筆者は、京都にある大山崎という小さな町に暮らしています。
大山崎は天王山のふもとに位置し、とても自然豊かな環境であると同時に、秀吉と明智光秀が合戦を繰り広げた「山崎の戦い(天王山の戦い)」の地として歴史上重要な場所でもあります。
筆者は2012年に東京からこの町に移住してきましたが、その豊かな自然と文化、そして何より人々の温かさなど、住めば住むほどこの町を好きになってきています。
そんな大山崎には、京都ならではの伝統工芸を今に伝える職人がいらっしゃいます。
今回は前編・後編の2回に渡って、京都の伝統的織物である「つづれ織り」の職人の世界をご紹介したいと思います。
取材させていただいたのは、手織りつづれ工房「河野」の河野 茂さん、淳子さんご夫妻。
元々は茂さんのお祖父様が織物をはじめられたそうで、手織りつづれの職人であったお母様が家で織物をされているのを見て育った茂さんも趣味で織物をしていました。そして2009年、勤めていた会社を定年退職したのを期に、本格的に手織りつづれを始めました。淳子さんも、お母様からその技術を引き継ぎ、夫婦二人三脚で工房を運営されています。
手織りつづれ工房「河野」では、織物で使う糸を天然染料を使った「草木染め」と呼ばれる方法で自ら染めていらっしゃるとのこと。
今回は筆者がコーヒー焙煎家ということで、なんとコーヒーを使った染めの行程をご紹介いただきました。
十分に煮出したコーヒーを粉が残らないように濾したのちに冷まします。そこに絹糸をしっかりと浸したら、50℃くらいで30分ほどクツクツと染めます。
一度流水で洗い流し、水をしぼったら今度は「媒染(ばいせん)」と呼ばれる行程に移ります。媒染とは、繊維と色素を結びつける行程で、媒染剤を溶かした水(媒染液)に絹糸を30分ほど浸すことで、綺麗に発色し、定着します。
媒染剤の種類によって同じ材料からでも様々な色を生み出すことができるそうです。
媒染が終了したら、もう一度コーヒーに30分ほど浸して染色を行い、水で洗い流せば完成です(これらの行程を繰り返してより濃く色を付けることもできます)。
こちらが完成した糸。コーヒーで染めたとは思えないなんとも言えない綺麗な色合いです。写真の手前と奥は、媒染剤の違いによる色の違いで、どちらもコーヒーを染料としています。
染料や媒染剤、染料に浸ける時間や回数など、どこまでも奥深い草木染めの世界。
河野ご夫妻は工房の庭で育てた「藍(あい)」で藍染めを行うなど、草木染めの世界も深く研究されています。
後編ではいよいよコーヒーで染めた糸を使った織物の行程をご紹介します。
[手織りつづれ工房「河野」]
住所:京都府乙訓郡大山崎町円明寺薬師前65-8
営業時間:毎週 水・日曜日 10:00~16:00
※イベント出店等によりお休みの場合があります。
[手織りつづれ工房「河野」:Webサイト、Facebook、BLOG]