~世界のリード役になる日本の株式市場~

 読者の皆さんの年齢はおいくつですか?

 筆者は1957年生まれで既に57歳になっています。株式市場と向き合ってはや47年にもなります(10歳の時に株式市場に興味を持ちましたので)。

 およそ20歳から80歳までの幅広い世代の方にご愛読賜っているものと思います。年齢がどうであれ、それなりに様々な経済変動を経験されてきたものと推察されます。

 そんな私が現在の日本のマクロ経済と株式市場についての雑感を申し述べます。
 結論から言うとマクロ経済は基調としてのデフレ脱却、雇用を伴う景気回復に向かって多少の紆余曲折はあっても着々と進展していくと思われますので、ここ はぜひポジティブなスタンスで取り組んで頂きたいと思います。特に40歳以下の若い投資家には10年タームでの経済展望を踏まえてリスクを取って頂きた い。まずは冷静にマクロ経済と個別企業の動向を見据えた研究をされてはいかがでしょうか。

 さて、日本には1億2000万人が暮らしていて、それぞれのエリアで社会生活を送っています。

 戦後の日本経済は紆余曲折はありますが国も民間も戦争で疲弊した社会から向け出そうと必死で努力してきました。その結果、米国に次ぐ世界第2位の経済大国となり、世界経済にも貢献してきたという歴史上の事実があります。

 戦前世代のDNAを受け継いで戦後の高度成長時代を生き抜いてきた60歳から70歳の団塊の世代が営々と築いてきた日本経済はバブル経済の崩壊とともに 姿を変えてしました。日本はモノづくり立国という基本的な立ち位置を活かした世界貢献をしてきたという自負心があります。

 欧米他国の金融立国に対して日本ではモノづくりやおもてなしを基本としたサービスや特許、著作権など知財を特色とした国作りがなされてきたように思われます。そうした経済基盤から世界で活躍する多くのグローバル企業が輩出されてきました。
 残念ながら米国のようなベンチャー企業を支援育成するインフラ構築に遅れをとり、近未来に世界で活躍できる企業が生まれていないのが問題です。

 かつて世界中でダイナミックな活躍を示したソニーの勢いが止まるなど韓国サムスンや米アップルの前に停滞して世界をリードすべき新たな産業企業はなかなか見い出せなくなってしまいました。
 その担い手は基本的には今や右から左型の口銭ビジネスモデルの大手商社ぐらいでしょうか?日本独自のビジネスモデルを世界に提示する企業としてはユニ・チャームやSMC、ファナック、キーエンスなどでしょう。
 トヨタやホンダなどの自動車メーカーはグローバル化して確固たる地位を得ていますが、日本国を代表する企業として今後も世界をリードすると考えて良いでしょうが、新たな産業育成・創出が今後の成長には不可欠です。

 輸出依存度が低い日本の経済では内需中心の産業企業が活躍をしていますが、最初からグローバルな活動はできません。良い物を作れば世界中で売れる、1ド ル=80円の円高下でも日本のモノづくり企業は耐えてきましたが、円安への転換でもともと高品質な製品を作っていける日本の多くのモノづくり企業が復活を 遂げようとしているのではないかと思われます。
 次の10年では為替に影響を受けることなく、市場性や利便性、品質などに優れた新成長商材を開発創出する企業の成長が不可欠です。日本の株式市場はそうした新成長企業を輩出するためのインフラとなりうるのではないかと思います(個人的願望です)。

 強烈な個性を持った経営者は叩かれる傾向にありますが、世界市場で成長を続けることのできる成長企業を生み出す社会インフラを支える皆さんのような投資 家が自信をもって日本の株式市場によりポジティブに関わって頂きたいと考えます。日本が世界に貢献するビジネスを改めて考えて頂き、企業の成長を楽しんで 頂くことが必要です。
 外国人投資家によって演出されてきた株高が一服するのであれば、ここは国内投資家の出番となります。時間分散と銘柄分散でリスク分散をしながら再びポジティブな株式投資に努めて頂きたいと思います。

 中長期的な視点で見ると経済活動は循環しています。消費財の多くは古くなれば買い替え需要が生まれ停滞していた経済が再び上向くことになります。消費者 から見れば技術革新や魅力的なサービスが企業側から創出されることで買いたいもの・サービスが登場すると消費行動が高まりますが、国家経済は民間の自助努 力がないと経済成長は実現しません。
 消費税増税が実行された場合は既存製品の物価が上がるために消費は減少してしまうことになりますが、その段階で技術革新による魅力的な製品やサービスが市場に投入されれば消費税増税のマイナスをはねのけて消費は増加し、経済成長に貢献します。

 バブル崩壊後の過去20年間の閉塞的な経済下においても革新的な製品やサービスが生み出されてきました。
 携帯電話、スマホ、モバイルPC、タブレット端末など革新的な社会生活ツールをはじめ、それに付随したサービスやコンテンツはバブル経済前にはなかった ものです。家電産業や自動車産業は日本経済を発展に導きましたが、時代とともに社会ニーズが変化し、一国のリーディング産業が変化していく姿が読み取れま す。
 国家主導による産業育成は今や原発が破たんしたエネルギー分野においてソーラー産業、自然エネルギー産業、売電サービス、省エネサービスを生み出しています。ハードに付随したシステム、サービスの新たな産業が継続的に盛り上がりを見せています。

 株式市場は新たな成長産業を見出そうと必死ですが、創薬ベンチャーの人気はそうした市場人気の表れかも知れません。ただ、そうした未来を予見したテーマ 買いは時に失敗に終わることもあります。旧来型のビジネスである生産から消費までのサイクルが短い農業をテーマにしても実際には農業は流通の世界の牛耳ら れて収益を上げられないからこそ2次産業(食品加工)、3次産業(流通サービス)が生まれ、今やこれらを複合化した6次産業化などへ変遷して発展を図ろう としているのだろうと思われます。

 すべての産業・システム・サービスで知財を活用した高付加価値化がポイントになっているとの認識は多くの投資家の共通認識かと思います。

 輸出という視点で考えた場合、市場ニーズは国によって異なりますが、世界中にニーズのある自動車・建機、鉄道インフラ、水道インフラ、家電、通信機器、 電子部品、ロボット、医療機器、医薬品などの市場ニーズはますます拡大してくると期待されます。世界中で日本の優秀な製品が期待されている中で新成長商品 を開発し世界中に販売して業績を拡大させる日本の新成長企業の登場が今後の株式市場を活性化させると期待されます。

 そうした意味で民間企業は市場に魅力的な商品やサービスを提供することが一層求められます。アベノミクスの第3の矢による成長戦略は日本の民間企業のそうした取り組みを鼓舞しようという狙いがあると私は受け止めています。

 アベノミクスの第1の矢、金融緩和政策に第2の矢、公共投資政策が加わり、景気回復期待から株高が演出され、日本経済がデフレからの脱却を果たす好循環が生まれつつある中、いよいよ消費税増税がまじかに迫ってきました。
 株式相場は消費税増税前の停滞局面を迎えていますが、むしろそうした局面こそ次の展開に向けた投資チャンスだと前向きに考えていきたいところです。 2020年東京オリンピックに向けて日本の株式市場は世界のリード役になる・・・。それはひとえに積極的に自己責任、自己研鑚の下でリスクテイクされる皆 さんのような投資家の地道な活動によるのかも知れません。

(炎)

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)