ここのところ、総合商社の事業報告書を見ながら思うのは「やはり総合商社は凄い!」ということです。

 総合商社の代表格である三菱商事が日本の近代史と密接につながっているのはよく知られた事実です。日本で初めての株式会社といわれる坂本龍馬の海援隊が 近江屋事件後に後藤象二郎に委ねられ、その後岩崎弥太郎に受け継がれて九十九商会となった企業の流れを汲んでいます。九十九商会は、後に、三菱商会、三菱 蒸汽船会社(後に郵便汽船三菱会社として現在の日本郵船が分離)、三菱社と変遷。このあたりの事情は、NHK大河ドラマ「龍馬伝」でも詳しく描かれまし た。

 また、住友商事(住友グループ)は、17世紀に住友政友(まさとも)<1585-1652>が京都に書林と薬舗を開いたことに始まります。また、同じ 頃、京都で銅吹き(銅精錬)と銅細工業(屋号:泉屋)を営んでいた政友の姉婿、蘇我理右衛門(そがりえもん)<1571-1636>は、粗銅(あらどう) から銀を分離する精錬技術「南蛮吹き」を苦心の末に開発し、それが初期の住友を支える重要な事業となりました。そしてその歴史が現在の住友金属鉱山まで連 綿と続いています。

 明治以降においても、日本の近代化や資本主義の発展に総合商社が果たした役割は、短い紙数では語り尽くせません。第二次世界大戦後の、日本の高度成長において、海外進出の先兵として積極果敢に、海外市場を開拓した功績も重要です。

 その影響か、総合商社というと、世間ではまだまだ<貿易仲介>や<資源>のイメージが強いようですが、各社とも2000年代の初めから大きく構造改革を 行い、<総合事業会社>とでも呼べるビジネスモデルを確立しました。川上から川下まで、製品の製造・流通・販売すべてを総合商社の傘下企業で取扱い、ビジ ネスの効率化と市場の支配力強化を進める手法です。

 バフエットのいわゆるバークシャー帝国も、多数の企業をバークシャー傘下に抱える点で総合商社に似ていますが、バークシャーの場合は参加企業同士の交流 はほとんどなく、買収の際にもあくまで個別企業の収益性に重点を置いた判断を行い、企業間のシナジーについては基本的に考慮しません。

 2020年の東京オリンピックまでの日本経済発展は間違いありませんが、その日本を牽引する先兵は、やはり総合商社です。言ってみれば、これから(これまでも)の総合商社の役割は、大英帝国を繁栄に導いた東インド会社の
ようなものです。国家を代表する企業として巨大なビジネスを行いながら、日本の繁栄に大いに貢献するわけです。

 これは財閥の復活といっても良いでしょう。戦後GHQの命令で財閥解体が行われ、それが戦前の軍国主義の否定の一環と受け取られたため、財閥には否定的なイメージが付きまといますが、巨大財閥こそが国家繁栄の礎です。

 例えば韓国では、サムスンをはじめとする巨大財閥(主に十大財閥)が高成長を牽引してきました。韓国が発展したのは、巨大財閥に富も権力も集中させたか らです。もっとも、サムスン財閥への集中が行き過ぎて(グループがGDPの2割を占める)、サムスンが倒れれば韓国が崩壊すると言われるほどになり、実際 にその日が近づいています。

 しかし、日本は心配いりません。複数のそれぞれ特徴のある巨大財閥が活躍しているからです。

 資源分野に強いのは、三菱商事と三井物産で、それぞれ連結純利益の6割強、9割強が資源分野で占められます。丸紅も、食糧やエネルギー分野に強みを持っています。

 伊藤忠商事や住友商事は、非資源分野に強みを持っており、ファイナンス、ネットワーク、エンタテイメントなどの幅広い分野で活躍しています。例えば、 ケーブルテレビのJCOMは住友商事傘下、Eギャランティ、東京センチュリーリース、ファミリーマートは伊藤忠商事傘下。また、日本ケンタッキーフライド チキンの筆頭株主は、64.8%を保有する三菱商事、ローソンも三菱商事の傘下です。

 総合商社の子会社(傘下)企業には、親会社のブランド力、資金調達力、サポートを最大限に活用して、急速に発展している企業がたくさんあります。特に伊藤忠商事の傘下企業には見るべきものが多く、私もその中の数社に実際に投資をしています。

 このように、総合商社とその傘下の企業群(財閥)は、明治維新以来の日本の経済を牽引してきただけでは無く、これからの日本をも繁栄に導いていくのです。

(OH)

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