いよいよ冬らしい陽気になってきましたね。
露木行政書士事務所・露木幸彦と申します。
今日は押入れから、真冬用のコートを引っ張り出してきました。


さて、ここからが本題です。

前回は結婚前提の同棲中に、彼に家から追い出された女性の話をしてきました。
締め出される直前にどのようなやり取りがあったのでしょうか?
今回はその続きです。


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http://ameblo.jp/yukihiko55/





「わたしはカレのためを思って、いろいろ心配しているんですが
カレの態度は完全に『やつ当たり』でした」

裕子さんの気持ちは、結局、彼には伝わりませんでした。



そして彼の怒りの矛先は、患者や病院から、
裕子さんの方に向かいました。
『売られた喧嘩は買ってやるぞ』『女のくせに生意気だ』

暴言と言われても仕方がないような言葉の数々を、
彼が吐き始めたのです。



暴れる彼と、それをなだめる裕子さん。
2人は押し合いへし合いになり
裕子さんは彼の圧力によって玄関から外に
押し出されてしまいました。



裕子さんが家の外からドアのノブに手をかけようとしたところ、
信じられた音が。


『ガチャン』


彼はアパートの鍵を、なんと内側から閉めてしまったのです。
裕子さんがアパートから閉め出されてから、わずか10秒足らずのことでした。
彼は邪魔者である裕子さんを追い出すことに成功したのです。


裕子さんは、このときはまだ、タカを括っていたそうです。
「しばらくすれば、カレも落ち着きを取り戻すでしょう。

冷静になれば、きっと鍵を開けてくれて、
ウチの中に入れてくれる。」と。



裕子さんはそう信じ、極寒の夜に、アパートの前で
待機していたのです。


街灯に照らされて、ブルブルと全身を震わせながら。
そして10分、15分、30分、1時間・・・



しかし、家のなかから外に漏れてくるのは、
テレビゲームから発せられる大音量の効果音だけ。


裕子さんが何度インターフォンを鳴らしても、
いっこうに反応はなかったのです。



「カレも立派な大人だし、それにお医者さんなので、
当然、分かっているはずです。


真冬に追い出されて、わたしがどんなに寒かったのか、
野外で立ち尽くすわたしがどれだけ寂しい思いをしたのか。」



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裕子さんは、彼の度の過ぎた悪戯について、
怒りをこめて言います。


裕子さんはこのとき、目から大量の涙が流れ出ていたのですが
そのままにしておくと、あまりの寒さで涙が凍って
しまいそうだったのでパジャマの袖で何度も拭き取っていたのです。




さて裕子さんの悲惨なエピソードを聞いて、どう思われたでしょうか?

事実は1つだけです。
それは「裕子が彼によって家から追い出されたこと」です。



しかし、当事者の認識によって、その事実はいとも
簡単に捻じ曲げられることがあります。


認識には長い時間を経て醸成された、
各人の考え方や価値観、思考が反映されるからです。
100人いれば、100通りの「事実の見方」があるのです。



彼が見ている世界と、裕子さんが見ている世界は、
明らかに異なっていました。


彼女は「彼のわがままで、理由もなく、家から追い出された」と
認識していました。


このように事実と認識の間に、それほど乖離はありませんでした。
しかし、彼の見方はまったく正反対だったのです。



「何も分からないくせに、適当な言葉で慰めようとした裕子が悪い」と
いう大前提があり

「悪いことをした人間は、『一罰百戒』としてどんな報いも覚悟する必要がある。」
という背景があり

その上で「だから、裕子は、何をされても文句を言えないのだ。」と
いう発想に行き着きます。



そして「たとえ、裕子が氷点下ゼロ度の世界で、
パジャマのままで過ごすことであっても
俺は悪くない」という結論に至っていました。


彼は自分のなかで、自分の悪態を見事なまでに
正当化していたのです。



このように裕子さんと彼とは「事実と認識」が
大きくかけ離れていたのです。
これが閉め出しの原因でした。



ただ、「認識の不一致」が原因で起こったトラブルは
本当にこれだけなのでしょうか?



私はこのことが気がかりで、続けて裕子さんに尋ねました。



「裕子さん。この手のトラブルは今回が初めてなんですか?」





■ 婚活という「究極の催眠術」



裕子さんははじのうち、この質問に対し、言葉に窮し、
黙り込んでしまいました。


なぜなら、裕子さんは婚活という名の魔法にかけられ、
脳みそが麻痺していたからです。


ごくごく標準的な判断能力すら、失っていたのです。



誰が見ても「おかしい」と思える言動を彼はしていたのですが
裕子さんは、それをやすやすと見過ごしてきました。

裕子さんはどういうわけか、「別に普通でしょう」
「特におかしくはない」と感じていたのです。



このとき、裕子さんは「カレと一刻も早く結婚したい」
その一心でした。


交際開始から閉め出しまでの間、裕子さんにとって
嫌なことの1つや2つはあったはずですが
裕子さんは無意識のうちに、自分にとって都合の悪い記憶を
抹消していたのです。



私は一時的に記憶喪失になっていた裕子さんから、
適切な答えを引き出す必要がありました。

そのため、私は裕子さんに、いくつかの具体例を挙げました。
これらはモラルハラスメント(以下、モラハラ)の典型的な特徴です。

・意味不明な発言

・理解できない行動

・理由もなく、怒り出す

・高圧的、差別的な態度

「彼はこれらに当てはまりますか?何でもいいので、
思い付く限り、教えてもらえますか?」



「そういえば・・・」


裕子さんは私に聞こえるか聞こえないか、
そのくらいの小さな声で、言葉を搾り出してくれました。


私が挙げたモラハラの特徴が、
やはり彼にもあったと言うのです。
やっと裕子さんからその魔法が解け始めました。


「家から無理やり追い出される」という荒療治に経て。


「今、思えば、カレは『約束』という言葉の意味が
わからない人でした。


わたしにとって『約束』とは守るためにあるものですが
カレにとって『約束』とは、破るためにあるものでした。」




裕子さんは、そう言うと「約束に対する認識の不一致」について
その一例を挙げてくれました。


裕子さんの話によると、彼は2人で話し合って決めたルールでさえ
平気で破ることが多かったそうなのです。どういうことでしょうか?



『最低限、自分のことは自分でやる』
これが裕子さんと彼が決めたルールでした。




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これはごく当たり前のことですが、
なぜ、こんな約束が必要なのかというと
彼は何でも『やりっぱなし』だからです。


これは彼の「だらしなさ」の一部です。


・帰ってきたら、Yシャツや靴下を「脱ぎっぱなし」

・ゲームをやった後、Wiiを「出しっぱなし」

・飲み終えたペットボトルを「置きっぱなし」



裕子さんは、その様子を見るに見かねて彼を注意したのです。
『ちゃんとして欲しい』と。



彼も一度は裕子さんの気持ちを分かってくれたようで
『今度から気をつける』と約束してくれたのです。




しかし、数日たつと、彼は「約束の前」に戻ってしまいます。


だからと言って、そのままにしておくわけにもいかないので
最後は裕子さんが脱ぎっぱなしの服を洗濯機に入れ、
出しっぱなしのWiiを片付け、
置きっぱなしのペットボトルをゴミ箱に入れる羽目に。


彼の返事はいつもいつも、その場しのぎでしかなかったのです。


それでも裕子さんは何とか約束を守ってもらおうと、
約束事を紙に書いて、洗面所、台所、
Wiiの箱に貼っておいたのです。

しかし、何の効果はありませんでした。



そして彼の「常識外れの行動」は、どんどんエスカレート。


彼は仕事の関係で、夜遅く帰ってくる日もあり、
25時を過ぎることもあったそうです。


彼は帰宅すると、何もせず、そのまま爆睡。


彼が歯も磨かず、お風呂にも入らない日が、
何日も続いたのです。


だから、裕子さんはまた『歯を磨いて、お風呂に入ってから、寝てね』と
注意したのです。



しかし、彼の言い分は、こうでした。
「歯を磨かなくても、風呂に入らなくても、俺の自由だ。
誰にも迷惑をかけてないだろう」



裕子さんは呆れ顔で、こう言います。
「確かにそうなんですが、最低限のマナーってあるじゃないですか?


そんな不潔な人と同じベットで寝るなんて、わたしは虫唾が走るんです。
カレは35歳にもなって『歯磨き、お風呂』すら
満足に出来ない人でした。


わたしはまるで『大きな子供』を育てているようでした。」



これは20年、30年と連れ添った夫婦の妻がよく口にするセリフです。
まだ入籍もしていない、子供もいない裕子さんが、同棲時代のことを振り返り
このような感想を述べたのですが、
私はいささかおかしな感じがしました。


(次回に続く)

現在私が執筆しているダイヤモンドオンラインの連載
『実例で知る! 他人事ではない「男の離婚」』ですが
おかげ様で22回目が公開されました。

今回は『不倫した妻の「その気はなかった」という嘘に
どう対処したらいいか』です。

男性はもちろん、夫の作戦を守って知りたいという女性にも
役立つ内容です。立場を逆にすれば、きっと応用できるはず?!

ぜひぜひご覧いただければ嬉しいです。