主要通貨に対する米ドルの総合的な価値を表す指数であるドル・インデックスが2003年以来の高値水準となっています。今年の1月に95.52をつけ、直近でも95.40台で底堅い動きが続いています。


 今年に入り世界の多くの中央銀行が更なる金融緩和に動く中、3度の量的緩和政策を経て、金融政策の正常化に向けての議論を始めている米国がいつ利上げをするのか?が昨年来続いているお馴染みの注目ポイントです。

 米FRBの金融政策の指針は雇用と物価です。昨年来続く雇用状況の改善で今年6月の利上げを期待する向きが多い一方で、最近の米経済指標は予想よりも低い数字も多く見られるまだら模様であることから利上げは9月にずれるだろうという予想も出ています。
 3月6日に発表される2月の雇用統計(特に賃金動向)の数字も含めて経済動向が議論されるだろう今月の政策決定会合(FOMC)。終了後にどのような声明文が出されるのかが市場の最大注目点です。


 前述したドル・インデックスが強い背景には対応する通貨、特に6つの構成通貨中で比重が高いユーロの弱さがあります。

 今年早々からユーロ売りの一因でもあったギリシャの支援問題はギリシャがEUとIMFと何とか折り合いがついて通過。7月、8月に来る国債の大量償還の前に再び騒ぎが起きそうではありますが、一応現在のところ、市場の視野からボヤけてきた格好です。

 一方、1月の政策決定会合で発表された欧州中央銀行による大規模な量的緩和政策が今月から実際に開始されます。詳細は今週5日の欧州中央銀行理事会で発表される予定です。


 欧州中銀による国債購入による量的緩和政策実施を前に、欧州各国の国債利回りは低下を続けています。政策が実施されれば国債市場の需給がひっ迫が予想されます。
 ドイツは低位で安定(10年物国債利回り、0.3%台)ですが、例えばスペイン(10年物、1.32%)イタリア(同1.33%)の国債利回りは前月よ り0.3%程度低下。また、ドイツやフランスの2年物利回りはマイナス金利で、スペインやイタリアでも0.1%台と超低金利状態です。


 最近発表された欧州の経済指標は予想より良いものも見受けられ、特にドイツは輸出、個人消費も良いのですが、量的緩和による超低金利の長期化が予想され ます。一方で、このところ底打ちを見せ2.10%近くまで反転してきた米国10年物国債金利との金利差拡大は顕著で、ユーロ対米ドル相場の上値を限定しま す。直近、ユーロ・ドルは1.12を割れる水準ですが、1.10割れは最低でも試しに行くだろうと個人的には考えています。

 ユーロに関しては、ギリシャの問題に加えて、今後予定されている選挙(スペイン、フランス、ポルトガル、イタリア)もリスクになる可能性がありますので、注目しておきたいところです。


 ドル・インデックスの構成通貨でユーロにつぐのが円です。
 2月のドル・円相場は、安値は116円66銭、高値120円48銭でしたが、主な取引レンジは117円50銭~119円50銭と方向感がないボックス相場でした。とは言え、ゆっくり往来しながら底値を切り上げる動きでした。

 2月11日に120円台半ばをつけたものの、12日に日銀幹部とされた追加緩和への否定的発言で118円台に戻されたものの底堅く推移。日本の累積貿易 赤字の好転や国債利回りの底打ち等の円安を緩和する材料を消化してきた感があります。予想したよりも、円高への戻しが限定されていました。

 ところで、120円台で東京市場に戻ってきた3月3日。ウォール・ストリート・ジャーナルに内閣府参与の本田氏の「日本の追加緩和に懐疑的」とする発言 が掲載されたと伝えられました。120円台に乗った2月12日にも円安けん制を思わせる発言が伝えられました。偶然かもしれませんが、ボックス内に抑えて おきたい誰かの意図があるのか?と勘繰りたくなりました(単なる私の勘繰りです)。


 さて、今後、米国の金融政策正常化が始まるとして、短期金利が例えば1%位まで金利らしく上昇する可能性があります。一方、日本ではゼロ金利が今後数年 続くだろうという観測です。こうした状況では、リスク回避的な事象が起こらない限り、円高に反転していく可能性は低いと考えられます。

 2月後半に注目されたFRBイエレン議長の議会証言は慎重に吟味された表現を駆使していました。利上げに向かっているようで、慎重とも解釈されました。

 前回のFOMC声明文で注目されたキーワード『忍耐強く』という文言を3月のFOMC会合後の声明文から削除した場合に起こるだろう市場のインパクトを前もって緩和する意図を持って発言し、今後の利上げ時期決定を柔軟に検討するための環境づくりをしたのかもしれません。

 何はともあれ、米国の利上げ期待が続く限り、ドル高基調が続くものと思います。
 ただ、利上げが経済の状況次第であるとされている以上、米国経済の動向、特に最近目につく『まだら模様』状態の背景についても注意深く見ておく必要がありそうです。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

*3月3日20時執筆
 本号の情報は3月3日の欧州市場始値レベルを基本的に引用、記載内容および拙見解は参考情報として記しています。

式町 みどり拝

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)