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住まいは、暮らしだ! ミッドセンチュリーもアフリカ民芸もまぜこぜな1LDKのふたり暮らし(東京都・世田谷区)|みんなの部屋
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住まいは、暮らしだ! ミッドセンチュリーもアフリカ民芸もまぜこぜな1LDKのふたり暮らし(東京都・世田谷区)|みんなの部屋

2021-10-16 14:00
    料理をはじめたい。こだわりの家具や雑貨を、おしゃれに飾りたい。家でできる趣味を新しく持ちたい。友達の輪を広げたい。

    変わらない日常に、そんな気持ちがふつふつともたげることがあります。でも、えいやと一歩を踏み出せない。そもそも、何から手をつけていいのやら……。それ、あながち“住まい”かもしれません。

    そんな風に思い至ったのは、Pilgrim Surf+Supplyで働く西村さんと加瀬谷さんの部屋にお邪魔したから。以前、連載「みんなの自転車」に出演してくれたふたりですが(西村さん記事 加瀬谷さん記事)、じつは同じ職場で出会った恋人同士です。

    住まいと暮らしは直結している。住まいが変われば、おのずと暮らしも広がる。当たり前ようで、見逃しがちなこと。そこに、はたと気づかせてくれました。

    名前(職業):西村尚悟さん(Pilgrim Surf+Supply スタッフ)、加瀬谷 純奈さん(Pilgrim Surf+Supply アシスタント)
    場所:東京都・世田谷区
    家賃:13万4千円
    面積:1LDK、50㎡
    築年数:35年

    間取り図:

    編集部作成

    お気に入りの場所

    ごはん処「西村」

    いただきま〜す!(※これは「みんなの部屋」の取材記事です)

    この日は部屋の取材に伺ったはず。

    ところが取材直前に買い出しから戻ってきたという西村さんは、すぐさまキッチンへ。インタビューにもしっかり注意を払いつつ、さくさく手際よく、またたく間に4品を作ってのけました。

    「このあいだ、じゅんさん(加瀬谷さん)が中華街で蒸籠を買ってきて。この通り、すっかり僕の方がハマってしまいました!」(西村さん)

    トウモロコシの焼売、薬味たっぷりのカツオのタタキ、ゴロッとベーコンのポテトサラダ、即席きゅうりの浅漬け。

    そう書いてみるとごはん処のメニューのようですが、少しだけお裾分けしてもらったところ、じっさいの味もお店さながら。家の近くに、こんな店があったらいいのにな〜!

    というわけで、ふたりのお気に入りの場所はダイニング。主役のダイニングテーブルは、サイドに引き出すと拡張できるエクステンションテーブル。いまは自粛中とのことですが、部屋中の椅子をかき集めて、ここでちょっとしたホームパーティを開くことも多いんだって!

    「ダイニングの広いこの部屋に暮らしはじめてから、ひとが集まるようになりました。また気軽に友人を呼べるようになるのが楽しみです」(西村さん)

    ふだんからもっぱら料理担当だという西村さんですが、じつは、料理を本格的にはじめたのはここに暮らしはじめた1年半前のこと。それどころか、料理はおろか、暮らしの隅々に、それまでは一切興味がなかったのだとか。

    それが、いまやこんなに素敵な空間を率先して作り上げるまでに。いったい、なにがあったの?

    この部屋に決めた理由

    友人であり絵描きのLee Izumidaさんによるふたりの似顔絵。のはずが、西村さんはゴリラになっている……。

    ふたりがここに暮らしはじめたのは、およそ1年半前のこと。それまで別々に暮らしていたふたりが一緒に暮らしはじめるにあたって、条件にしたことのひとつが職場との距離でした。

    「ふたりとも渋谷・原宿付近勤務なので、自転車で通勤できる範囲で探していました」(加瀬谷さん)

    自転車がライフスタイルに深く根付いているふたりらしい理由だな〜。西村さんは、それまで長く住んでいた幡ヶ谷がとても気に入っていたため、当初は幡ヶ谷に絞って物件を探していたとか。ところが、なかなか条件に合う物件が見つからない……。

    「あるとき、探す範囲を少し広げてみたんです。すると、この物件が空室になったと知らせがあった。ふたりとも『ここしかない!』と直感して、即座に内見を申込みました」(西村さん)

    じつはこの部屋、もともとは二部屋だったのだとか。そのため、いわゆる1LDKよりもひとまわり広い。「部屋と部屋のあいだをぶち抜いて、一部屋にしたみたいなんです」(加瀬谷さん)。

    かくして、すぐさま物件を見に行ったふたり。「リビングをひと目見て、即決でした!」と、いまだそのときの興奮冷めやらぬといった様子で話す加瀬谷さん。なにが決め手だったの?

    「理想として思い描いていた雰囲気に、きっと合うだろうと思ったんです。

    天井と壁の継ぎ目のあしらいだったり、押入れのデザインだったり。古いけれど、味のある感じ。日当たりも最高でしたし、極め付きは、キッチンですね」(加瀬谷さん)

    横浜中華街で買った「照宝」の蒸籠は、鍋敷き込みで4千円ちょっと。「『&PREMIUM』で見た、料理家さんたちのキッチン用具に感化されて」と加瀬谷さん。「今年の冬は土鍋を狙っています!」。

    キッチンは広々としていて、新築みたいにピカピカ! コンロは3口あって、調理台もシンクも申し分ない広さ。備え付けの食洗機も完備。

    料理担当の西村さんもさぞ気に入ったことだろうと思いきや、「当時、僕は家選びの知識も興味もなくて……。キッチンを見ても、とくにピンときませんでした」とさらり。

    「この家を選んだのも、ほとんどは彼女なんです。あとになって、『そういえばキッチン使いやすいな』とか、『家具が馴染みやすいな』といったことに気づいた。ぜんぶ後からついてきたんです」(西村さん)

    料理好きだから選んだキッチンでも、好きなテイストや世界観を作りやすそうだから選んだ内装でもなかったということ。狙いすましたわけでなく、ここに暮らすことで、料理にも家具集めにもビビッと開眼しちゃったというわけだ!

    「家が導いてくれました」(西村さん)

    そんな言葉もけっして大げさに聞こえないのは、彼の料理の腕をしかと拝見したから。

    「小さい頃にお母さんが料理するのを日常的に手伝ったりしていたので、もともと苦手じゃなかったんだと思います。料理をはじめてからは、おいしいものを食べにいくことも好きになりました。やっぱり、おいしいものを食べてないと、おいしいものは作れないですからね」(西村さん)

    まったく興味のなかった西村さんに、ここまで言わしめるとは……。好きこそものの上手なれとはいうけれど、好きから上手までの距離を最短で行った感じだな〜! それもこれも、引っ越しがきっかけなんてね。住まいの力たるや!

    残念なところ

    家電は唯一の弱点かも…

    「ある?」(西村さん)

    「けっこうないよね」(加瀬谷さん)

    1年半暮らしてみたいまだからこそ見えてきた残念なところについて訊くと、そう言って顔を見合わせるふたり。ふたりの直感に狂いはなかったみたいです。

    「妥協したことがあるとすれば、お風呂に追い炊き機能がないこと。玄関まわりに窓がないため薄暗いこと。それくらいです」とは加瀬谷さん。

    昼間は電気要らずなくらい日当たりがいい部屋ですが、さすがに玄関までは光が届かないみたい。

    ところで。家具や生活雑貨へのこだわりが強ければ強いほど、浮いてしまう存在が家電でしょう。「みんなの部屋」の出演者たちのなかにも、頭を悩ませる声が少なくありません。

    実際ふたりの部屋においても、ほかのインテリアに比べると見劣りしてしまうのが正直なところ。

    「僕は、家電にはいまのところ興味がなくて……。正直、家具の邪魔をしないならなんでもいいかなと」(西村さん)

    さすがの西村さんも、引っ越しによってぜんぶがぜんぶこだわりの的になったわけではないようです。

    ポツンと意味ありげに置かれた、平成の誇る恋愛ドラマ『やまとなでしこ』のDVDボックス。先日放送された二夜連続番組を観た加瀬谷さんがハマり、それを知った友人が貸してくれたとか。「でも、うちにはDVDプレイヤーがなくて……!」(加瀬谷さん)。

    「いまのところ、家電は私が前の家から持ってきたものばかりです。まずはテレビを新調したいのですが、買うなら妥協したくないし、いまはまだ手が回らない状況です」(加瀬谷さん)

    家具や雑貨、キッチン用品にご執心なぶん、どうやらいまは、家電は後回しみたい。

    お気に入りのアイテム

    レンディーレ、ロビ、セヌフォ

    さて、ふたりの部屋には、ミッドセンチュリー期の家具や国内外の民芸品など、パッと見てそれだとわかる名品がそこかしこに。

    「私はとくに海外のミッドセンチュリー期のプロダクトが好きで、彼のほうは、そこにさらに“民芸”も入ってくる感じです」(加瀬谷さん)

    ふたりの好きこのむアイテムやテイストは、遠からず。その計算し尽くされたような折衷の塩梅は、いわく、ふたりの趣味が自然と混ざり合った結果。

    なかでもお気に入りのアイテムについて訊くと、「ぜんぶですね……」と考え込みつつも、いくつか挙げてくれました。

    まずは、ダイニングでひときわの存在感を放つ、G-Planのサイドボード「フレスコ」。

    「京都にある『70B』という格安のヴィンテージショップで、相場の3分の1くらいの値段で売られていたのを発見して! たしか、8~9万円くらいでした」(西村さん)

    キャビネットのうえには、これ以外ないという絶妙なレイアウトで、フラワーベースやインセンス、民芸、絵画が飾られています。

    Robbie Simon(ロビー・サイモン)のアートピースは、ふたりが働くPilgrim Surf+Supplyで以前開催されたイベントで西村さんが購入したもの。ただ、この家に引っ越してくるまでは包装すら解かずに保管されていたのだとか。

    「じつは、当時はあまり興味がなかったんです(笑)。せっかくイベントをやったのだし、『一応買っておくか』くらいの気持ちで」(西村さん)

    「私のほうはむしろ、欲しくてしょうがなかったんです! でも、当時は買えなくて悔しい思いをしていた。その後で彼と付き合うことになって、自分の部屋に飾れることに。ラッキーでした(笑)」(加瀬谷さん)

    テキスタイルのうえにちょこんと置かれた木の枝のようなものは、じつはアフリカの遊牧民族が使う生活道具。

    「ケニアのレンディーレ族が、椅子などとして使うために持ち歩いているらしいです。たぶん、洋服屋が勤務後に“ワンカン”やる感じで道端で使うんでしょうね。

    リビングのテレビ脇に置いてあるのも同じような用途ですが、異なる民族の道具。三股になっているのはブルキナ・ファソのロビ族のもの、大小で重ねてあるのはコートジボワールのセヌフォ族のもの」(西村さん)

    「キッチンの壁に掛けてあるのも、同じくアフリカの民芸品です。本来はバスケットですが、網目の模様が綺麗なのでテキスタイルのように飾っています。それぞれ国が違って、そっちはウガンダ、あっちはブルキナ・ファソ……」(西村さん)

    1年半前まではいっさいの興味がなかったなんて、信じられない! どの家具や雑貨のことを訊いても、ムズカシイ名前や背景が、すらすらと口をつくなんて。

    加瀬谷さんは、以前生け花を習っていた時期があったそうで、花を飾るのはお手の物。 ドイツの「ファットラバ」のフラワーベースも、存在感バツグン!

    「リーバイスの501だとか、チャンピオンの何年代のものだとか、古着を掘るのと同じような感覚です。有名なデザインの基になっているプロダクトを知ったりするのもおもしろいですし、職業柄でしょうね(笑)」(西村さん)

    体にも環境にもやさしい天然素材を選ぶ

    加瀬谷さんは、日用品を天然素材のもので揃えることにこだわっているとか。おもにはキッチンまわり。蒸籠やまげわっぱ、茶漉し、スライサー、陶器と、どれも温かな手触りの品を揃えます。

    「やはり昔からの伝統品には目がいっちゃいますね。せっかくなら、背景のあるものを使いたいですし」(加瀬谷さん)

    天然素材のものを使う理由はもうひとつあって、それは、体にも環境にも負荷が少ないということ。

    たとえば、ラップは蜜蝋のものを使うようにしていたり、タッパーはプラスチック製でなくガラス製を使うようにしていたり。フライパンも、熱しても有害成分の出ないものを選んでいるそうです。

    スポンジはヘチマ製。いわゆるキッチン洗剤は使わず、固形石鹸「ミスターQ」を愛用中。シンクの壁面に吸盤でくっつけられるから衛生的だし、シンクもすっきり使えるな〜!

    「ぜんぶを一気に替えるのもエコじゃないので、古くなったり壊れたりしたものから、徐々に環境にやさしいものを選ぶようにしています」(加瀬谷さん)

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    キッチンまわりのほかに、美容用品もオーガニックを中心にさまざまなブランドを試しているとか。

    左から:ARGITAL「グリーンクレイペースト」、Antipodes「オーラ マルカハニーマスク」,Antipodes「キウイシード ゴールドアイマスク」、Dr.Hauschka「フェイシャルトナー」、waphyto「レジェナトナー」、Dr.Hauschka「クレンズクリーム」、ARGITAL「プロポリスクリーム」

    「僕は正直まったく興味のない分野だったので、そこは彼女からいい影響を受けていますね」(西村さん)

    暮らしのアイデア

    好きなものの寄せ集めでいい

    ミッドセンチュリー期の名作家具、アフリカの遊牧民が使う生活道具、ドイツのフラワーベース、日本の民芸品やテキスタイル、こうやって並べてみるとふたりの部屋を構成するインテリアには一見まとまりがないように思えます。

    しかしそのじつ、異なるテイストや世界観のものがすんなりと空間に馴染んでいる不思議。いったいどんな基準でモノを集め、レイアウトしているのでしょう?

    「どうですか、VMD?」と訊くのは加瀬谷さん。そう、西村さんは職場でVMDを担当する、その道のプロ!

    「そもそも僕らはセレクトショップに勤めているので、なにかに特化するより、いろんなものをミックスするのが好きなんです。

    洋服や自転車も同じ。だから、好きなものの寄せ集めでいいんです。そのなかで、色だけはなるべく揃えるとか、ウッドのものが多いなかに透過ガラスのものを一点だけ置いて引き締めるとか、少しの工夫をするだけ。あくまで住まいなので、あまり堅苦しくやっても居心地が悪くなりますし」(西村さん)

    「先輩たちから教えてもらうこともありますよ。素敵な家に住んでいる方が多いので、彼らの住まいを見よう見まねして。そこから入って、徐々に私たちらしさを出せたらと思っています」(加瀬谷さん)

    これからの暮らし

    住まいを変えたことで、みるみる暮らしが変わった。ここ1年半の間の西村さんの変化は、住まいが暮らしと直結していることを示す、まさにモデルケースと言えそうです。

    「これまで、休日には自転車で古着屋をまわってばかりでした。でも、ここに暮らしはじめてからは、ヴィンテージショップで家具を探したり、おいしいご飯屋さんに行くためにちょっと足を伸ばしたり。

    とにかく趣味が広がった。職場の先輩と話せることも自然と増えて、仕事にも活きている気がします」(西村さん)

    そしてまた、その変化はともに暮らす加瀬谷さんにとっても嬉しい誤算。

    「もともと、ひとが集まる家を作りたかったんです。そうした意味では、キッチンとダイニングが充実して、おまけに彼が料理にハマってくれたのは、いいことずくめ。今後新しい家に引っ越したとしても、みんなで料理やワインを持ち寄ってワイワイできる場所にしたいですね」(加瀬谷さん)

    「東京を離れて、だだっ広い家に住むのにも憧れます」と、まだまだ高みを目指す加瀬谷さん。

    住まいが大きくなればなるほどに、しかるべく、西村さんの興味関心の幅もきっと広がっていくんだろうな〜! 天井知らずのポテンシャルの行方を、今後も追い続けたいところです。

    Photographed by Masahiro Kosaka

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