Photographed by Motoki Adachi 理想の部屋にDIYしたいと思っても、「現状回復義務」のある賃貸物件はできることに限度があるもの。「DIY可」を掲げた物件もありますが、その自由度は幅がありますよね。

でも、「できることなら、賃貸でも思いっきりDIYしたい!」DIY好きなら一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか?

そんな思いを叶えたのが、今回お話を伺った山口望さん、菜未さんです。

名前(職業):山口望さん(家電デザイナー)、菜未さん(住宅リフォーム関係)
場所:千葉県松戸市
面積:42.75㎡
家賃:42,000円+共益費5,000円
築年数:29年
間取り図:

編集部作成

場所は、千葉県松戸市にある、築29年の2階建てアパートの1階。貸主に事前に承認を得ることで退去時の原状回復義務がないという、夢のような物件なんです。

「この部屋で初めてDIYをしました」と話す山口さんのお部屋は、「本当に初めてですか?」と疑ってしまうほどのレベル。

DIYビギナーの誰もが通るであろう棚作りだけでなく、床から天井まで作り替え、なんと壁まで壊してしまったというから驚きです。

DIYの醍醐味が詰まった山口さんご夫妻のお部屋に早速、お邪魔します!

■目次
1. この部屋に決めた理由
2. お気に入りの場所
3. DIYのポイント
4. お気に入りのアイテム
5. 残念なところ
6. 暮らしのアイデア
7. これからの暮らし

この部屋に決めた理由

以前は勤務先の8畳一間の独身寮に住んでいたという望さん。社会人4〜5年目を迎えた2019年に心機一転、生活を変えたくて引っ越しを決めたそうです。

「寮は光熱費込みで月々1万円ちょっとと安かったんですが、壁が薄くて決してキレイとは言えなかったので引っ越そうと。

仕事が家電デザイナーということもあって、以前から漠然とDIYには興味があったんです。

引っ越し先としてDIY可能な物件を探していたときに『omusubi不動産』と出会い、この家を紹介してもらいました。

家賃は42,000円、6畳の部屋が3つある上に近くに駐車場まであって、『めちゃくちゃいいじゃないですか!』って見に来たら、漏水で天井がたわんでいたし、洗面所もカビが生えていて。

実は、ここと広さも間取りも全く同じ部屋も賃貸に出されていたんですよ。そっちの方が水回りなどがきれいだったので、同じ賃料ならきれいな方に住みたいと思っていたんですが、こっちの部屋ならフリーレントを2ヶ月つけてくれることになり、入居を決めました」(望さん)

そして2019年9月に入居。ご友人に手伝ってもらいながら床や壁、洗面所、キッチンなどをDIYしたそう。

当初おひとりだった望さんは、それから程なくして菜未さんと出会い、とんとん拍子で同棲、結婚へと至ったのだとか。

お部屋の壁には名前が書かれた紙がたくさん。その理由を伺うと……。

「あと数ヶ月後に子どもが生まれるんです」と菜未さん。なんと! おめでとうございます!

お気に入りの場所

風通しのいいリビング

望さんと菜未さん、おふたりのお気に入りの場所は日当たりのいいリビング。大きな窓を開けると風が吹き抜けて気持ちいいんです。

「ここで食事をしたり、テレビを見たり、のんびり過ごしています」(菜未さん)

「菜未ちゃんは、よくこのソファで寝ているんですよ。ソファは、IKEAとHAYのコラボで通常は7万円くらいするんですが、メルカリで15,000円で買いました」(望さん)

ふたりで料理をするキッチン

もう1カ所、おふたりが気に入っているのがキッチン。カウンターや作業スペースもあって、使いやすそうです。

「前はスノーピークのアウトドア用ラックを作業テーブルとして使っていたんですが、狭かったのでそこを拡張しようと、上から天板を被せて足をつけました。

広くなった分料理もしやすくなったし、ここで飲んだり、食べたりもできて居心地がいいです」(望さん)

「今は在宅勤務なので、料理は時間がある方が作る感じで。彼がよく唐揚げとかコロッケとか揚げ物を作ってくれるので、カウンターに座って揚げたてを食べるのが楽しみなんです。ホットプレートを出して焼き肉をすることもあるんですよ!」(菜未さん)

調理道具の吊り下げ収納には、強力マグネットを活用

キッチンの収納扉にはベニヤ板を貼ってDIY。部屋のトーンに自然と馴染んでいます。

料理がしやすいように調味料入れも自作されていました。

DIYのポイント

お部屋のあちこちをDIYして理想の住まいを実現している、おふたり。

お話を伺えば伺うほどDIYの域を超えている印象を受けますが、望さんがDIYをしたのはこの部屋が初めてなのだとか。情報は何から得たのですか?

「POPEYEの部屋特集や、ROOMIEの『みんなの部屋』、『99%DIY』さんのブログ記事を読んでいました。

塗料などの材料の直リンクを貼ってくれていたので参考にしつつ、見よう見まねでDIYをしたんです」(望さん)

望さんは、自身のInstagramにDIYの様子を投稿していらっしゃいます。

そこには、壁紙を剥がしてパテを塗り、バール1本で壁を貫通させたり、SPF材を使って床を張り替えたりと、お部屋がみるみる生まれ変わっていく様子がたくさん残されています。DIY好きな方は必見です!

というか、賃貸物件で壁を壊すって、なかなかハードルが高いですよね? 望さん、それも交渉したのですか?

「もともとはキッチンとリビングの間に壁があって2部屋に分かれていたんですが、『その壁を壊してもいいですか?』って聞いたら、『いいですよ!』って。

DIYする前に、『ここをこうします』という書類を書いてomusubi不動産経由で家主さんに渡し、OKをもらってから進めました。そのときに天井、床、壁、洗面台を作りますと伝えたんです。

壁は“THE 賃貸”なエンボスのあるクロスがイヤで、壁紙を剥がして塗装しようとしたけど接着面がうまく剥がれず、結果的にクロスの上からパテを塗って埋めて、やすって塗ってを繰り返しました。

天井もそれと同じ工程で仕上げているんです。友達何人かに手伝ってもらったんですけど、それだけで2ヶ月くらいかかって大変でした。その甲斐あって、すごく綺麗になったので気に入っています」(望さん)

床も変えていらっしゃるんですよね?

「床はSPF材をホームセンターで買ってきて、自分で入れたんです。

通常はフローリング材を使うと思うんですが、『99%DIY』さんがSPF材の床を紹介していて、いいなぁと思って。ところどころ幅を変えているところもこだわりです」(望さん)

他にも、もともとあった押し入れを無くしたり、リモートワークで使うテーブルを作ったり。キッチンまわりやベッドルームの収納なども作っていらして、手をかけていないところが見当たらない状態。

望さん主導で進める部屋作りですが、トイレはおふたりの希望が詰まった共作。

「ふたりで軽井沢のsajiro cafeに行ったんですが、そこのトイレがすごく素敵だったので、あんな風にしたいねって作ったんです」(菜未さん)

これだけ大掛かりにDIYしていると、気になるのが費用のこと。おいくらくらいかかったのでしょうか?

「床が8万円くらいしましたけど、そのほかはそんなにかかってないんですよ。
ペンキ(ノボクリーン)も一斗缶で5千円くらいでした」(望さん)

大日本塗料 ノボクリーン 白(艶消し) 16kg 8,265 Amazonで見てみる 7,590 楽天市場で見てみる

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最近は、ベッドルームの衣類収納も自作したそうです。

「ゴールデンウィーク中に作りました。奥の洋服収納は1×4材と、50円くらいでアジャスターを自作して設置したんです。

もともとキッチンの窓の収納をこれと同じやり方で作っていて、その進化版としてベッドルームの衣類収納を作りました」(望さん)

お気に入りのアイテム

おばあちゃんの家にあった和ダンスと鏡

菜未さんのお気に入りアイテムは、亡くなったお祖母さまが愛用していた和ダンスと全面鏡です。

「おばあちゃんが使っていた和ダンスや鏡が可愛くて譲ってもらいました。以前、ひとり暮らしをしていたときにも使っていたんですが、この家でも使っています。

彼は北欧のアンティークっぽい感じが、私は日本のアンティークが好きで、それが合体したのが今の家です。

リビングの藤の照明カバーはIKEAで買ったのですが、それとおばあちゃんが使っていたこの全面鏡が合うんですよ」(菜未さん)

ドライヤーホルダー

望さんのお気に入りアイテムは、洗面所のドライヤーホルダーです。

「楽天で買いました、かわいいですよね! ここにドライヤーホルダーを置くようになってから、ドライヤーが使いやすくなりました。

洗面台は大家さんに交渉して、費用を負担してもらってDIYしました。実験用のシンクを買って、木で自作した台に取り付けたんです。水栓はAmazonで買いました。

シンクの脇と上には、下着やタオルなどをストックできる収納棚もつけました。洗濯が終わったらこの棚にすぐ収納できるようにしています」(望さん)

ドライヤースタンド ラック付き ライトグレー ネイビー ライトブルー ピンク【ART OF BLACK】 3,520 楽天市場で見てみる

!function(t,e){if(!t.getElementById(e)){var n=t.createElement("script");n.id=e,n.src="https://araklet.mediagene.co.jp/resource/araklet.js",t.body.appendChild(n)}}(document,"loadAraklet") ワークスペースの照明

Artemide(アルテミデ)の『トロメオ』が欲しくて、ヤフオクで見つけて買いました。

独身寮に住んでいたときに買って、今でも愛用しています。かっこいいですよね! つけるとすごく明るいんですよ!

もうひとつの照明は菜未ちゃん用で、TOKYO DANCEで買いました。

1万円ちょっとだったかなぁ、そこのオリジナルなんです。仕事するのにちょうどいい明るさで気に入っています。

右の椅子はシューメーカーのものですが、在宅勤務の時間が長いのと腰痛持ちなので、アーロンチェアに買い替えました。この前注文したばかりで、6月に届く予定なので楽しみです」(望さん)

ちなみに、このリモートワーク用のテーブルもふたりで横並びで仕事ができるようにと、望さんが自作したもの。板を二重にして、コード類やiPadなどちょっとしたものをしまえるようにしているそうです。

「余った1×4材を間にはさんで隙間を作っています。デスクの脚は、豊洲の『スーパービバホーム』で1本1,500円くらいで買いました」(望さん)

残念なところ

床の隙間

費用を抑えながらDIYをして理想のインテリアを叶えたおふたりですが、一方で気になってしまう部分も。

例えば床にできてしまった隙間には、どうしても埃がたまりやすいとのこと。

「僕はあまり気にならないけど、次に住む人は気になるかもしれないですよね」(望さん)

洗面所の収納棚の角が鋭い

「洗面所から出るときに油断するとぶつかる位置にあるので、たまに流血するんです」(菜未さん)

その対策で、上からカバーをかけていらっしゃいました。

暮らしのアイデア

ルーターなど、ケーブル類は隠す

ドライフラワーは、ふたりの結婚式で使ったブーケ

ごちゃつきがちなテレビ周りのケーブル類が見当たらないなぁと思っていたら、秘密がありました。

「テレビの下にルーターなどをまとめて置くようにしていて、上から板をかぶせました。ルーターの調子が悪くなることもあるので、板は打ち付けずに上からかぶせるだけにしています。

テレビも壁掛けにしたかったので2×4材で自作しました。2×4が剥き出しだと見た目があんまり……だったので上から板を被せたんです。

壁に穴を開けられない場合は、LABRICOを使えば同じようにできると思います」(望さん)

内窓をつけて寒さ対策を

「窓が多い物件なので、寒さ対策としてホームセンターで内窓キットを買って取り付けました。

窓のサイズに合うようにカットして取り付けています」(望さん)

これからの暮らし

8月にお子さんが生まれるご予定の山口さんご夫妻。家族がひとり増えることもあって、引っ越しを検討しているそうです。

「ものも多いし、狭くなってきたので、来年9月の更新前をめどに広い家に引っ越すかもしれません。次も千葉の予定です」(菜未さん)

「この家で色々DIYをして、『これは自分でやると大変』、『これはやれる』とわかったので、その経験を土台に次の家もDIYしたいですね」(望さん)

この家でのDIY経験を活かした次の家は、一体どのようなデザインになるのでしょうか? 新居が完成したら、またぜひ取材させてくださいね!

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RSS情報:https://www.roomie.jp/2022/06/833832/