年金の話題については、先日も田村厚生労働大臣の「年金は75歳まで支給を遅らせることが選択できるようにする」発言が世間をにぎわしていましたが、私も そのテレビを見ていましたが、「75歳で受け取ることも受給者が選択できるようにする」という発言内容であるにもかかわらず、多くのマスコミでは「すわ、 支給開始年齢の大幅な後ろ倒しか!」という誤解した報道内容も目につきました。
 しかしこうした一連の報道でもわかるように将来の年金支給については、国民の皆さんの関心がとても高いことを表しているとも言えます。

 将来の年金支給に関しては、様々な議論がありますが「年金はもらえなくなる」など極端に悲観的な意見もあれば、「これまで同様に変わらないだろう」という楽観的な意見もあり両極端な話が入り混じっています。

 そこでもう一度、現状の年金財政について客観的にみてみましょう。

 最近の厚生年金、国民年金の積立金の推移は年々減っていく一方です。厚生年金は7年間で22.4兆円の減少、国民年金は1.6兆円の減少をしています。仮にこのままのペースで積立金の取り崩しが行われると、積立金は2040年(25年後)ごろに底をつく計算になります。

 この積立金の枯渇を根拠に即「年金破綻」だとする議論もありますが、年金制度については賦課制度ですので、積立金が枯渇したからと言ってすぐに制度破綻につながるわけではありません。

 例えば2014年度の厚生年金予算は、年金保険料収入が25.6兆円、税金から8.8兆円、合計34.4兆円に対して、支出が厚生年金給付で24.5兆 円、基礎年金への給付で16.1兆円、合計40.6兆円と収入が支出の85%あります。もしも将来仮に積立金が枯渇したとしても、現役世代から集める保険 料をその時の年金支給者に分配するという、賦課方式を続ける以上は、年金制度は破綻することなく、単年度の保険料収入を給付で利用するという形で継続可能 だと考えられます。

 もちろん政治的にも積立金が枯渇するという事態は、受け入れられないと思いますのでそのような状況になる以前に年金保険料を上げるか、給付金を抑制する措置が取られることでしょう。
 したがって我々国民としては最悪将来の年金は現行の70~80%程度の給付水準になることを覚悟して、準備をしておくのが現実的な対応になります。

 前回は老後の平均的な年金収入を216万円(年額)として考えましたが、仮に年金支給額が80%になってしまった場合には、173万円(年額)になりま す。年間216-173=43万円不足しますので、前回の計算よりも43万円×25年間=1,075万円と、約1,000万円を多く見積もっていれば「年 金不安」にも備えていると考えて良いでしょう。

 次に、仮に自分が退職金を別にして「60歳までに2,000万円の資金を準備しておかなければいけない」場合には、現役(働いている)の間にどのように貯めていけばよいのでしょうか?

 60歳までに2,000万円を貯めようとすれば、30歳ならば30年間、40歳ならば20年間、50歳ならば10年間の時間があります。

 30年間の場合は、毎月5.5万円、20年間ならは毎月8.3万円、10年間ならば毎月16.7万円の貯蓄をしていれば2,000万円の貯蓄は達成可能です。

 これに金利(あるいは利回り)を考慮すると、

       0%   1%   2%   3%   4%   5%
30年間  5.5  4.8  4.1  3.5  2.9  2.4万円
20年間  8.3  7.5  6.8  6.1  5.5  4.9万円
10年間 16.7 15.8 15.1 14.3 13.6 12.9万円

という変化になります。

 老後に準備しておく「お金」は、なるべく早く準備に取り掛かることと、確定拠出年金などの税制面で有利な制度を利用しながら、ある程度の利回りを追求しながら準備していくことが必要となります。

 この低金利下では、4%や5%といった利回りは難しいのではないかと感じられる方もいると思いますが、次回は老後に備えた運用、老後を迎えてからの運用について考えます。

株式会社マネーライフプランニング
代表取締役 小屋 洋一
http://www.mlplanning.co.jp/

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