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国土交通省が発表している統計データで興味深いのは、平成23年度をボトムにして建設投資(政府投資、民間住宅、民間非住宅建設)が増加していることです。
実は皆さんもご存知かと思いますが、日本の建設投資は平成4年度(つまり1992年度)の84兆円でピークを打ち、平成23年度まで減少傾向を辿り、42兆円という水準まで低下しました。
平成4年度以降の建設投資は平成20年度を除くと平成23年度まで継続して減少してきました。
ピークの水準から約半分となってる訳ですから、それに関係する企業にとっては事業レベルが半分程度にまでなった筈です。つまり建設投資に関わる多くのゼネコンが売上規模を縮小してきたことになります。
建設投資の内訳は政府投資と民間住宅、民間非住宅建設投資に分かれますが、それぞれピークが異なっており、政府投資は平成8年度の35兆円から平成19 年度から23年度の17から18兆円で底ばいを続け平成24年度は18兆8600億円、平成25年度は21兆9600億円と増加する見通しを示していま す。
民間住宅は平成8年度の28兆円をピークに平成21年度には12兆8404億円にまで低下し、23年度は13兆3800億円、24年度13兆9800億円、25年度14兆8900億円と増加見通しです。
また民間非住宅建設投資は平成3年度の31兆円をピークに平成22年度の10兆9683億円へと低下。その後23年度11兆3000億円、24年度12兆600億円、25年度13兆1000億円へと増加見通しです。
過去の建設投資の推移は事実として受け止めないとなりません。
まず日本の財政問題を踏まえて政府投資は抑制されてきましたが、東北大震災の復興に向けた投資が始まったことや景気浮揚に向けた大義名分によって大震災に備えた社会インフラ整備の実行が始まったことなどもあり25年度は公共事業を中心に2ケタ成長が見込まれています。
また、民間非住宅建設投資も円安による生産設備の国内回帰もあって同様に伸びてきています。
民間住宅は低金利と景気回復期待、消費税増税前の駆け込み需要を前提に25年度の伸びが期待されています。
25年度の建設投資50兆円のレベルは昭和50年代後半のレベルと同じであることがわかります。
昭和60年度の50兆円水準から7年後の平成4年度の84兆円まで34兆円増加していますが建築物や土木構造物は30年も経過すれば多くは老朽化してきますので今後は買い替え需要が発生してくることが想定されます。
大震災後の日本の国土強靭化政策と円安による生産設備増強に加えて2020年の東京オリンピック開催が今後のポイントとなります。26年度については 25年度の増加の反動で若干減少が予想されていますが消費税増税後の景気対策から公共投資の継続で引き続き増加基調が続く可能性があります。
東京オリンピックに伴う建設投資についてはまだ工事着工は期待できませんが、設計に要する期間が1年間から1年半あって、具体的に着工するのは2015 年からになるとされます。最終的には開催の約1年間までに多くの建物施設が完成する予定になるかと思います。つまり2018年あたりまで着工工事は増える 可能性があります。
大手ゼネコンでは既にオリンピックに向けた体制を構築しつつありますが、職能工を中心に人手不足がネックとなっていることが課題です。
建設投資の増加を背景に大手ゼネコンをはじめとして準大手、中堅ゼネコンの第3四半期までの受注は好調です。
人件費の増加といったネガティブな要因はありますが、これらの建設関連企業が20年タームでの評価向上が期待される背景は建設投資の増加基調が背景になっていると考えられます。
本日はその中にあって空調・給排水設備専門の大成温調をレポートしておきたいと思います。
【受注好調な大成温調(1904)】
今期の第3四半期までの連結受注額が前年同期比39.8%増の463億円(単体では43.7%増の383億円となっていて大変に好調な状況で、株価も堅 調に推移しています。同社は建設投資額が80兆円台でピークを迎えた1991年頃に株式をJASDAQに公開して、その際に5660円(その後1.5分割 を実施)という高値をつけたという実績があります。
過去1年間の株価の堅調さがこうした客観的なマクロ経済の動向を織り込んでいるのかどうかは不明ですが、個別銘柄の評価においては同社の場合、圧倒的にPBRが低いという点で評価の余地があります。
ここ3年程度の期間を振り返るとボトムの273円から6割もの上昇を示しており高水準だとの意見もあるでしょうが、上場時の株価と比べると400円台と いうのはまだ相当に低水準にあるという事ができます。この点について業界特有の何かネガティブなことがあるのかを大手ゼネコンの方に聞いてみましたが、特 にそうしたネガティブな要因は見当たりませんでした。
つまり同社株は今後公共投資の増加によって上昇傾向が続くと評価すれば上場時のような高株価になる可能性もあるのではないかと考えています。
現状のPBRが0.3倍台に留まっている水準は市場平均を大きく下回っており明らかに評価不足だという事ができます。問題は今期予想PERが現状の予想EPS26.7円に対して16.5倍という水準にあるということです。
しかしながら、四半期決算の推移を見ると今期は第3四半期までの経常利益が1億19百万円の赤字で前年同期の9億41百万円の赤字から8億20百万円も 改善していることです。同社は通常,、第4四半期に大きく売上と利益が出ますので、今期もそうした状況になると見られますが、前期の第4四半期の経常利益 は13億67百万円ありましたので今期も仮にこの程度の経常利益が計上できれば通期の経常利益は14億円以上にもなります。
実際にはどうなるかまだ不透明ではありますが、好調な受注増と四半期業績推移を勘案すれば今期の着地が大きく伸びる可能性が高いと推察されます。
また、受注が好調なことから工事の進捗とともに来期も業績は高水準となる可能性があります。
省エネ空調工事、ソーラー発電事業、などの業績寄与が今後の期待材料でもあります。
現在人手不足が言われていますが同社は技術者集団でもあり、900名の従業員の多くは建築士や管工事施工管理技士、電気工事士などの資格を持ったエンジニアです。最近では雪空調システムを特許出願するなど技術開発にも注力しています。
先週末の時価総額は62.6億円。自社株を除いた実質時価総額は57億円で保有している実質現預金86億円に対して大幅に下回った状態です。実質現預金並みに評価されただけでも今の株価水準とは異なってきます。
今3月期の業績が上方修正されるのかどうかは実際にはまだわかりませんが、期末の一株当たり配当金は13円(年1回)を予定しており、予想配当利回りは2.9%で、比較的高い水準です。
中国での需要低下(日本からの進出企業の減少)というリスク要因はありますが、同社はベトナムなどチャイナ+1のニーズが高まっている他の地域での取り 組みを強化し、中国以外のベトナムやインド、フィリピン、ハワイなどのグローバルなエリアでの受注獲得に努めています。同社は今後グローバルな成長を遂げ る要素のある財務内容良好な成長企業であるということができます。(既に先日グローバルな組織改革を発表しております。)
第3四半期までの粗利率は大手ゼネコンと同様に8.65%と低く改善余地はありますが、前年同期の6.09%からは改善してきています。前期末の粗利率8.09%に対して今期末通期の粗利率の向上がどの程度になるのか注目されます。
現在はJASDAQに上場していますが、将来は東証1部へと昇格しグローバル展開に拍車がかかってくると期待されます。
(炎)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
実は皆さんもご存知かと思いますが、日本の建設投資は平成4年度(つまり1992年度)の84兆円でピークを打ち、平成23年度まで減少傾向を辿り、42兆円という水準まで低下しました。
平成4年度以降の建設投資は平成20年度を除くと平成23年度まで継続して減少してきました。
ピークの水準から約半分となってる訳ですから、それに関係する企業にとっては事業レベルが半分程度にまでなった筈です。つまり建設投資に関わる多くのゼネコンが売上規模を縮小してきたことになります。
建設投資の内訳は政府投資と民間住宅、民間非住宅建設投資に分かれますが、それぞれピークが異なっており、政府投資は平成8年度の35兆円から平成19 年度から23年度の17から18兆円で底ばいを続け平成24年度は18兆8600億円、平成25年度は21兆9600億円と増加する見通しを示していま す。
民間住宅は平成8年度の28兆円をピークに平成21年度には12兆8404億円にまで低下し、23年度は13兆3800億円、24年度13兆9800億円、25年度14兆8900億円と増加見通しです。
また民間非住宅建設投資は平成3年度の31兆円をピークに平成22年度の10兆9683億円へと低下。その後23年度11兆3000億円、24年度12兆600億円、25年度13兆1000億円へと増加見通しです。
過去の建設投資の推移は事実として受け止めないとなりません。
まず日本の財政問題を踏まえて政府投資は抑制されてきましたが、東北大震災の復興に向けた投資が始まったことや景気浮揚に向けた大義名分によって大震災に備えた社会インフラ整備の実行が始まったことなどもあり25年度は公共事業を中心に2ケタ成長が見込まれています。
また、民間非住宅建設投資も円安による生産設備の国内回帰もあって同様に伸びてきています。
民間住宅は低金利と景気回復期待、消費税増税前の駆け込み需要を前提に25年度の伸びが期待されています。
25年度の建設投資50兆円のレベルは昭和50年代後半のレベルと同じであることがわかります。
昭和60年度の50兆円水準から7年後の平成4年度の84兆円まで34兆円増加していますが建築物や土木構造物は30年も経過すれば多くは老朽化してきますので今後は買い替え需要が発生してくることが想定されます。
大震災後の日本の国土強靭化政策と円安による生産設備増強に加えて2020年の東京オリンピック開催が今後のポイントとなります。26年度については 25年度の増加の反動で若干減少が予想されていますが消費税増税後の景気対策から公共投資の継続で引き続き増加基調が続く可能性があります。
東京オリンピックに伴う建設投資についてはまだ工事着工は期待できませんが、設計に要する期間が1年間から1年半あって、具体的に着工するのは2015 年からになるとされます。最終的には開催の約1年間までに多くの建物施設が完成する予定になるかと思います。つまり2018年あたりまで着工工事は増える 可能性があります。
大手ゼネコンでは既にオリンピックに向けた体制を構築しつつありますが、職能工を中心に人手不足がネックとなっていることが課題です。
建設投資の増加を背景に大手ゼネコンをはじめとして準大手、中堅ゼネコンの第3四半期までの受注は好調です。
人件費の増加といったネガティブな要因はありますが、これらの建設関連企業が20年タームでの評価向上が期待される背景は建設投資の増加基調が背景になっていると考えられます。
本日はその中にあって空調・給排水設備専門の大成温調をレポートしておきたいと思います。
【受注好調な大成温調(1904)】
今期の第3四半期までの連結受注額が前年同期比39.8%増の463億円(単体では43.7%増の383億円となっていて大変に好調な状況で、株価も堅 調に推移しています。同社は建設投資額が80兆円台でピークを迎えた1991年頃に株式をJASDAQに公開して、その際に5660円(その後1.5分割 を実施)という高値をつけたという実績があります。
過去1年間の株価の堅調さがこうした客観的なマクロ経済の動向を織り込んでいるのかどうかは不明ですが、個別銘柄の評価においては同社の場合、圧倒的にPBRが低いという点で評価の余地があります。
ここ3年程度の期間を振り返るとボトムの273円から6割もの上昇を示しており高水準だとの意見もあるでしょうが、上場時の株価と比べると400円台と いうのはまだ相当に低水準にあるという事ができます。この点について業界特有の何かネガティブなことがあるのかを大手ゼネコンの方に聞いてみましたが、特 にそうしたネガティブな要因は見当たりませんでした。
つまり同社株は今後公共投資の増加によって上昇傾向が続くと評価すれば上場時のような高株価になる可能性もあるのではないかと考えています。
現状のPBRが0.3倍台に留まっている水準は市場平均を大きく下回っており明らかに評価不足だという事ができます。問題は今期予想PERが現状の予想EPS26.7円に対して16.5倍という水準にあるということです。
しかしながら、四半期決算の推移を見ると今期は第3四半期までの経常利益が1億19百万円の赤字で前年同期の9億41百万円の赤字から8億20百万円も 改善していることです。同社は通常,、第4四半期に大きく売上と利益が出ますので、今期もそうした状況になると見られますが、前期の第4四半期の経常利益 は13億67百万円ありましたので今期も仮にこの程度の経常利益が計上できれば通期の経常利益は14億円以上にもなります。
実際にはどうなるかまだ不透明ではありますが、好調な受注増と四半期業績推移を勘案すれば今期の着地が大きく伸びる可能性が高いと推察されます。
また、受注が好調なことから工事の進捗とともに来期も業績は高水準となる可能性があります。
省エネ空調工事、ソーラー発電事業、などの業績寄与が今後の期待材料でもあります。
現在人手不足が言われていますが同社は技術者集団でもあり、900名の従業員の多くは建築士や管工事施工管理技士、電気工事士などの資格を持ったエンジニアです。最近では雪空調システムを特許出願するなど技術開発にも注力しています。
先週末の時価総額は62.6億円。自社株を除いた実質時価総額は57億円で保有している実質現預金86億円に対して大幅に下回った状態です。実質現預金並みに評価されただけでも今の株価水準とは異なってきます。
今3月期の業績が上方修正されるのかどうかは実際にはまだわかりませんが、期末の一株当たり配当金は13円(年1回)を予定しており、予想配当利回りは2.9%で、比較的高い水準です。
中国での需要低下(日本からの進出企業の減少)というリスク要因はありますが、同社はベトナムなどチャイナ+1のニーズが高まっている他の地域での取り 組みを強化し、中国以外のベトナムやインド、フィリピン、ハワイなどのグローバルなエリアでの受注獲得に努めています。同社は今後グローバルな成長を遂げ る要素のある財務内容良好な成長企業であるということができます。(既に先日グローバルな組織改革を発表しております。)
第3四半期までの粗利率は大手ゼネコンと同様に8.65%と低く改善余地はありますが、前年同期の6.09%からは改善してきています。前期末の粗利率8.09%に対して今期末通期の粗利率の向上がどの程度になるのか注目されます。
現在はJASDAQに上場していますが、将来は東証1部へと昇格しグローバル展開に拍車がかかってくると期待されます。
(炎)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)