるのに対して光通信は広くあまねく割安感のある企業の株式に10%前後のマイナー投資を行いながら資金運用での成果と将来のビジネスアライアンス等による事業領域の拡大を図る戦略なのか?
両社の生き方の違いを眺めると面白いだろう。
因みにソフトバンクGは投資したWeWork株の問題発生でIPOができないなどの不透明要因を抱えてしまったようだ。それも投資額が巨大だけに自ずと評価を下げてしまうことになる。グローバルな投資だけに米中貿易摩擦の影響の受けやすいし、余りに不透明感が強く、孫社長の11月の説明会でのメッセージを聞くまでは不安で仕方がないという投資家があふれているのかも知れない。
一方の光通信は年間1000億円もの有価証券を取得しており、この1Qも212億円の有価証券を取得。相変わらず大量保有報告書に相次いで細かく届けを出しています。
9月24日からだけでも9社の株式買い増し、新規の大株主になっている状況です。会社四季報の株主名に光通信の名前が頻繁に登場していますのでより一層目に触れるようになってきました。
年間1000億円の取得と一方では500億円程度の売却も行うなど細かな売買が頻繁に行われていることが伺えます。基本的な投資対象はテーマではなく割安なバリュー銘柄が主なところ。
ただ、先般投資したうるる(3979)のように上場間もない無配株もあるなど政策的な見地での投資もあるように見受けられる。
このようにソフトバンクGの生き方も光通信の生き方も継続課金型事業から生まれた事業から発生したキャッシュを活かして投資事業にシフトしていくという点では共通しているように見えるが当然ながらその中身はかなり異なっている。
どちらがゴールで笑顔を見せられるのかそれは未来において分かることになる。
【参考:光通信が直近買い増しした保有株】
9月24日
日本プリメックス(2795)
先週末株価826円 33.26万株 6.02%
9月26日
CIJ(4826)
同825円 162.78万株(BP社分も含む)8.32%
荏原実業(6328)
2045円 43.49万株 6.48%
日本高純度化学(4973)
2478円 31.7万株 6.02%
10月1日
うるる(3979)
1270円 新規17.41万株 5.1%
10月3日
ユアサフナショク(8006)
3675円 24.54万株 5.01%
10月4日
神田通信機(1992)
2555円 7.24万株 8.28%
NID(2349)
1257円 101.74万株(うちBP社40.03万株)7.76%
レイズネクスト(6379)
1083円 606.4万株(BP社368.4万株)11.2%
(炎)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)