開発者の愚痴をよく聞かされることの多い次郎。
 また、自分で打ってみても、「どうしてこうなった」と感じる、打ち手側の心理もわかるだけに、歯がゆい思いをしたりします。

 当然、パチンコもスロットも、作り手側は常に面白い台を作ろう、という気持ちで臨んでいるのは真実なのです。なのに、どうして「なにか足りない台」ってのが出てきてしまうのでしょうか。
 その理由は様々です。

 まずひとつに、バラバラの制作体制で作っているメーカーがあるということ。

 企画、映像、SE、振り分け……すべて別の部署、または協力会社なわけで、台の幹を作る企画が、その意図を他の部署に伝えきれていないと、そもそも企画段階で想像していた台と違う形の台が出来てしまいます。

 料理でいえば、ひとつの鍋を作るのに、それぞれの部署がそれぞれの役割を担った具材を入れなければならないのに、好き勝手に入れてしまうせいで、出来てみれば闇鍋だった、なんてことになるわけですね。

 最近の機種でいえば、それぞれが濃ゆーい味のものをドンドン入れてしまい、くどくて食べてらんない! なんて事象が起こりがち。
 パチンコもスロットもわびさびなんですよね。濃い、アツそうな演出ってのは、薄い目立たない演出があるこそ引き立つわけで。


 では、そこを乗り越えて幹の通った台が出来上がったとしましょう。
 次に鬼門となるのが、上層部へのチェックです。
 メーカーによっては、まったくパチンコ・スロットを打たない上層部もいます。
 そうなってくると、重要である「わびさび」の部分をつつかれたりするわけです。

 これでは今の市場では目立たない。もっとテコ入れして、派手にしろ! 独自性を出せ! となります。

 そうして何度も具材や味付けを無理やり変えてしまった結果……待っているのはやっぱり闇鍋なんですよね。

 最終的にデバッグの状況でガックリとすることも多いと聞きます。
 いち開発担当に、デバッグまで進んだプロジェクトをやり直せる権限もなかったりするのが悲しい現実。
 当初思い描いていた台とは違う台を、何十時間、何百時間と試打し、バグチェックするのはさぞかし辛い作業になることでしょう。


 出せば売れる時代が終わりを告げ、赤字決算を報告するメーカーも多い中、試行錯誤が裏目に出ているパターンが増えてきてしまっているように見えます。

 このような時代の中、最終的に生き残るのは、やはり最初から最後まで一本筋を通しているメーカーでしょうね。
 上層部にパチンコ・スロットへの理解があったり、今もなおホールで自腹を切って打ち続けている人間がいるようなメーカーは生き残っていくことでしょう。


 最近になって、にわかに封入式パチンコの話も現実味を帯びてきました。
 ホールはもちろん、メーカーも、「足りない台」ばかり出しているようなところは淘汰される日が近づいているのかもしれません。
 封入式の話についてはまた後日。


 というわけで、今週はこの辺で。
 また来週お会いしましょう。