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緊迫したウクライナ情勢が伝えられる中、先週末、ロシア軍がクリミア半島に派遣されると一気にきな臭くなりました。クリミア半島はロシア系住民が多く住む と言われる地域です。金融市場ではリスク回避姿勢が強まり、株式市場では株価下落、為替市場では円やリスク回避通貨買いに繋がりました。その後、4日には ロシアが軍事力を行使しないという報が伝わり、リスク回避ムードは緩和されました。今年は新興国発のトラブルが絶えない年のようです。1月にはアルゼンチ ンの外貨準備不足によるショックが相場急落につながった経緯があります。
年初の新興国通貨の下落は、ほぼ全面安で米国の中央銀行FRB(連邦準備理事会)による量的緩和の段階的終了(QE3のテ―パリング)が犯人説とする声 が聞かれ、FRBが新興国への配慮が足りないのではないかという批判も聞かれました。FRBが世界の中央銀行であるかのような反応でした。
一方で、今回のウクライナ問題を受けての新興国通貨への影響は、ロシア・ルーブルが年初来10%以上急落する中でトルコ・リラの下落は3%程度、一方、 アジア通貨は軽微で、通貨によりまちまちでした。また、1月のアルゼンチン通貨問題の時には、同通貨が20%近い下落した一方で、メキシコ・ペソは3%程 度、アジアや東欧の新興国通貨も1~2%程度の下落で済みました。この辺りはかつての世界金融危機発生時のパニック的全面安と比べると異なる反応です。
地政学的リスク以外で大きく売られる通貨は、インフレコントロール困難、外貨準備が底をつく、経常収支の大きな赤字などの特徴が見られます。新興国と いっても一様の動きではなくなっているので、通貨投資の際には、よく見極める必要があります。また、一概に米国の金融政策の変更だけが影響しているとも言 えないでしょう。
さて、ロシア寄り政権への反発から悪化したウクライナの国内問題。ロシア系住民を守るという名目からのロシアが軍隊を待機させ地域を制圧したため、質へ の逃避行動で米国債や金、原油が買われました。米国債券市場で10年物は一時2.6%を下回る場面もあり、為替市場ではドル安方向に反応。米ドルの対バス ケット通貨相場であるドル指数は3月3日、今年最安値の79.68まで下落しました。
そんな中、週明け3月3日ドル円相場は102円台から安値101円20銭まで下落。その後、翌4日には安値は101円40銭をつけた後、情勢の緩和を受 けて102円台に反騰。今年2月4日の下落時、100円台へ突入した場面がありましたから、下値の耐久度があがったとも言えます。或いは、相場にエネル ギーがないのかもしれません。
今日現在、ドル・円の200日移動平均は100円21銭、100日移動平均は101円96銭、50日は103円16銭にあります。2月の相場は101円 から102円後半、主に102円を挟んだ近辺での動きに終始しました。予想以上の貿易赤字拡大による輸入決済需要によるドル不足、日米金融政策の出口への 距離の差、インフレ格差の変化などの円安要因がある一方で、米国景気に天候がどこまで影響しているのか計りかねているという状況もあります。春待ち状態で しょうか。
米国経済の重要指標として、今週は2月の雇用統計が注目されています。厳しい寒さが続いた2月。数字が悪ければ天候の影響という解釈につながるかもしれ ず、FRB新議長の発言の中にも天候を除いた部分の景況を見極めようとしている姿勢が見られます。とは言え、量的緩和は段階的に今年中で終了していくとい うコンセンサスは浸透してきているようです。それに伴って、米国債利回りもじょじょに上昇していくものと思います。ドル円相場は、しばらくレンジ内での動 きに終始しそうですが、下値は限定的ではないかと考えています。
上昇を続けてきた中国人民元が2年ぶりに大きく下げたのは2月20日でした。中国人民銀行が人民元の中心レートを低い水準に設定したことに加えて、景気 縮小懸念もありました。米ドル対人民元相場は1月の6.0440水準から2月28日には6.1457水準までの人民元安に。中国人民銀行が、為替相場の許 容変動幅を拡大(現在の上下1%を2%に)すること、短期の資本流入圧力を軽減することを意図しているとされています。人民元上昇は中期的に継続されると いう見方もある中で、およそ4年間上昇が続いてきた人民元相場が調整を迎えたとも見られます。円相場にも影響がありますので、要注目です。
今週は、欧州中銀理事会が6日に開催されます。利下げがあるかどうかが注目されていますが、先週出たユーロ圏の消費者物価は予想よりも高い数字が出て利 下げ期待が払しょくされて、一時対ドルで1.38台まで買われる場面がありました。ウクライナ情勢緊迫を受けて1.37台に反落しましたが、下値はしっか りしている感があります。レンジ相場を前提に対応したいと思っていますが、イベントを挟みブレが大きくなる可能性があります。
クリミア半島は、かつてのクリミア戦争が知られています。ロシアと英仏等の連合軍が戦い、犠牲者も多かったようです。ナイチンゲールの活躍もこの戦争時 と記憶しています。不凍港を求めて南下政策をとってきたロシアはキプロスをはじめ、黒海周辺には軍事関連施設も多く、地政学的リスクは大変高いとされてき ました。ウクライナ問題へのロシアの関与が直ぐに収束されるとも思えません。ただ、この問題が世界金融危機に繋がる可能性は高くはないようにも思います。
しばらくは、悲観も楽観もなく注意深く下値拾いしていくのが適当な行動ではないかと思っています。
今週末からパラリンピックが開催されるソチは、黒海近く。無事開催を祈念しています。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
式町みどり拝
*3月5日午後2時執筆。本号の情報は3月4日のニューヨーク市場終値レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
年初の新興国通貨の下落は、ほぼ全面安で米国の中央銀行FRB(連邦準備理事会)による量的緩和の段階的終了(QE3のテ―パリング)が犯人説とする声 が聞かれ、FRBが新興国への配慮が足りないのではないかという批判も聞かれました。FRBが世界の中央銀行であるかのような反応でした。
一方で、今回のウクライナ問題を受けての新興国通貨への影響は、ロシア・ルーブルが年初来10%以上急落する中でトルコ・リラの下落は3%程度、一方、 アジア通貨は軽微で、通貨によりまちまちでした。また、1月のアルゼンチン通貨問題の時には、同通貨が20%近い下落した一方で、メキシコ・ペソは3%程 度、アジアや東欧の新興国通貨も1~2%程度の下落で済みました。この辺りはかつての世界金融危機発生時のパニック的全面安と比べると異なる反応です。
地政学的リスク以外で大きく売られる通貨は、インフレコントロール困難、外貨準備が底をつく、経常収支の大きな赤字などの特徴が見られます。新興国と いっても一様の動きではなくなっているので、通貨投資の際には、よく見極める必要があります。また、一概に米国の金融政策の変更だけが影響しているとも言 えないでしょう。
さて、ロシア寄り政権への反発から悪化したウクライナの国内問題。ロシア系住民を守るという名目からのロシアが軍隊を待機させ地域を制圧したため、質へ の逃避行動で米国債や金、原油が買われました。米国債券市場で10年物は一時2.6%を下回る場面もあり、為替市場ではドル安方向に反応。米ドルの対バス ケット通貨相場であるドル指数は3月3日、今年最安値の79.68まで下落しました。
そんな中、週明け3月3日ドル円相場は102円台から安値101円20銭まで下落。その後、翌4日には安値は101円40銭をつけた後、情勢の緩和を受 けて102円台に反騰。今年2月4日の下落時、100円台へ突入した場面がありましたから、下値の耐久度があがったとも言えます。或いは、相場にエネル ギーがないのかもしれません。
今日現在、ドル・円の200日移動平均は100円21銭、100日移動平均は101円96銭、50日は103円16銭にあります。2月の相場は101円 から102円後半、主に102円を挟んだ近辺での動きに終始しました。予想以上の貿易赤字拡大による輸入決済需要によるドル不足、日米金融政策の出口への 距離の差、インフレ格差の変化などの円安要因がある一方で、米国景気に天候がどこまで影響しているのか計りかねているという状況もあります。春待ち状態で しょうか。
米国経済の重要指標として、今週は2月の雇用統計が注目されています。厳しい寒さが続いた2月。数字が悪ければ天候の影響という解釈につながるかもしれ ず、FRB新議長の発言の中にも天候を除いた部分の景況を見極めようとしている姿勢が見られます。とは言え、量的緩和は段階的に今年中で終了していくとい うコンセンサスは浸透してきているようです。それに伴って、米国債利回りもじょじょに上昇していくものと思います。ドル円相場は、しばらくレンジ内での動 きに終始しそうですが、下値は限定的ではないかと考えています。
上昇を続けてきた中国人民元が2年ぶりに大きく下げたのは2月20日でした。中国人民銀行が人民元の中心レートを低い水準に設定したことに加えて、景気 縮小懸念もありました。米ドル対人民元相場は1月の6.0440水準から2月28日には6.1457水準までの人民元安に。中国人民銀行が、為替相場の許 容変動幅を拡大(現在の上下1%を2%に)すること、短期の資本流入圧力を軽減することを意図しているとされています。人民元上昇は中期的に継続されると いう見方もある中で、およそ4年間上昇が続いてきた人民元相場が調整を迎えたとも見られます。円相場にも影響がありますので、要注目です。
今週は、欧州中銀理事会が6日に開催されます。利下げがあるかどうかが注目されていますが、先週出たユーロ圏の消費者物価は予想よりも高い数字が出て利 下げ期待が払しょくされて、一時対ドルで1.38台まで買われる場面がありました。ウクライナ情勢緊迫を受けて1.37台に反落しましたが、下値はしっか りしている感があります。レンジ相場を前提に対応したいと思っていますが、イベントを挟みブレが大きくなる可能性があります。
クリミア半島は、かつてのクリミア戦争が知られています。ロシアと英仏等の連合軍が戦い、犠牲者も多かったようです。ナイチンゲールの活躍もこの戦争時 と記憶しています。不凍港を求めて南下政策をとってきたロシアはキプロスをはじめ、黒海周辺には軍事関連施設も多く、地政学的リスクは大変高いとされてき ました。ウクライナ問題へのロシアの関与が直ぐに収束されるとも思えません。ただ、この問題が世界金融危機に繋がる可能性は高くはないようにも思います。
しばらくは、悲観も楽観もなく注意深く下値拾いしていくのが適当な行動ではないかと思っています。
今週末からパラリンピックが開催されるソチは、黒海近く。無事開催を祈念しています。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
式町みどり拝
*3月5日午後2時執筆。本号の情報は3月4日のニューヨーク市場終値レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)