【NOXセンサー つづき】


 燃焼効率を損ねずNOx発生を抑制させる方法としては低温化や低酸素化が有効だ。燃焼用空気の窒素と酸素が燃焼による高温で発生するサーマルNOxと燃料中の窒素成分が燃焼で酸化されて発生するNOxに分かれる。

 だがサーマルNOxは燃焼温度が高い、酸素濃度が高い、高温域の燃焼ガスの滞留時間が長いと多く発生し、燃料中の窒素成分は酸素濃度が高いほど多く発生する。つまり酸素濃度が高いとNOが多く発生し易くなる。多くはこの過程でNOが発生し、大気中の酸化でNO2となる。


 ガソリンと空気(酸素)を完全燃焼させるストイキ(理論空燃比)を採用するガソリンエンジンの排ガスには殆ど酸素を含んでおらず、空気過多の燃焼を行うディーゼルエンジンでも燃焼後の残留酸素は少なくなっており、排ガスの一部を吸気側に戻し、低酸素濃度のガスを吸気することで燃焼温度を低下させており、ポンピングロスも防げる。

 ディーゼルエンジンでは通常HCやCOの発生量は少なく、PMやNOxの発生が問題であったが、燃焼温度の低く、酸素の充分含んだ状態の排ガスでは触媒が利用し難い。
 燃焼温度こそ低いが、急加速などでの全開時に未燃焼部分が発生。また直噴エンジンを採用するディーゼルでは小排気量でピストン径の小さなセッティングでは噴射燃料がシリンダー内壁に付着し、未燃焼領域の領域を広げてしまう。

 ディーゼルエンジンのNOx低減の方法として排ガス中にアンモニア(NH3)を噴射することでNOxと反応させ、窒素(N2)と水(H2O)に還元させる尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)や触媒上の吸蔵材にNOxを一旦捕獲し、燃料をリッチまたは排気管に噴射させることでNOxを還元させる吸蔵還元型NOx触媒などがある。


 しかし尿素SCR、吸蔵型ともNOxの発生量はエンジン開発時のテストデータに基づく経験則から割り出した値であり、車両の走行状態によるNOxをリアルタイムで測定し還元させるものではなかった。

 そこで開発されたのが日本ガイシによるNOxセンサーで世界初である。
 元々は日本ガイシと日本特殊陶業がセンサー合弁企業を設立して共同開発してきた技術であり、日本特殊陶業の得意とするジルコニアを利用した酸素測定の原理だ。
 開発途中で合弁が解消され、日本ガイシは単独で開発を続け世界で初めて上市に至っており、世界シェアは約90%だ。センサーは日本ガイシが制御系はドイツの某社が開発し、単品でなく吸気から排気系まで含めたシステムとして完成車メーカーに提案しているという。

 残りの10%シェアは兄弟会社で合弁を解消した日本特殊陶業。こちらは日本ガイシと組むドイツ企業とは別のTier1と組み、噴射系中心のシステムとして提案・販売されている。


 SCRの下流に配置するNOxセンサは、SCR触媒の劣化故障検知に用いられる。最近の厳しいNOx規制に対応するため、非常に高精度なNOx検知が要求されている。

 基本特許は日本ガイシが押さえたものの2015年に切れた。他社からの参入が予想されることや、日本特殊陶業&某社の活躍もあろう。市場は相当大きそうだ。

 現状のNOxセンサー出荷はほぼディーゼルエンジン向けで一部乗用車にも。
 トラックでは台当たり1~2本、乗用車は0~1本。


(イノベーションリサーチ 山田順一)


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