北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
■連載コラム(第31回)
『ラーメンの憂鬱』〜適正な原価率、適正な利益。(山路力也)
『教養としてのラーメン』〜戦後ラーメン史(6)~外食産業の萌芽とラーメン~(山本剛志)
□告知/スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
「2001年ラーメンの旅」北島秀一
ラーメンの情報収集手段が「本・雑誌」から「インターネット」に変わって久しい。ちうか、その流れのド真ん中にいたのが、我々「とら会世代」のラヲタだと思う。「とら会」については解説するまでも無かろうが、インターネットが普及し始めた1996年に大崎氏が設立したラーメンサイト「東京のラーメン屋さん」の掲示板(とらさん会議室)の事だ。
ネット普及前のラーメン食べ歩きはほぼ個人の趣味だった。パソコン通信などで細々とした情報交換はあったが、ほとんどの情報は個人で収集するしか無かった。主な情報源は、まれに出るラーメン本や雑誌のラーメン特集、TVで流れた情報などをメモし、リスト化し、誰にも相談せずこつこつと食べ歩き、人に公開する予定の無い感想メモを書きためて行く。今では考えられないが、ラヲタとは孤独な趣味だったのだ。
私もそのような世代である為か、情報収集のメインがネットになった今でもラーメン本には思い入れがある。雑誌の記事は切り取ってスクラップにして、例えば出張があるとその地域の切り抜きをまとめてコピーして持ち歩く。当然フォーマットもバラバラなので閲覧性は悪いし古くなった情報も多く休業日変更や、へたをしたら廃業にぶつかる確率も今よりずっと高かった。
その後、2000年代に入った頃からは徐々にネットと本の比率は逆転して行くが、それから10年以上も経った現在でも「ラーメン本」の一定の需要はある。スマホの普及でいつでもどこでも電子化された情報が閲覧出来る状況でも、「本」と言う形への一種の信頼感はまだ残っている。特に、(やや手前味噌になるが)講談社のTRY本への各店主の反応を見ていると、まだまだ切り口次第で「本」ではないと出来ないコンテンツはあるんだろうなと感じる。
本当に情報の無い地域に行った時は、電話帳のお世話になった事もあった。「ラーメン・中華料理」のコーナーを見て、店名とわずかな住所情報だけで直感的に行く店を決めるのだ。当然外す確率はデカイが、そんな中で「当たり」を引いた時のうれしさは忘れられない。比べて現在。あまりに情報があふれかえり過ぎて、「食べ歩き」が「他人の集めた情報の後追い確認作業」になってしまっていいのかな、とオッサンは少し危惧したりするのである。(ラーマガ006号より転載)
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は今年7月銀座にオープンした新店「銀座 風見」の「酒粕濃厚そば」を、山路と山本が食べて、語ります。