ニュースの多い週末でした。週初から市場ムードは大きく好転!!
 先週金曜日に予想を下回る米国8月雇用統計への失望感は、日曜早朝のオリンピック東京開催決定で忘れ去られました。

「祝☆TOKYO☆2020!」

 事前に汚染水問題が海外で大きく報道された為、結果を危ぶむ声があっただけに、尚更の熱烈歓迎でした。東京都試算の3兆円を大きく上回る経済効果を期待する声が高まり、お祭りムードが盛り上がりました。

 週初9日には、日本の第2四半期GDPは速報値(年率、前期比2.6%)を上回る3.8%(同期)に上方修正され、10月1日に安倍首相が消費増税を決断する可能性が高まり、他の刺激策とパッケージする可能性も指摘する向きもあります。

 さらに、懸念されていた米国のシリア攻撃も週末のロシア提案をきっかけに、ムード一変。オバマ大統領は9月11日、米議会にシリア攻撃案の承認延期を要 請。シリア攻撃というリスクは一旦退き、マーケットは株高円安で反応しました。それにしても、今回の米国のシリア攻撃に関する一連のニュースは、国内国外 でのオバマ大統領のリーダーシップの低下を印象づけたように思います。

 懸念材料払しょくの一つに中国の経済指標の好転があります。発表された経済指標を見る限り、製造業PMI、小売売上高、鉱工業生産、貿易収支等々、予想 以上に良い数字となっています。2013年の中国の経済成長率を7.6%増に上方修正するスイス系金融機関もありました。中国政府が経済政策に本腰を入れ たことが功を奏してきているとの指摘も聞かれます。
 日本が尖閣諸島を国有化したのが去年の9月11日。その後の反日運動による日本企業への影響も、徐々に回復してきていると報じられています。一方で、理 財商品への投資、シャドーバンキングは増え続けているとも言われます。まだ手放しでリスクを許容することは出来ないと思いますが、中国の好転の影響が株式 市場、為替市場に出ていることは確かです。例えば、中国関連の会社の株価上昇、中国を最大貿易国とする豪ドル相場の反転などが挙げられます。

 東京株式市場の上昇、ドル円相場100円台回復と、リスクテイクをしている投資家には待っていた秋祭り開催となりました。東京音頭(古いですが)でもか かっているでしょうか。祭りの騒ぎが収まった後の注目点は、米国の金融政策、特に量的緩和縮小が9月に行われるかどうか?そして、FRB(連邦制度理事 会)の次期議長が誰になるか?でしょう。

 市場が注目していた8月の雇用統計が予想を下回り、前月分も下方修正されたことから9月の量的緩和縮小はなく、12月からの実施ではないかという声もあ りますが、9月の小幅縮小実施予想は未だ後退していません。10年物の米国債は一時3%をつけ、雇用統計直後には2.8%中盤まで戻す場面もありました が、直近2.96%まで反発。長期金利上昇のトレンドは変わっていません。

 米金利で特に注目したいのは2年米国債の利回り推移です。5月にバーナンキ議長が量的緩和縮小に言及した際には、量的緩和縮小と利上げは別という見方 で、長期金利が上昇する一方で、2年債は8月中旬頃まで0.26%水準の推移を続けてきていましたが、ここへ来て0.46%程度まで上昇。量的緩和縮小後 の利上げを織り込みつつあるように思います。
 次期FRB議長の候補がサマーズ氏有力とする見方が66.7%(ブルームバーグの直近アンケートによる)もあるとされていることも米国の金利の見方に影響していると思われます。

 2年債の金利は今後の金融政策に対する市場の見方を表しているとされ、2年物の日米金利差の拡大は、ドル高円安の大きな要因になっています。長いスパン での為替相場の決定要因は、マネーの量の比較と言われます。今後、「マネー量をしぼる国」と「マネーを更にばら撒く国」という構図からは、やはり基調は円 安方向変わらず、と考えます。昨今の消費者物価、企業物価指数の上昇傾向も購買力平価を引き上げます。6月&7月と陰線が続き、8月には小幅陽線が出たド ル円相場。9月は5月高値をトライするか?期待をこめて注目しています。

 米国の金融政策変更の可能性は、米国へのマネー回帰、新興国からのマネー流出につながり、8月には新興国通貨は大きく売られましたが、9月に入ってから は、やや落ち着いた動きになりつつあります。ただ、底入れしているとは見えず、材料次第では不安定な動きをする可能性もありますので、要注意です。

 9月は例年売られることが多く波乱が多い月と言われます。また2日が市場スタート日というのも過去の実績は良くないとも聞きます。前半の祭りに浮かれずに、しっかりリスク管理していきたいところです。


 さて、前号でマーケットが不安定なときに、質への逃避が起こり、日本円、日本国債が買われているということを書きましたところ、読者の方より
「質への逃避で円買い…国民一人当たり1,000万円以上も借金している我が国の国債が質が高いと言われてもピンと来ません。日銀が買い支えあるいは買い増しするだろうから安心という意味での質への逃避なんでしょうか?」
というコメントを頂戴しました。

 いつも読んで頂き、コメントを送っていただきまして、ありがとうございます!
 拙コメントを下記にさせて頂きます。

 まず、「質への逃避」の用語についてですが、市場が混乱すると高リスクの資産売りが起こり、安全性の高い資産(短期国債、米国債のように流動性の高い債券等)が買われ安金への逃避が起こります。
 為替相場では、リスクを取りやすい安定した相場では、高金利通貨買い、低金利通貨売りのポジションを持つ人が多いのですが、逆風が吹くと、それを解消する行動がおきます。
 このような行動を市場では英語でFlight to Quality=質への逃避と呼びます。何を持って、質の良し悪しを決めてるの?と言われると基準はないのですが、日本円やスイスフランは安全通貨とされ、逃避先になると言われています。
 特に日本は世界1位の対外純資産を保有していますので、有事の場合には、為替リスクを回避しようとする行動がおこり、円高につながることがあります。311震災後に円高になったのは、一つの例ではないかと思います。

 次に日本国債についてです。財務省のホームページには、日本政府の貸借対照表が出ているので是非ご覧になってください。その中に国の財務書類の貸借対照 表があります。平成23年度政府債務は合計約1088兆円ある一方で、資産は約628兆円で純負債は459兆円。政府負債の中には、政府短期証券のように 為替介入でドル債として資産に含まれるものもあります。
 また、資産には、固定資産のみならず現預金や有価証券といった流動性資産もあります。また、負債には、日本特有の償還のための積立「減債基金」も含まれていると指摘する学者の方もおられます。貸借対照表で見れば純負債額は1000兆円には至らないと言えます。

 また、上記は政府の財務状況で、国全体の資産負債状況を見るには日本銀行の資金循環統計です。2012年3月期データによれば、金融機関、一般法人、家 計(個人)、一般政府、民間非営利団体、海外という区分けを総合すると全体では270兆円のプラスとなり、国民全体では借金していないということになりま す。政府と国は別という視点です。

 ただ、日本国債に関していえば、今のところ金利が低いのですが、今後金利が上昇した場合には金利負担の増加が心配されるわけで、今の財政状態を早く脱しなければならないのは事実だと思います。
 ご質問に対して、簡単ですが以上拙コメントお返しさせて頂きました。

最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。

 今日は311震災から2年半、ニューヨーク911から12年。多くの犠牲者の方々のご冥福を改めて祈りたいと思います。

*9月11日13時執筆。本号の情報は9月10日のニューヨーク市場の終値レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。

式町 みどり拝

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)