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今回は、参院選を前に安倍首相が就任してからのアベノミクス7か月間を回顧し、今後の流れを予測してみました。
民主党の野田前首相が衆議院を解散したのが昨年の11月16日でした。その後、自民党が圧勝した衆議院選挙が12月16日です。ここで上記の為替と資産の動きを確認してみましょう。
実際に為替は、衆議院の解散から大きく動き出し、1ドル80円であったものが100円程度に20%強の円安が進みました。
この円安と上記の各資産の動きを見ますと、「先進国債券」「新興国株式」「新興国債券」の3つに関しては、資産の上昇はこの円安によってほぼ説明が付きます。つまり、円建てでは20%程度上昇しているが、米ドル建てではほぼ横ばいという事になります。
一方で「日本株式」「先進国株式」「国内リート」に関しては、確実に資産価値上昇がありました。最低なのは「日本債券」(預金も同じです)で、今回の資産価値上昇に対して何の効果もなかったということが分かります。
日頃から読者の皆様に「国内債券(預金)」だけではなく、「国内株式」「外国債券」「外国株式」の基本4資産に分散をお勧めしているのは、今回のような 市場の状況になった場合に、きちんと資産を保全していただくために必要な手段だと感じていただけたのではないかと思います。
さて、「アベノミクス」における市場の影響を確認した後は、そもそもの「アベノミクス」について考えていきましょう。
「アベノミクス」は3本の矢という
・大胆な金融政策
・機動的な財政政策
・民間投資を喚起する成長戦略
という3つの政策を軸にしています。
まず一つ目の、大胆な金融政策についてですが、基本的に金融政策は、政府ではなく日本銀行が行う事になっています。安部首相になってからも日本銀行総裁 の白川総裁は慎重な姿勢を崩しませんでしたが、3月20日に日本銀行総裁に黒川氏が就任すると、ただちに金融政策を積極的に緩和する方針を固め、国債を中 心とした積極的な資産買い入れを決定し、欧米の中央銀行と同様に中央銀行のバランスシートを大きく拡大する政策を採用しました。
この結果、金利には大きな影響はなかったものの、諸外国通貨に対する円安には非常に大きな効果がありました。
今後も基本的にはこの超緩和状態は継続することが見込まれており、円安を通じて日本企業の業績回復に大きく寄与していることが考えられます。
また目標インフレ率を2%と置いてありますので、今後の資産運用ではこの2%を上回ることが一つのベンチマークとして意識されるようになると思います。
次に二つ目の、機動的な財政政策についてです。これは具体的には昨年平成24年度の補正予算の事を指しています。平成24年度補正予算は安部内閣になってから急速に編成された補正予算です。
内容をみてみると
・復興・防災対策 3兆7,889億円
・成長による富の創出 3兆1,373億円
・くらしの安心、地域活性化 3兆1,024億円
の10兆2,815億円の補正予算で、経済活性化を図るものです。
これは、明らかに公共工事に大きなカンフル剤となっており、これによってGDPという観点ではもちろんプラスに働いています。
問題はただでさえ、財政的に破綻状況に近い日本の財政の中で、このような公共工事に対する大盤振る舞いを続けることはできないし、本当にこの投資が長期 的な経済成長につながるのかどうかという視点でのチェックが必要です。この補正予算を組んでいる現役の官僚に話を聞く機会もありましたが、とても長期的な 視点で要求したとは思えない(とにかく予算を取れるだけ積み上げた)と聞いています。
つまり、この2本目の矢である機動的な財政政策は2013年には有効であると考えられますが、来年以降はあまり効果がないと考えるのが妥当でしょう。
最後に民間投資を喚起する成長戦略です。成長戦略は6月14日に「日本再興戦略」として発表されました。一通り目を通してみましたが、総花的でこれまで過去何度も政府にて作成された「成長戦略」と大きく変わるものはありませんでした。
つまり、日本の場合には「戦略」がないのではなく、戦略の「実行力」が不足しているという事です。今回の発表では異次元のスピードと成果目標(KPI) のレビューを行うという事になっていますが、こちらもこれまでの戦略でも同様にあった話ですので、あまり期待はできません。
■アベノミクスに対する今後の予測
上記で見てきたとおり、現在のところアベノミクスで中長期に効果がありそうなものは「金融緩和」という一本目の矢だけのように見受けられます。一番肝心な3本目の矢は現在のところは評価が低く、不発に終わる可能性が十分に予測されます。
ただし、この7月の参議院選挙で自民党が圧勝し、安倍政権が長期安定政権になることができれば、これは長期安定政権だという事だけで、これまでのように政策がコロコロ変化する、政策の進捗状況を管理できないという可能性は低下し、経済にはプラスに働く事が考えられます。
日本経済の回復という視点で考えればこのままの金融緩和・円安状態が長期的に続くこと、参院選終了後に安部政権が長期政権として機能することが一番効果的であると考えられますし、その可能性は十分にあるのではないかと考えます。
読者の皆様においては、やはり株式にある程度のウェイトを置きながら、円安やインフレに備えるためにきちんと海外資産も保有するという方針で問題ないのではないかと思います。
株式会社マネーライフプランニング
代表取締役 小屋 洋一
http://www.mlplanning.co.jp/
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
民主党の野田前首相が衆議院を解散したのが昨年の11月16日でした。その後、自民党が圧勝した衆議院選挙が12月16日です。ここで上記の為替と資産の動きを確認してみましょう。
実際に為替は、衆議院の解散から大きく動き出し、1ドル80円であったものが100円程度に20%強の円安が進みました。
この円安と上記の各資産の動きを見ますと、「先進国債券」「新興国株式」「新興国債券」の3つに関しては、資産の上昇はこの円安によってほぼ説明が付きます。つまり、円建てでは20%程度上昇しているが、米ドル建てではほぼ横ばいという事になります。
一方で「日本株式」「先進国株式」「国内リート」に関しては、確実に資産価値上昇がありました。最低なのは「日本債券」(預金も同じです)で、今回の資産価値上昇に対して何の効果もなかったということが分かります。
日頃から読者の皆様に「国内債券(預金)」だけではなく、「国内株式」「外国債券」「外国株式」の基本4資産に分散をお勧めしているのは、今回のような 市場の状況になった場合に、きちんと資産を保全していただくために必要な手段だと感じていただけたのではないかと思います。
さて、「アベノミクス」における市場の影響を確認した後は、そもそもの「アベノミクス」について考えていきましょう。
「アベノミクス」は3本の矢という
・大胆な金融政策
・機動的な財政政策
・民間投資を喚起する成長戦略
という3つの政策を軸にしています。
まず一つ目の、大胆な金融政策についてですが、基本的に金融政策は、政府ではなく日本銀行が行う事になっています。安部首相になってからも日本銀行総裁 の白川総裁は慎重な姿勢を崩しませんでしたが、3月20日に日本銀行総裁に黒川氏が就任すると、ただちに金融政策を積極的に緩和する方針を固め、国債を中 心とした積極的な資産買い入れを決定し、欧米の中央銀行と同様に中央銀行のバランスシートを大きく拡大する政策を採用しました。
この結果、金利には大きな影響はなかったものの、諸外国通貨に対する円安には非常に大きな効果がありました。
今後も基本的にはこの超緩和状態は継続することが見込まれており、円安を通じて日本企業の業績回復に大きく寄与していることが考えられます。
また目標インフレ率を2%と置いてありますので、今後の資産運用ではこの2%を上回ることが一つのベンチマークとして意識されるようになると思います。
次に二つ目の、機動的な財政政策についてです。これは具体的には昨年平成24年度の補正予算の事を指しています。平成24年度補正予算は安部内閣になってから急速に編成された補正予算です。
内容をみてみると
・復興・防災対策 3兆7,889億円
・成長による富の創出 3兆1,373億円
・くらしの安心、地域活性化 3兆1,024億円
の10兆2,815億円の補正予算で、経済活性化を図るものです。
これは、明らかに公共工事に大きなカンフル剤となっており、これによってGDPという観点ではもちろんプラスに働いています。
問題はただでさえ、財政的に破綻状況に近い日本の財政の中で、このような公共工事に対する大盤振る舞いを続けることはできないし、本当にこの投資が長期 的な経済成長につながるのかどうかという視点でのチェックが必要です。この補正予算を組んでいる現役の官僚に話を聞く機会もありましたが、とても長期的な 視点で要求したとは思えない(とにかく予算を取れるだけ積み上げた)と聞いています。
つまり、この2本目の矢である機動的な財政政策は2013年には有効であると考えられますが、来年以降はあまり効果がないと考えるのが妥当でしょう。
最後に民間投資を喚起する成長戦略です。成長戦略は6月14日に「日本再興戦略」として発表されました。一通り目を通してみましたが、総花的でこれまで過去何度も政府にて作成された「成長戦略」と大きく変わるものはありませんでした。
つまり、日本の場合には「戦略」がないのではなく、戦略の「実行力」が不足しているという事です。今回の発表では異次元のスピードと成果目標(KPI) のレビューを行うという事になっていますが、こちらもこれまでの戦略でも同様にあった話ですので、あまり期待はできません。
■アベノミクスに対する今後の予測
上記で見てきたとおり、現在のところアベノミクスで中長期に効果がありそうなものは「金融緩和」という一本目の矢だけのように見受けられます。一番肝心な3本目の矢は現在のところは評価が低く、不発に終わる可能性が十分に予測されます。
ただし、この7月の参議院選挙で自民党が圧勝し、安倍政権が長期安定政権になることができれば、これは長期安定政権だという事だけで、これまでのように政策がコロコロ変化する、政策の進捗状況を管理できないという可能性は低下し、経済にはプラスに働く事が考えられます。
日本経済の回復という視点で考えればこのままの金融緩和・円安状態が長期的に続くこと、参院選終了後に安部政権が長期政権として機能することが一番効果的であると考えられますし、その可能性は十分にあるのではないかと考えます。
読者の皆様においては、やはり株式にある程度のウェイトを置きながら、円安やインフレに備えるためにきちんと海外資産も保有するという方針で問題ないのではないかと思います。
株式会社マネーライフプランニング
代表取締役 小屋 洋一
http://www.mlplanning.co.jp/
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)