これまでギリシャ問題を懸念材料として捉えてきた市場ではありますが、6月30日に迫った2000億円規模の返済期限で債務不履行に陥る懸念が現実とな り、7月5日の国民投票の結果次第ではユーロ圏からの離脱が現実となる可能性があり、市場の短期的な混乱が迫っています。
この後に来るのがイタリア、スペインなどの南欧諸国への飛び火となるとまた市場の混乱要因となりますが、その割に株式市場は冷静に捉えているようです。
2015年の前半相場は堅調な推移を辿りましたが、指数ごとに違いが見られました。このところメディアでは日経平均がITバブルのピークをクリアしたと いうことが声高に叫ばれていますが、TOPOIXや小型株指数の代表であるJASDAQ指数やマザーズ指数はまだ過去の高値を抜けていないという現実があ ります。
何かとメディアは上昇の勢いのある日経平均をシンボリックに取り上げがちですが、確かに2007年2月の高値18300円を抜けて既にITバブル時の ピークである20833円を抜けたという現実はありますが、これにはファーストリテイリングやファナックなどの組み入れ銘柄の違いが影響しているという特 殊な事情が存在しているという指摘がなされています。
また、指数に組み入れられている一部の銘柄が異色に上がった結果として日経平均が10数年ぶりの高値更新に至っているという点を冷静に見る必要もあります。
このところの活躍株で225銘柄に採用されているのは、第一生命(8750)、日東電工(6988)、中外製薬(4519)、伊藤忠(8001)、三菱 商事(8058)、大林組(1802)、清水建設(1803)、ファーストリテイリング(9983)、TDK(6762)、横河電機(6841)、ニチレ イ(2871)、日清製粉(2002)、カシオ(6952)、東レ(3402)、三菱UFJ(8306)などです。
逆に調整傾向にある銘柄もありますが、概ねこうした右肩上がりの銘柄によって日経平均が堅調に推移していると推察されます。
TOPIXで言えば2007年2月のピークは1823.89で直近高値の1686.61よりもまだ上の水準です。今後は日経平均とともにTOPIXの動向にも関心を持っておきたいところです。
同様にJASDAQ指数やマザーズ指数も2006年1月(ライブドアショック前)の高値を抜けていません。JASDAQ指数の高値は142.87(時価は120.22)、マザーズ指数の高値は2800.68(時価は10
12.14)ですが、これらに加えて東証2部指数も現在5064.12で2006年1月高値の5531.09を抜けていません。
ギリシャ問題以降の市場の関心事は米国経済の動向に移ると見られます。昨年春以降のGPIF(年金)の株式投資の活発化に見られる官製相場に呼応した外国人投資家の買いスタンスがどこまで続くのかは予断を許しませんが米国では秋口以降には利上げに踏み切ると見られます。
金融相場から業績相場に移行する過程の米国株式市場に対してまだ日本は約束している物価上昇2%に届かない現状があり、当分の間の金融緩和が続くという状況の下で株価の上昇が景気を押し上げていく流れに変化はないと考えられます。
基本的な株価上昇トレンドには変化はないと見ておいて良いでしょうが、物色のトレンドについては指数連動型での投資が一旦は調整に転じる局面も想定しておく必要があるかも知れません。
PERやPBR、配当利回りの水準からはまだ極端な割高感はなく、むしろ割安感もあります。ROEの向上に邁進する日本企業がこのところのコーポレートガバナンスコードによって増加してきたのも下支えになるかと見られます。
10年物国債の金利が0.48%という水準で行き場のないお金が株式市場に向かっている状況下で株価の大幅な下落は起きる可能性が低いとは言え、人気銘柄も指標面での割高感が出てくる水準になりつつあります。
日経平均は昨年末の17450.77円から既に18.7%の上昇を見せ、26日現在20706.15円。ギリシャ問題などでの波乱要因を抱えながらの着実な上昇傾向が見られますが、この先の展開もなお強いと見られます。
中・小型株では流動性に不安が残り、流動性重視での運用となるとなおもこの先の物色はこうした225採用銘柄の中から銘柄選定していくことが基本になるかとみられます。
但し、中小型銘柄も内容の如何では活躍の余地が大いにあるとの考え方には賛成です。最近の新興市場銘柄には株価の大幅上昇を見せている銘柄が数多く出てきていますが、皆様の2015年後半の運用方針はいかがでしょうか。
(炎)
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