コロナ禍で多くの企業が影響を受ける中で比較的安定した業績を上げている企業も見出せる。

 その一つが光通信(9435)だ。

 主として法人向けの継続課金商品を販売し、毎期着実に業績を伸ばしてきた。
 事務機、携帯電話、光回線、保険、電力卸売り、更には個人向けの水サーバーと販売アイテムを積み上げ、今や年商5200億円の企業となってきた。

 継続課金収入から原価等を引いたストック利益が1000億円を突破。
 毎期4000億円の有利子負債を拡大させながら、着実な業容の拡大を図る同社にはもう一つの顔がある。


 機関投資家としての一面だ。

 同社は弁護士一家の中で育った重田康光氏がバブル経済華やかなりし、1988年に設立した企業上場は1996年。旧ソフトバンクやファーストリテイリングから2年ほど後に上場してきた。
 独特の積極営業で第2電電の取次代理店としてスタートした同社は体育会系の営業の会社という印象が強く、時には販売手法に対して訝し気に見られた時期もあったと記憶している。

 その後は携帯販売だけでなくシャープ製のOA機器販売会社として成長を遂げ、1999年には東証1部に上場(重田氏は34歳で最年少)したことで株式市場においても注目を集めたが、旧ソフトバンクと同様にITバブル崩壊後の株価下落局面も思い出される投資家も多いだろう。

 上場から24年を経過し、若かった重田氏も今年で55歳というが、孫社長や柳井社長と同じように世界の長者番付に名前を連ねる。

 光通信は現在、約180もの上場企業の上位10番目以内に入る株主であり、その目的は定かではないが機関投資家的な存在として市場で注目されるようになってきた。

 株式会社光通信、光通信株式会社、ブロードピークが主な株式保有名義人となっており、別働隊での株取得も見られるようだがいずれも光通信が投資していると考えて良いだろう。

 更に重田氏個人の名義で投資している企業、重田氏の持ち株会社としての有限会社光パワーの名義で投資している企業などもあり、まさに日本の株式市場でアクティブな投資をしている主体の一つと考えられる。

 また、重田氏には重田光時氏など3人のご子息がおり、特に光時氏は一時、メディアで話題になったことがあった。

 プレミアウォーター(2588・51.7%)やFTグループ(2763・41.3%)などの子会社を除くと筆頭株主として名前が出てくる企業が増加。
 その中には内田洋行(8057・9.4%)、日本社宅サービス(8945・10.6%)、巴工業(6309・7.1%)、荏原実業(6328・6.5%)、CIJ(4826・8.1%)などがある。

 その保有銘柄の多くは業績安定のバリュー銘柄で占められており、投資スタンスは安定型と言える。IT系の銘柄も含まれるものの、どちらかと言えば低PBR銘柄が多いという印象だ。


【光通信グループが保有する銘柄(コード1000番台】


1.岐阜造園(1438・名証2部)
 3万株 2.6% 8位 光通信株式会社
 時価1450円 時価総額23億円 PBR0.8倍
 保有金額0.4億円

2.日本電技(1723・JQ)
 23万株 2.8% 10位 光通信株式会社
 時価3300円 時価総額271億円 PBR1.1倍
 保有金額7.6億円

3.オーテック(1736・JQ)
 40万株 7.1% 3位 株式会社ブロードピーク
 時価2462円 時価総額140億円 PBR0.8倍
 保有金額9.8億円

4.富士古河E&C(1775・東証2部)
 10万株 1.1% 6位 光通信株式会社
 時価1862円 時価総額168億円 PBR0.7倍
 保有金額1.8億円

5.世紀東急(1898・東証1部)
 203万株 5.0% 2位 株式会社ブロードピーク
 時価752円 時価総額304億円 PBR0.8倍
 保有金額15.2億円

6.北陸電気工事(1930・東証1部)
 35万株 1.4% 7位 光通信株式会社
 時価985円 時価総額246億円 PBR0.6倍
 保有金額3.4億円

7.日本リーテック(1938・東証1部)
 72万株 2.8% 10位 光通信株式会社
 時価3160円 時価総額810億円 PBR1.5倍
 保有金額22.7億円

8.四電工(1939・東証1部)
 10万株 1.2% 10位 光通信株式会社
 時価2369円 時価総額193億円 PBR0.4倍
 保有金額2.3億円

9.東京エネシス(1945・東証1部)
 287万株 7.7% 2位 株式会社ブロードピーク
  45万株 1.2% 不明 重田康光
 時価766円 時価総額285億円 PBR0.4倍
 保有金額22億円(重田氏分含まず)

10.太平電業(1968・東証1部)
 113万株 5.5% 1位 株式会社ブロードピーク
 時価2230円 時価総額454億円 PBR0.6倍
 保有金額25億円

11.神田通信機(1992・JQ)
 29万株 11.1% 1位 株式会社光通信
 時価802円 時価総額21億円 PBR0.5倍
 保有金額2.3億円

12.暁飯島(1997・JQ)
 14万株 6.6% 3位 株式会社光通信
 時価1493円 時価総額33億円 PBR0.6倍
 保有金額2億円

12社の投資時価総額合計は115億円 平均PBR0.7倍


 同社の有価証券報告書によると前期末の投資株式金額の合計は2654億円。
 前年の2275億円から400億円近く増加しているが、売却によるキャピタルゲインも得ながら買い付けも行っているようだ。

 彼らは株式売却を認識の中止と称しており、つまり投資戦略に合致するかしないかで売却を決めているとの説明が書かれている。

 今後も一定の投資戦略に従って株式投資を継続するものと考えられるがコロナ禍後の戦略に変化が出て投資する銘柄に変化が起きるのか注目されるが、基本的には高配当利回りだったり低PBRだったりするバリュー銘柄が中心だと推察される。

 結果として前期は期末にバークシャーハサウェイ278億円のほか、NTT139億円などの株式1920億円を保有。前期中に得たキャピタルゲイン272億円、インカムゲイン49億円を合わせて321億円の収入を得ている。

 目につくのはレオパレス21株を前期末現在で119億円程度保有している
こと。またレイズネクスト(旧新興プランテック)株を89億円分保有したこ
と。一方で114億円分あったフルキャスト株は売却しており、入れ替えが盛
んなことが伺える。


 同社の今期業績見通しは小幅ながら増収増益で増配(402円から420円へ)も予定。
 7月14日払い込みで合計300億円の無担保社債(金利0.45%、1.2%の2種類)を発行した。その用途は不明だが、コロナ禍への対応だろうと推察される。

 なお今期第1四半期業績を8月13日に発表予定。一株2万2650円で100株でも226万円も必要となるため投資単位引き下げなどが求められている。

 基本的には継続的な投資を推進しながら銘柄を入れ替えつつ運用成果を高めている同社のスタンスだが、今後も同社が投資する銘柄がどうなるのか注目していきたい。


(炎)


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)


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