リチャード・リンクレイター監督の新作『6才のボクが、大人になるまで。』が、公開中です。日本公開を前に、主人公メイソンを演じた俳優のエラー・コルトレーンがルーミーの電話インタビューに応じてくれました。
同じ主要キャストが演じる少年とその家族を、12年にわたって撮り続けた画期的な今作。親の離婚や転校、義父からの暴力や初恋など、さまざまな経験をしながら大人になっていくメイソンの姿が丁寧に描かれています。
「ハロー」と電話越しに話し始めたエラーの声は、すっかり大人の男。“6才のボク”はハタチの青年になっていました。今作に出演することになったきっかけは、モデルだった叔母の所属事務所に遊びに行ったこと。そこでオーディションを勧められ、リンクレイター監督と会うことになったそうです。
「オーディションの日のことは覚えているよ。その時点で脚本はなかったから、リチャードは僕に台詞を読ませるのではなく、普通に話をしたんだ。僕の作ったアート作品を見たり、両親と話したりしてね」
とはいえ、初期の記憶は「ぼんやりしている」とのこと。「僕自身は12年がどれだけ長いのかも理解していなかったと思うけど、両親はアーティストでリチャードの作品が好きだったから、良いプロジェクトになると考えたようだ」といい、エラーのメイソンとしての12年間がスタートしました。
撮影は毎年夏に行われ、監督が1、2週間前から出演者と会って、その年の展開を説明。「完成した脚本を渡されることはなく、常に進行中だった」そうで、ワークショップやリハーサルを重ねて詳細が決まっていったのだとか。
「メイソンの人生に起こる大きな出来事は決まっていたんだと思うけど、その年々の細かい会話だとかは撮影をしながら書かれていった。常に進化する物語だったけど、完成した作品はリチャードが12年前に構想した映画そのものなんだよ」
幼い頃は言われた通りに演じるだけだったエラーも、「10才か11才の頃」からは脚本作りに参加するように。
「ある時点で、自分のやっていることを理解できるようになったんだ。メイソンと父親が一緒にキャンプに行く年があるでしょ? あの年から積極的に脚本作りにも関わるようになったんだよ」
「初めて会った頃から、リチャードは幼い僕と対等に接してくれて、おかげで自然に振る舞えたんだ。誰かを感心させようとしなくて済んだし、自分が作品の一部だと感じられた。そして僕らはメイソンについてよく話し合うようになり、僕が成長するにつれて、共同作業が多くなっていった」
メイソンの姉を演じたローレライ・リンクレイター(監督の娘)は途中で降板したくなり、自分の役を「殺して」と頼んだそうですが、エラー自身は「ずっと楽しんでいた」とのこと。
「ティーンエイジャーの頃は無関心な時もあったかもしれないけど、現場はいつもすごく楽しかった。ポジティブな自己表現の場であり、才能豊かな人々から勉強することができたんだ」
撮影中の1番の思い出は、「父親が子どもたちをヒューストンに連れて行って、野球観戦をした年」とエラー。「僕らは本当にアストロズの試合を観戦し、博物館に行って、かくれんぼをしたんだ。すごく楽しかったのを覚えているよ」と、懐かしそうに話していました。
毎年夏を一緒に過ごした監督や両親役のパトリシア・アーケットとイーサン・ホークを「良き指導者」と表現したエラーは、最後の撮影を終えた時のことを「ほろ苦かった」と振り返ります。
「大きなものから開放されたことはエキサイティングだったけど、みんなとすごく仲良くなっていたからね。もう終わったんだ、もう撮影はしないんだ、と思うと、僕はとても悲しくなった」
「言わばガイド付のアーティスティックなプロセスの中で成長し、自分自身を探求するはけ口を持てたこと。それはティーンエイジャーにとって、とても貴重なことだと思う。僕にとって、この作品は最高の経験となったよ」
最後に完成した映画を観た感想を聞くと、「強烈でエモーショナルな体験だった。それにすごく美しかった」と教えてくれました。
「そこには長い時を経て変化し、成長していく僕の姿が詰まっていた。この世界で自分がどのように変わっていったのかを観ることができて、とても感動的だった。圧倒されたよ」
『6才のボクが、大人になるまで。』
原題:Boyhood
監督・脚本:リチャード・リンクレイター
出演:パトリシア・アークエット、エラー・コルトレーン、ローレライ・リンクレーター、イーサン・ホーク
11月14日(金)TOHOシネマズ シャンテ他にて公開
©2014 boyhood inc./ifc productions i, L.L.c. aLL rights reserved. 『6才のボクが、大人になるまで。』[東宝東和]