北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
□告知/スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
「夏の情景」山路力也
私がラーメンにはまったのは三十歳の時。子供の頃や学生時代にラーメンを食べることはほとんどありませんでした。それはおそらく親がラーメン屋さんに連れていくことがなかったからではないかと思っています。外食はよくする家庭でしたが、ラーメン屋に行くということはまずなかったのです。
子供の頃の私にとってラーメンといえば、母親が作ってくれたインスタントラーメン。サッポロ一番みそラーメンに炒めた野菜を乗せて、バターも浮かべた「味噌バター野菜ラーメン」が、私にとってのラーメンでした。毎日のように家にいる小学生の夏休み。蝉の声が聞こえると母が作ってくれた味噌ラーメンを思い出すのです。
中学生になって、唯一食べるようになったのが「寿がき屋」のラーメンでした。私が住む横浜の街にも、当時は寿がき屋の支店があったのです。夏休みの部活動の後、本当は寄り道してはいけないのに、こっそり友人たちと食べた寿がき屋のラーメン。最後にソフトクリームを食べるのが贅沢な時間でした。
友人たちと海水浴に行って、海の家で食べたのもラーメンでした。あの頃の海の家にはラーメンかカレーくらいしか食べるものが無かった。水で冷えた身体で暖を取るのにはカレーよりも汁物のラーメン。ほとんどの確率でそのラーメンにはナルトとワカメが乗っていました。決して美味しいとはお世辞にも言えないラーメンでしたが、友人たちと一緒に食べるラーメンの楽しさは忘れられません。
こう振り返ると、子供の頃の夏の思い出にはなぜかラーメンがありました。スイカでもそうめんでも冷やし中華でもなく、夏が来て思い出すのはラーメンなのです。
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は今年6月、「塩つけ麺 灯花」が店名も新たにリニューアルオープンした「吟醸煮干 灯花紅猿」の 「岩海苔煮干らぁ麺」を、山路と山本が食べて、語ります。
吟醸煮干 灯花紅猿@四谷三丁目