12月末の決算が概ね出揃いました。

 3月期決算企業の第三四半期決算は想定通り、仕入(輸入)コスト負担が大きい製造業や食品、小売り、飲食業などで減益が目立つ一方、輸出メーカーやIT系(グロース)は検討している企業が多かったようです。
 全体としては、それほど悪くはない印象ですが、化学や素材などは随分と利益率が落ちており為替頼みの会社が増えたと感じました。先進的な商材を持たない限り、コストの安い新興国に世代交代せざるを得ない業種なのでしょう。

 食品などの値上がりも顕著ですが、物価高につきましてはマスメディアの論調にあるように、日銀が金利を抑えているためインフレが進み物価が上がって困る・・・のでは無く、日銀が金利を押し下げていたうちに抜本的な成長戦略や構造改革を打ち出し、経済構造を変えることで物価高に耐えられる賃上げに繋げておかねばいけなかったはずです。
 そうしていれば日銀も無理して金利を抑えておくことも無かったのでしょう。

 政府・政治の不作為を日銀の責任にすり替えるのは本末転倒です。


 アベノミクスの本質は金利を引き下げ円安にして交易条件を改善すると共に、経済は勿論のこと、モルヒネが効いているうちに構造改革を進めると期待されたはずです。
 しかしながら安定政権で10年間を費やしてさえ、残念ながら日本の政治家は殆ど変えることが出来なかった。
 癒着により・・・。

 また横道に逸れてしまいました(汗)。


 さて、今の株式市場は、これら決算数字に反応した短期的な投資家による乱高下は毎度のこととしても、良い数字や記事が出ても株価上昇が長続きしません。

 短期的な投資家またはAIで動くファンドの売買が目立ちます。
 短期間で株価が上がるとすかさず叩き落すような売りが出てきますから、これでは数字を見て良かれと思って買いに入った個人投資家は堪りませんね。
 主な売り手は巨額な資金を持つファンドであり、幾らでも借株をして売り叩いてきます。その海外ファンドとて本当に外人投資家なのか、黒目の外人なのかも分かりません。

 ・・・言い始めると毎度キリが無いのでここらで。


 一方の個人投資家には株価の急変動時には直ぐに売買規制が課されます。
 投資家保護との理由によりますが、この中途半端な規制があるため米国のミーム株が乱高下したようなダイナミックさが日本にはありません。
 私見では、投資家保護と言うより(古い慣習に沿っただけの)市場関係者の責任回避が漫然となされているだけではないのかと勘ぐっています。市場運営の上層部も老害で固められていますし、株価の乱高下やM&Aのような動きを嫌う大手割安企業とも利害が一致しているのでしょう。

 投機資金が流動性を供給している事は確かですが、個人投資家の投げを誘発させるほどに売り叩いている事例(相場操縦)は無いのか?などは調べてもらいたいものです。
 AIによる自動売買が増えたことで、我々人間の感覚やスピードを遥かに超えて、短時間で想定以上に乱高下するケースが増えています。

 時代は変わりました。


 大手割安企業は業績が良くなっても株主還元は少なく、開示態度にしても実態(詳細)が見え辛い会社が多いです。
 「新しい資本主義」という言葉とは裏腹に、市場運営を担う取引所や当局による市場活性化への意欲も感じません。何故にプライム市場(もちろん上場市場全体も)の質向上を怠るのか、何故に投資単位を下げる程度の努力すらしないのか。従わない会社への罰則すらありません。

 全ての理由は政官財の癒着です。

 投資単位を下げるコスト負担も株主対応も嫌う大手上場企業や、極端に低いPBRで実力も無いのにプライム市場に居座る地方銀行などからの圧力を受けて市場改革を怠っているからです。ここでも(献金を受けた)痴呆ゴキブリが暗躍しています。

 自分達の怠慢や既得権を放置したまま「貯蓄から投資へ」などと欺瞞を並べ、国民の貴重な財産を都合良く利用することばかり考えています。


 その結果がEB債などによる「貯蓄から損失へ」に繋がりました。
 火曜日(14日)の日経新聞トップにはトラブル続出とありました。
 日本証券業協会の自主ルールとして販売先には十分な投資経験が必要とか、富裕層向けなどと書いてありましたが、ここが大きな勘違いであり、意図的なものか?ただの間抜けなのか?本質を避けています。
 しつこいとほど何度も書いていますが。

 満期1年以下の短期商品であるにもかかわらず、組成会社と販売会社を合わせて10%近い(中には15%もの)スプレッド(いわゆる手数料)を抜いた商品など、金融商品では無く詐欺商品です。金融商品のパフォーマンスにはコストが大きく影響します。平たく言えば、組成の段階で既に、ほぼ利益が出ない(損失が出易い)商品になっていたという事です。
 且つ、参照株式が10%など少しでも上がると強制償還になってしまい、利息もそこで打ち切りとなります。営業マンからは「利息を得つつキチンと元本が返ってきて良かったですね」と言われるのかもしれませんが、仮に半年毎に同様の商品に乗り換えていた場合、投資家の得た利息の倍以上の手数料を支払っていたケースもあったはずです。

 それにもまして昨年のような株価下落に見舞われれば、あっという間に元本が半分などになる訳で、それなりの金融知識があれば儲けが少ない割に相当にリスクの高い商品であると理解できるのではないでしょうか。この知識すら無い投資家に販売していました。
 当局はそんな悪徳商品であることを知っていたはずであり、少なくとも組成会社(大半は大手外資系証券)や販売会社は熟知していたはずです。
 それでも大々的に販売していた。全ては手数料収入のために。

 記事によると、このEB債だけで4年間で10数兆円も売り上げ、組成会社と販売金融機関の両方で(恐らく)1兆円以上もの販売手数料を得ていた一方、個人投資家は何千億円の損失を出したのか。仮に2022年に償還された分だけで20%の損失となれば8千億円にもなります。概算額だけでも良いから金融庁はその試算を開示すべきです。
 金融庁から発出された資料を見ると、毎度のように「販売方法が悪い」といった形式論に話をすり替え、強制力の無い指導だけで有耶無耶(うやむや)にする姿勢です。
 個人投資家保護を考えているとは到底思えません。

 コロナ禍では非効率な医療界に利益をもたらすことで厚労省の天下り先を確保し、オリンピックでは建設会社に利益誘導して政治献金を増やし、天下り先を潤しました。加えて談合や腐敗行為を調べたくとも法令が整っていないため詳細な調査も出来ません。
 立法府のゴキブリや行政シロアリが利権(腐敗)維持のために動かない構図です。
 情けない国になってしまったものです。


 このような環境下でも頑張っている日本のアクティビストに注目しています。
 日本証券金融を提訴したストラテジックキャピタルもその一つです。

 日証金は上場企業であるにも関わらず歴代社長を日銀からの天下りが独占しており(もちろん他のポストにも金融関係者が多数天下り)、そんな中で業績連動報酬に影響する経常利益の水増し疑惑があるとの指摘をしました。これは明らかに疑惑です。
 日証金は証券業界では(襟を正すべき)公器に近い事業会社です。詭弁などもっての外、僅かでも怪しまれる行為をすべきではありません。
 以前より同キャピタルはプレッシャーをかけ続けていますが、所謂「馬耳東風」で日証金は誠実な対応をしてきておりません。

 ストラテジック社の丸木代表には随分昔にお会いしたことがありますが、とても聡明できちんとした投資理論をお持ちの方でした。このような方にこそ日本の株式市場活性化のために存分に活躍していただきたいと願っています。


(街のコンサルタント)


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