洗練された雰囲気のカフェや書店、パン屋などが点在する代々木八幡界隈。しかし一歩脇道に入ると、陽だまりで猫が昼寝をしたり、布団をたたく音が聞こえたり、下町風情が色濃く残っているのに驚かされる。そんな、都心のど真ん中とは思えないほど穏やかな場所に家族3人で暮らす、松本さん一家。水色の外壁がかわいらしい一軒家には、DIYのアイデアが散りばめられていた。
名前:松本文彦さん 菜央さん 昊之慎くん職業:ラーメン店を3店舗経営(文彦さん) 会社員(菜央さん)
場所:東京都渋谷区富ヶ谷
面積:2DK 68㎡程度
家賃:持ち家
築年数:67年(1996年に改築)
お気に入りの場所
吹き抜けの階段部「古い家なのですが、細部が丁寧に作られているので住みやすいですね」と文彦さんが教えてくれたように、今の家にはない凝ったデザインが印象的。「柵の間から、昊之慎が顔をのぞかせるのがかわいくて(笑)」と、デコラティブな柵が取り付けられた階段は菜央さんのお気に入りだ。
部屋を明るくしてくれる天窓リビングとキッチン、洗面所にそれぞれある天窓から差し込む光が、室内を照らしていて心地いい。天窓のほかにも、この家には窓が多いのが特徴で、南に面した和室からは太陽光が差し込む。
この部屋に決めた理由
昊之慎くんが生まれたのを機に、子どもが走ったり騒いだりしても気にならない一軒家を探していた松本さん夫妻。文彦さんが経営するラーメン店へのアクセスもよい代々木上原近辺で物件を探していたところ、出会ったのが今の家。アクセスのよさはもちろん、野菜をくれたり、洗濯物が雨に濡れそうになったら声をかけてくれたりなど、ご近所との関係が密接なのも魅力だ。
「最初は賃貸で住んでいたのですが、この場所がすごく気に入ったので、大家さんに相談して購入することにしました(菜央さん)」
「柿の木が生えている土地は地盤がしっかりしているらしいんです」と文彦さん。柿の収穫も、家族の楽しみのひとつだ。また、昼間に換気のため玄関扉を開けていると、猫がひょっこり顔を見せ、遊びにくることもある(そのまま家に入ってきてしまうこともあるらしい……)。
残念なところ
和室の土壁が、なんだか古くさい「色が暗いし、なんだか古くさくて……。ペンキを塗ったりして、土壁をリフォームするのも、今後の目標のひとつですね(菜央さん)」
キッチンが壁付きで、子どもがさびしがる「背中を向けて家事をしていると昊之慎がさびしくなり、おもちゃを全部キッチンに持ってきちゃうんです(笑)」と菜央さんが教えてくれたキッチン。調理スペースは十分だが、対面式ではないので、小さな子どもがいると不便なのだという。
お気に入りのアイテム
文彦さんDIYしたダイニングテーブルもともと文彦さんが経営するラーメン店で使っていたテーブルは、文彦さんがDIYした愛着ある家具のひとつ。
「脚と天板は、飲食店向けの中古家具販売店『テンポスドットコム』で購入しました。電動ドライバーで取り付けただけですが、しっかりと安定感があるので気に入っています。テンポスドットコムは、味のある中古家具がかなり安く販売しているので、かなりオススメですよ(文彦さん)」
ダイニングテーブル脇には、色とりどりのフレームに収められた家族の写真がたくさん。
「夫婦喧嘩をすると、結婚式の写真を取り外すんです。今日は久しぶりに飾りました(笑)(菜央さん)」
ALESSIのリキッドソープディスペンサー家事があまり得意ではないという菜央さんが、「家事のテンションが上がるように」と選んだ、ALESSIのリキッドソープディスペンサーは、何ともいえないユニークな表情。キッチンにはほかにも、イエローやグリーンなどのアイテムが置いてあり、菜央さんらしさが表現されていた。
ブルドッグの置き物カラフルなブルドッグの置き物は、昔かわいがっていたブルドッグ・おさむくんをモデルに、菜央さんのお姉さんが製作したもの。それを飾っているフランフランで購入した白い棚は、取っ手を付け替えてポップな雰囲気に。
暮らしのアイデア
DIYで少しずつ住みやすく大学時代に建築学科に在籍していた文彦さんは、店舗の内装も自分ですべて手がけてしまうほど、プロ級なDIYの腕の持ち主。今は仕事が忙しく、家のリノベーションまで手が回らないが、少しずつ直していきたいということで、驚くようなリノベーション・アイデアを教えてくれた。
「木造の家は、リノベーションがしやすいんです。水回りの配管も変えやすいので、将来的にはキッチンを、今と反対の位置である和室へ移動させたいなあと思っています。明るくて、カフェのようなキッチンになると思いますよ。あと駐車場がせまいので、玄関の位置を変えたりして、広くしたいですね(文彦さん)」
寝室と居住スペースを分ける壁をDIYして、音を遮断寝室のある2階は元々1フロアだったが、1階の音が気になる菜央さんのために、文彦さんが壁とドアを製作。これからペンキを塗って、完成する予定だ。
ウッドデッキを敷いたベランダ2階のベランダの大きさに合わせて木をカットし、はだしでも出られるウッドデッキにしてある。
既製品を利用した、水回りの収納水回りの収納がなかったため、サイズがぴったり合う棚をIKEAで購入し、取り付けた。元から付いていたようなクオリティだ。
バイクを置くウッドデッキ外の空きスペースに、バイクを置くためのデッキも製作。地面が傾斜していてかなり難しそうだが、大がかりなDIYも文彦さんにはお手の物のようだ。
これからの暮らし
「実は、私が止めるのを聞かずに、主人が即決した物件なんです(笑)」と教えてくれた菜央さんだが、今ではすっかり気に入って、今後も住み続けたいそうだ。
「まずはできる範囲でリノベーションをして、もっと住みやすくしたいですね。昊之慎が騒いでもマンションのように周囲を気にしなくて済みますし、中古なので汚されても気にならないので(笑)、子どもをのびのびと育てることができるんです。将来的には、建て替えもしたいですね(菜央さん)」
番外編:DIYをしたい人が行くべき場所は?
DIYやリノベーションをしたいなら、まずショールームへ文彦さんに、これからDIYやリノベーションをしようと考えている人へのアドバイスを聞いたところ、「内装材などのメーカーのショールームに行くこと」と教えてくれた。
「内装材や住宅設備などのショールームは、家を新築しない限りあまり馴染みがないと思いますが、タイルのつけ方など内装材の使い方を教えてくれるので、DIYのヒントになるんです。店によっては、欲しいものを小売りしてくれることもあります。オススメは『サンゲツ』のショールームや『リビングデザインセンターOZONE』ですね。」
必要なものを自分たちの手でなんでも作ったり、ご近所との交流を丁寧に楽しむ暮らし。格別な心地よさがある家だった。
Text by Rino Oguchi, Photographed by Kenya Chiba
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