人気連載「みんなの部屋」vol.130。部屋づくりのアイディア、お気に入りの家具やアイテムなどの紹介を通して、リアルでさまざまな「暮らしの在り方」にフォーカスします。

大きな公園の目の前。

4面採光の窓はどこをのぞいても、まるで森のような自然が広がっています。

ROOMIE編集部きってのDIY好き・緑川が、

内見をする前から「きっとこの家だ!」とワクワクを抑えきれずに選んだ家は、こんな感じです。

名前:緑川彩 タケ
職業:編集者(緑川)、家具職人(タケ)
場所:東京都西東京市
面積:62㎡ 2LDK 一軒家
家賃:11,8000円
築年数:築43年

間取り図(クリックで拡大)

お気に入りの場所

大きなテーブルが占めるダイニング

「平日はいつも時間がないから、ここで話す時間が貴重だよね」

そう同居人のタケが言うとおり、早朝から工房に行く相手と、フレックスでリモートワークもOKな私では、生活時間帯がちがいます。

ダイニングテーブルを、家具職人であるタケがつくると言ったとき、

私が要望したのは「対面にも、90度にも座れる」こと。

レストランのカウンター席は、相手との距離が近しい気がして好きなことと、

大皿料理をおいても、相手の正面に座れるだけの広さ、

そして友人を呼んだ際に大人数で座れること。

それをすべて叶えるダイニングテーブルがよかったんです。

“ふとんをベランダに干すために、窓側部分は細くしたい”などの諸条件もふまえて、このカタチになりました。

「でも、思ったよりシュッとしすぎた気がする(笑)。

今はTEKOLABOの鉄脚をつけているけれど、ゆくゆくはこれに木の脚をつけたい」とタケ。

本棚で“こもり感”をつくったソファスペース

「天井まである本棚がつくりたかった」と、タケのこだわりによってできた本棚。

ポイントは“ソファに座るとこもり感がある”ことと、

“安い材料で材料代を抑えつつ、手をかけて大きいのをつくった”ことだそうです。

角材や棚板をふたつに割ってつくったので、材料費は7,000円くらい、とのこと。

浮遊感をテーマに、床からも壁からも本棚が浮いているように見せています。

本のほとんどが、タケの制作資料。

私としては、持っている本の数を考えないでつくったので、すでにパンパンなのが気になるところですが……。

オープン収納をDIYしたキッチン

窯元めぐりが趣味の器好きなので、集めた器をすてきに飾れるところがほしかったんです。

もともとついていた吊り戸棚が気に入らず、それをはずしてオープン収納にDIYしました。

タケが担当した現場でもらってきた余り材料を使っているので、お安くできています。

キッチンツール掛けは、給湯器のボタンを隠すためにつけました(隠れてないけど)。

なんでも掛けられて、便利で重宝しています。

キッチン横の飾り棚は、前の住人(今の大家さん)がDIYしたもの、なんですって。

壁を青色に塗って、活用させてもらっています。

1日がかりで塗装したおふろ

わが家はおふろの空間に、トイレと洗面台が一緒にあります。

おふろとトイレは別々がいい! 人も多いと思いますが、私はあまり気になりません。

お客さんが来たときに、ちょっと気になるくらいでしょうか。

木の板張りの空間。もともとは濃いめの木の色で、かなり山小屋感がありました。

大容量の白色ペンキを買ってきて、100円ショップの黒色ペンキを混ぜて、グレーをつくって塗装。

安くはできたけれど、塗装はふたりで丸一日かかって大変でした!

トイレを濡らさないためにシャワーカーテンをつけたいのと、すてきなトイレットペーパーホルダーをつけたいのが、これからの課題。

アパレルショップを参考にしたクロゼット

わが家は基本的に個室がなく、ほぼワンルーム。

唯一の2階の個室は、普通はおそらく寝室に使うのだと思うのですが、

私の服がかなり多いので、クロゼットにしています。

壁は左官仕上げをやってみたくて、ジョリパッドを買って、友人に一緒に作業してもらいました。

アパレルショップを参考に、梁から角材を吊るして、ハンガー掛けに。

高さが自由に調整できるし、服がたっぷり掛けられてお気に入りです。

この部屋に決めた理由

絶対に「DIYし放題の家」がよかった

家探しの条件は「ふたりの職場の中間」「家賃が10万円以内」「DIYが自由にできる」こと。

でも“DIY可能な家”って、本当に少なくて!

家を探していた時期、毎日東京R不動産DIYPをチェックしていました。

1階は土間。土足で入ります

ROOMIEの「みんなの部屋」を立ち上げて思ったのは、

暮らしかたは人ぞれぞれで、自分たちに合う既製の家って絶対にないし、暮らしはアップデートしていくもの、ということ。

だからこそ、家をリノベしたり、賃貸でもなんとか自分のこだわりを発揮する人びとを、たくさん見てきました。

自分たちで生活をつくりたいから“家に合わせて暮らす”のではなく、“家を暮らしに最適化”していきたかったんです。

「若者を応援したいの!」という、すてきな大家さん

春には、ベランダから手が届く場所にさくらんぼが実ります

東京R不動産にこの家がアップされた日に、すぐ内見の申し込みをしました。

大家さんの女性じきじきに家を見せていただいて、

「春には家の目の前にさくらんぼが実るの」「若者を応援したいから、DIYは好きにどうぞ」「冬はそれはもう寒いのよ」なんてエピソードを聞いていたら、

予算を上まわった家賃ではあったものの、もうここしかないと思い、即申し込み。

壁や、木のままの色だった天井まですべて白色のペンキで塗って、

小上がりの和室は、100円ショップで買ってきた塗料を合わせて水色で塗って。

養生が甘かったので、ペンキがあちこちに飛び散っていますが……そんなざっくり感も愛着ポイントです。

本当にすてきな大家さん&家に出会うことができました。

残念なところ

夏暑く、冬寒い

大家さんの忠告どおり、夏の暑さと冬の寒さがスゴイです……。

基本的にはクーラーなしで過ごしたいのですが、真夏の昼間は、とても家で仕事ができる状態じゃなかったです。

もともとあった天井を剥がして現しにしているので、断熱がきちんとされてないのが原因のようです。

虫が多くてツライ!

自然がそばにある暮らしゆえの、仕方がない部分ですが……

とにかく虫が多いのが、私はとても辛いです!

冬は冬眠(?)のために虫が入ってくるし、ベランダにハクビシンも出るし。

「僕は宮崎の田舎で山遊びして育ったから、ぜんぜん平気だけど」というタケに、退治はまかせています。

お気に入りのアイテム

陶器市で買った器

九州の陶器市をまわって、器を集めています。

飾るところもできて、器への熱が加速中。

漬けたらっきょう

三越伊勢丹のWebメディア・FOODIEを見て、挑戦したらっきょうづくり。

お酒のおつまみにぴったりだし、つわり中の友人にもおすそ分けできました。

オリジナルで黒糖を入れた甘いらっきょうが、特においしくできた気がしています。

愛を注いでいるビカクシダたち(タケ)

「なんとなくかっこいいな、部屋に飾りたいな、というのがきっかけだったんだけど……」

と言いつつ、ハマりにハマっているビカクシダ(別名・コウモリラン)。

また宅配便が届いたなと思ったら、だいたいビカクシダ関連アイテムです。

「ほら、この伸びた小さい葉がかわいいでしょ!!」と力説

「現場感が好きなんだよね。

品種がいろいろあって、それぞれ育て方がちがって。

日に当てるとそっちに伸びるから、仕上げたいカタチによって置く場所を変えたり……好きにデザインできて、盆栽みたいな感じ」

ウォールナットの包丁立て(タケ)

会社の月イチ作品発表会のために、タケがつくった包丁立て。

「お客さんが使いやすいようにしたいから、まずは自分で使い心地を試してみたい」とのこと。

キッチンの戸棚のなかに包丁を入れる場所があるので、いらないのではとも思っていたのですが……

節が入っているザックリ感がいい感じです。

たまにふりかえる「やさびしいカルタ」(緑川)

私のお気に入りは、友人がつくって鬼子母神の手創り市などで出している「やさびしいカルタ」。

短い言葉を聞いて、そのイメージに合うと思ったフィルム写真を1枚選ぶ……というものです。

勝ち負けはなくて、ただ“人が感じることのちがい”が浮き彫りになるのですが、

一緒に写真を選ぶ人の新たな面を、いつでも改めて知れるツールだと思っています。

ジュエリーが収まりきらないジュエリーボックス(緑川)

誕生日プレゼントとして、タケにつくってもらったジュエリーボックス。

木目が全周ぐるりとつながっているのがポイント、とのこと。

ジュエリーが好きであまりにたくさん持っているので、

ここには到底、収まりきりませんでした(笑)。

暮らしのアイデア

なんでも、塗るといい感じになる

「とにかく白く塗ればなんとかなる」とタケが豪語するとおり、

既製品も市販のマットなラッカースプレーで塗るだけで、いい感じになるんです。


照明は黒のスプレーで塗装

シーリングファン、エアコン、配電盤、もとからついてた照明……。

塗っても、リモコンのセンサーは意外と通りますよ。

階段の手すりをアレンジ

もともと、子どもの転落防止として、高めの柵が階段についていました。

これを低くしたら開放感や天井の高さが感じられる! というタケの主張を受けて、40cmほど低く。

柵も間引いたので、小さな子が遊びに来たら危ない状態に(笑)。

カメラマンにシュール(笑)と言われた

和室側にはテーブルをつくりつけたので、

スタンディングデスクが好きな私は、よくここで仕事をしたりします。

これからの暮らし

今は1階をまったく活用できていないですが、ゆくゆくはワークスペースにしたいです。

ここでお店やワークショップを開くことも考えてはいますが、それはだいぶ先になりそうな予感……。

撮影中に壁に穴を開けだす人

思いついたら即DIYできるのと、自然が近いのが、やはりこの家のよさ。

自分たちに最適な家具を、最適な価格で見つけるのって大変ですが、

DIYし放題の家なら工夫次第でかかるお金はグンと下がるし、四季が感じられるのもいいな〜と思っています。

もちろんそのぶん労力はかかるし、週末をまるまる使うこともあるし、広いぶん都心からちょっと遠いし……。

私も本当は、DIYが好きなのではなく、“自分らしい家で暮らしたい!”思いが強いだけ、という感じです。

それにしても、賃貸も購入も、新築もリノベも、暮らしって本当にさまざまな選択肢がありますね。

「みんなの部屋」をはじめとした“人の暮らしをのぞき見られる”機会があることで、

多くの人が自分に合った暮らしってなんだろう? と、少しでも考えるきっかけになったら嬉しいです。

Photographed by Kenya chiba

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