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子どもにワクワクや楽しさ、悲しさ、教訓などを教えてくれる絵本。大人になって読んでみると、また違った印象を受けることもあるかもしれません。夜眠る前に、雨降りの日に、もちろん、晴れの日だって、絵本を読む時間は、きっと、貴重な時間となることでしょう。

というわけで、大人も子どもも楽しめる絵本の紹介をしていきたいと思います。

第13回は、ガース・ウィリアムズ作・絵、松岡 享子訳『しろいうさぎとくろいうさぎ』です。

初版は1965年。長い間語り継がれている1冊です。

ストーリーはこんな風。

広い森の中に、しろいうさぎとくろいうさぎが住んでいました。2匹は、毎日クローバー飛びをしたり、一日中楽しく遊びました。

あるとき、2匹で遊んでいると、くろいうさぎが、とても悲しそうな顔をします。「どうしたの?」としろいうさぎが聞くと、くろいうさぎは「ぼく、ねがいごとをしているんだよ。いつも いつも、いつまでも、きみといっしょにいられますようにってさ。」と言います。

やがて2匹は手を取り合い、たんぽぽの花を摘んで耳に挿し、結婚式をあげ、森に住む動物たちもやってきて、月の光の中でダンスを踊りました。

英語版の題名は『The Rabbits’ Wedding』。その題名の通り、くろいうさぎとしろいうさぎが、恋を実らせ結婚するまでのお話です。

「ぼく、ちょっと考えてたんだ」という、くろいうさぎの繰り返しのセリフもあるので、子どもたちも「何を考えてるんだろう?」と、ワクワクして読み進めることもできます。でも、この絵本はまだ恋をしたことがない子どもたちには、ちょっとピンとこないかもしれません。

大好きな相手と楽しい毎日を過ごすうち、「この楽しさはつづくのかな?」と、ふと感じる「寂しさ」。そして「ずっと一緒にいたい」という気持ちが重なって、人生を共に生きる決断をすること。

結婚している人や好きな人と結ばれたことがある人は、誰しもそんな気持ちを経験してきたんですよね。そんな風に、あらためて相手への”思いやり”の気持ちを再認識できる、大人のための絵本です。

物語は全編にわたって、白や黒など抑えられたカラーで進んでいき、どちらかというと写実的で、繊細なタッチの絵で描かれています。2匹のうさぎはとても表情豊かで、派手さはないけれど、しっとりかわいらしいのです。

幸せなお話のはずなのに、浮かれたところはなく穏やかにやさしいときを刻む、くろいうさぎとしろいうさぎ。

「いつまでも一緒に」という、シンプルな願いを込めて。大好きな人と一緒に読みたい1冊です。プロポーズにもいいかも!

ガース・ウィリアムズ作・絵 訳: 松岡 享子訳 『しろいうさぎとくろいうさぎ』 (福音館書店)
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