私自身も安倍政権の「成長戦略」の一つである、この施策についてあまり深く調べたこともありませんでしたので、理解するのに良い機会でした。
これは、英国にあるスチュワードシップ・コードをそのまま模倣して持ち込んだものですが、その成立の過程には大きな差があります。
本場の英国では、1991年から20年間程度にわたって機関投資家が各株式を保有する企業に対してどのように対話して、ガバナンスに関与していくかということが繰り返し議論されています。
そうした議論を積み重ねたうえで、特にリーマンショック後の株主責任を問われることになった際に、より一層のコーポレートガバナンスの議論と株主責任(特に機関投資家)の議論が起こり、こうしたスチュワードシップコードに収斂されてきたものです。
一方で日本の場合には、今回の早期成立には安倍政権の「成長戦略」の目玉として機関投資家による、上場企業への働きかけを強めることで、上場企業の長期的・持続的成長を高める期待を作り出す為の制定です。
もちろん、こうしたコードの制定は全体の考えで言えば、歓迎すべきことですし、投資家にとっても、こうした取り組みを通じて企業の成長と株価の成長が促されるようであれば大きなメリットのある話です。
問題は、英国では各機関投資家業界が自主的にガバナンスの議論を通じて策定した(倫理)コードであることに対して、日本では金融庁が用意した検討会での議論を通じて策定された官製に近いコードである。
という差にあります。
つまり実際の機関投資家の現場で、こうした倫理コードがうまく機能するかどうかは、あくまでも各機関投資家の自主性にゆだねる部分が大きいということになります。
英国でも2010年から始まった試みで、これが本当に長期的な企業の成長を促す仕組みなのかどうかについては、まだまだ検証中で結論は出せない状況です。
日本においても、まずは機関投資家のまともな姿への第一歩として大いに評価したうえで個人投資家は自らがお金を預けている「投信会社」「保険会社」など の実際の行動を中止し、場合によっては声を上げていくことが、日本の場合のスチュワードシップコードの実行力に大きな影響を与えるものだと思います。
株式会社マネーライフプランニング
代表取締役 小屋 洋一
http://www.mlplanning.co.jp/
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