まえがき

あなたは、テレビのニュース映像で映る政治家の握手や笑顔を、どこまで信じられるでしょうか。
国会中継で与野党の代表が正面から向き合い、柔らかい笑みを交わす光景は、一見すると「日本政治が前進している」と思わせるものです。

しかし、政治の世界は単純な善意や偶然では動きません。
表に出てくるメッセージは、緻密な戦略と計算の産物です。
そして、時としてその“協調”は、ある陣営を利し、別の陣営を傷つけるための仕掛けに過ぎません。

今回取り上げるのは、石破茂首相と立憲民主党の野田佳彦代表が見せた“歩み寄り”です。
テーマは企業・団体献金の禁止、ガソリン暫定税率の廃止、そして戦後80年談話。
これらの議論は一見すると政策論争ですが、その裏では政権の延命、党内抗争、野党間の駆け引きが同時進行していました。

本稿では、

なぜ石破・野田接近が危険視されるのか

なぜ維新や共産が強く反発したのか

自民党内の保守派がなぜ猛反発しているのか

この動きが日本の政治にどんな影響をもたらすのか

これらを歴史的背景や過去事例と照らし合わせながら解き明かしていきます。

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第一章 石破・野田接近の舞台裏

与野党トップの“握手”が映すもの

6月の通常国会閉会後、政治は夏休みムードに入るはずだった。
しかし、その空気を破ったのは衆院予算委員会での一幕だった。
立憲民主党の野田佳彦代表が、石破茂首相に向けて放った言葉。

「政治改革は依然として懸案で残っています。実務者だけに任せるのではなく、私と総理で膝突き合わせて協議し、合意をしていく気はありませんか」

与野党のトップ同士が、膝を突き合わせて直接話し合う――。
この呼びかけは、多くの国民に「改革への前向きな兆し」に映ったはずだ。
特に政治に関心の薄い層にとって、この場面はニュースの見出しと映像だけで十分にポジティブな印象を与えた。

しかし、政治の世界では、表情と発言の裏に必ず意図がある。
野田氏がこのタイミングで持ち出したのは、彼独特の策略が見え隠れしています。

企業・団体献金の“落としどころ”


野田氏が切り込んだテーマは「企業・団体献金の禁止」だった。
これは、6月に閉会した通常国会で結論が先送りされた宿題だ。

日本の政治資金を巡る議論は、過去30年以上にわたって繰り返されてきた。
1994年の政治改革関連法では、企業・団体献金の禁止を掲げつつも、実際には抜け穴が残された。
以降、政党支部を通じた献金やパーティー券収入など、さまざまな形で企業・団体からの資金流入が続いている。

野田氏はこの問題を俎上に載せ、首相とのトップ会談を提案した。
その際に提示したのが、公明党や国民民主党が推す「献金の受け入れ先を限定する案」だった。
これは、全面禁止を主張する勢力にとっては大幅な譲歩であり、実質的な骨抜きにも映る。

維新・共産の強い反発

この“譲歩案”が火種となった。
立憲と共同で企業・団体献金の全面禁止法案を提出していた日本維新の会は、「安易な妥協」と強く反発した。
共産党も同様に警戒感を示し、与野党間に一瞬芽生えた協調ムードは、野党内部の不協和音へと転化する。

政治の世界では、歩み寄りが必ずしも善ではない。
ある陣営にとっての妥協は、別の陣営にとっては裏切りに映る。
そして、この構図を巧みに利用すれば、相手陣営を内側から揺さぶることができる。

野田氏の動きは、まさにその効果を生んだ。
与野党間の橋渡し役を演じながら、同時に野党の足並みを乱す――。
その結果、野田氏は表向き「協調の政治家」として振る舞いながら、政局上の主導権を握るポジションに近づいた。

過去の類似事例 ― “協調”の裏で進む分断

歴史を振り返れば、同様の構図は何度もあった。
1993年、自民党が下野し細川護煕(ほそかわ もりひろ)連立政権が誕生した際、与党内部の路線対立を加速させたのも、表向きは「政策協議」と称されるやり取りだった。
また2007年、第一次安倍政権の末期にも、民主党が一部法案で与党と協力姿勢を見せつつ、別の場面で徹底的に揺さぶる戦術を取っていた。

“協調”は時に、政権を安定させるよりも、崩壊への道を早める潤滑油となる。
だからこそ、今回の石破・野田の歩み寄りも、単なる善意の対話として受け取ることは危険だ。

読者への問いかけ

あなたは、政治家が「協議しましょう」と言ったとき、その裏に何が動いていると考えるだろうか。
それが本当に国民の利益のためなのか、それとも党内外の権力闘争のためなのか。

この第一章で見てきたのは、石破首相と野田代表の握手が、同時に維新や共産との溝を広げる作用を持っていたという事実だ。
つまり、“歩み寄り”は一枚岩を作るどころか、別の場所で亀裂を広げている。

そしてこの動きは、次の章で取り上げる「戦後80年談話」を巡る駆け引きへと繋がっていく。
そこには、より深刻な党内分断の芽が潜んでいる。

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第二章 戦後80年談話を巡る火種

野田佳彦の“後押し”

2025年8月4日、衆院予算委員会。
野田佳彦代表は、石破茂首相に対してこう切り出した。

「やり遂げるべきだ」

テーマは「戦後80年談話」――。
首相が戦後80年に合わせて見解を発表しようとしている動きを、野田氏は明確に後押ししたのだ。

本来、歴史認識に関する談話は、与野党間で鋭く対立するテーマだ。
特に保守派とリベラルの間では、戦争責任や歴史評価の表現を巡って激しい応酬が繰り広げられてきた。

にもかかわらず、野田氏は「党内政局的にいろいろあるだろうが、続投するのであれば、本人がやり遂げたいと思うことをやり遂げるべきだ」と首相を促した。
しかも形式にはこだわらず、談話が無理でも首相コメントという形での発信を求めた。

歴代談話の重み

戦後○○年という節目の談話は、日本外交と内政の両面で大きな意味を持つ。
過去の例を見てみよう。

1995年 村山談話
社会党出身の村山富市首相が出した談話。
「植民地支配と侵略」を明確に謝罪し、アジア諸国との関係改善を図った。
国内では保守派からの猛反発を受け、長く論争の火種となった。

2005年 小泉談話
村山談話を踏襲しつつ、「平和国家としての歩み」を強調。
小泉純一郎首相は靖国神社参拝も続けたため、中国・韓国との関係は改善しなかった。

2015年 安倍談話
安倍晋三首相は村山・小泉談話のキーワードを盛り込みつつ、戦争への直接的な謝罪は避けた。
「子や孫に謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」とし、未来志向を打ち出した。
これにより保守派からは一定の支持を得たが、中国・韓国からは「不十分」と批判された。

談話は、単なる首相の一言では終わらない。
国内の政治勢力の力学、外交関係、さらには国民の歴史観までも左右する。

保守派が恐れる“石破談話”

石破茂首相が出す戦後80年談話は、どのような内容になるのか。
彼の過去の発言や姿勢を見れば、保守派が懸念する理由は明白だ。

石破氏はかねてから「歴史を正面から見つめ直す必要がある」と発言し、時に謝罪や反省を重視する立場を取ってきた。
外交では中国や韓国との安定的関係を重視する傾向があり、これが保守派には「譲歩的」に映る。

もし戦後80年談話が、村山談話寄りの表現になれば、国内保守層の強烈な反発は避けられない。
さらに、その内容が国会会期中に発表されれば、自民党内の反石破派は一斉に動き出し、政権交代や総裁選の前倒しを求める声が高まる可能性がある。

野田氏の狙いは“分断”か
なぜ野田佳彦氏は、あえて保守派の神経を逆なでするようなテーマで石破首相を後押ししたのか。
一つの見方は、「自民党内の分断を深めるため」だ。

野田氏は首相時代、自らの信念で消費税増税を断行し、民主党の分裂を招いた経験を持つ。
党内の分裂が政権に与える致命的ダメージを、誰よりも理解している政治家だ。

今回の発言は、石破首相を“やりたいこと”に突き進ませ、それによって保守派を一斉に反発させる布石にも見える。
つまり、表向きは「首相の信念を尊重する野党党首」、裏では「自民党の弱体化を狙う戦略家」という二重の顔を持つ。

外交的リスク

戦後80年談話の内容次第では、日本の外交にも波紋が広がる。
もし謝罪や反省色が強ければ、中国や韓国は一時的に歓迎するだろう。
しかし、その一方で、北朝鮮やロシアに対しては弱腰の印象を与えかねない。

逆に、保守寄りの表現になれば、中国や韓国は強く反発し、国際世論を巻き込んだ批判を展開するだろう。
特に米中対立が激化する今、日本の立場は微妙なバランスの上にある。
外交の一挙手一投足が、安全保障や経済に直結する時代だ。

読者への問いかけ

あなたは、戦後80年談話に何を求めるだろうか。
過去への謝罪か、それとも未来への誓いか。
そして、その言葉が政権の存続や日本の外交戦略を左右する可能性があることを、どれだけ意識しているだろうか。

この章で見えてきたのは、戦後80年談話が単なる歴史問題ではなく、国内政治と外交の両面で大きな火種になり得るという事実だ。
そして、この火種に最初の火をつけたのが、野田佳彦氏による石破首相への“後押し”だった。

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第三章 自民党内の不信と退陣圧力

参院選大敗という決定打

2025年夏の参議院選挙。
結果は、自民党にとって歴史的な敗北だった。
比例代表では保守票が分裂し、都市部では無党派層の支持をほぼ失った。
地方でも、農業団体や中小企業団体といった従来の支持基盤が離反し、参政党や維新に票が流れた。

この敗北は単なる議席減にとどまらない。
石破茂首相の指導力への不信が、党内外で一気に噴出するきっかけとなった。

自民党内の重鎮の一人、麻生太郎最高顧問は、選挙直後の派閥会合でこう語った。

「衆院選で勝利できる体制を整えなければならない」

その言葉には、「今の体制では勝てない」という明確なメッセージが込められていた。

両院議員懇談会の衝撃

7月28日、自民党本部で開かれた両院議員懇談会。
普段は形式的な意見交換で終わるこの場が、異様な空気に包まれた。

複数の議員が立ち上がり、石破首相に直接こう迫った。

「首相では次の選挙は戦えない」
「求心力を失った状態で政権を続けるのは党にとって危険だ」

このような直言は、党の公式の場では極めて異例だ。
しかも発言者の中には、かつて石破氏を支持してきた議員の名前もあった。
それだけ、党内の空気が変わっていた。

麻生太郎の“あの時”発言

8月1日、麻生派の会合。
週刊文春電子版によれば、麻生氏は石破首相にこう語ったという。

「俺に責任取って辞めろと言った奴がそういえばいたよな。あの時に似てねぇか」

この「あの時」とは、2000年の森喜朗首相退陣劇を指しているとみられる。
森氏は失言や支持率低迷で求心力を失い、党内の大勢が退陣を求める空気の中で辞任に追い込まれた。
当時、麻生氏は森政権の中枢におり、その空気感を肌で知っている。

森喜朗退陣劇との類

森喜朗退陣のプロセスは、現在の石破政権と驚くほど似ている。

選挙での敗北
 2000年6月の総選挙で自民党は大幅に議席を減らし、連立与党はかろうじて過半数を維持。
 しかし森氏の支持率は急落し、党内に危機感が広がった。

党内重鎮の動き
 当時の加藤紘一氏、山崎拓氏らが退陣論を公然と語り、メディアも連日報道。

最終局面での“空気”
 表立った反乱ではなく、「続けられない空気」が党内を覆い、森氏は辞任を決断。

今の石破政権も、参院選の敗北で求心力を失い、党内の空気が「次を探す」方向へ傾いている。

第一次安倍政権との違いと共通点

2007年の第一次安倍政権退陣は、参院選での大敗と健康問題が重なったケースだ。
安倍晋三首相は続投を表明したものの、党内支持は急速に失われ、1か月余りで辞任に追い込まれた。

共通点は、「選挙敗北後に続投を表明したが、党内支持が急落した」点。
違いは、安倍氏の場合は健康問題が直接的な引き金だったのに対し、石破氏の場合は政治姿勢と党内信頼の欠如が根本原因だということだ。

退陣圧力の実態

現在の退陣圧力は、単なる一部の派閥からの反発ではない。
党内広範に広がる“不信感”が根底にある。

保守派は戦後80年談話や歴史認識で石破氏を信用していない。

中堅・若手は次の選挙での落選を恐れ、勝てる顔に交代すべきと考えている。

経済政策重視派は、石破氏の経済運営が低成長を招くと批判している。

こうした不信の総和が、日増しに首相の足元を揺るがしている。

読者への問いかけ

あなたは、この政権が参院選での敗北を挽回できると思うだろうか。
それとも、党内の空気が固まる前に新しい体制へ移行すべきだと思うだろうか。

政治の世界では、「空気」がすべてを決めることがある。
その空気が今、石破政権にとって致命的な方向へと動きつつあるのだ。

次章では、この退陣圧力の中で石破首相が選んだ“歩み寄り”が、どのような代償を伴うのかを見ていく。

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第四章 危うい“歩み寄り”の代償

歩み寄りがもたらす二重の孤立


石破茂首相は、参院選の大敗と党内不信の高まりの中で、野田佳彦代表との接近というカードを切った。
表向きには「与野党協調」「政治改革への前進」という姿勢をアピールできる。
しかし、この選択は同時に二重の孤立を招く可能性を孕んでいる。

党内保守派からの孤立
 戦後80年談話や企業・団体献金問題での譲歩姿勢は、保守層からの信頼を損なう。

野党側からの孤立
 野田氏との接近は維新や共産の反発を招き、野党全体との協力関係を崩す。

つまり、石破氏は「与党からも野党からも距離を置かれる」危険地帯に自ら足を踏み入れたのだ。

中間派首相の宿命

この“二重の孤立”は、日本政治の歴史において繰り返されてきた。
特に「中間派」と呼ばれる政治家が首相になった場合、その多くが短命に終わっている。

海部俊樹政権(1989〜1991年)
海部俊樹首相は、派閥の支持を広く受けながらも特定派閥に属さない中間派だった。
湾岸戦争時の対応や政治改革問題で与野党双方から厳しい批判を浴び、最終的には自民党内の路線対立に押し潰される形で退陣した。

羽田孜政権(1994年)
非自民連立政権の首相として誕生した羽田孜氏は、社民党との連携を失い、衆院で過半数割れ。
与党内の亀裂と野党の攻勢の板挟みになり、わずか64日で退陣した。

これらの事例に共通するのは、「どちらにも完全に依存しない立ち位置」が、最終的に両方から見放される結果を招いたということだ。

石破政権の現在地

石破首相は、保守派に完全には寄らず、リベラル寄りの政策にも理解を示す中間的スタンスを取ってきた。
野田氏との歩み寄りは、この路線の延長線上にある。

だが、政治における中間派は安定ではなく不安定を生むことが多い。
なぜなら、政治は「支持基盤の熱量」で動くからだ。
左右両極の熱心な支持層から距離を置けば置くほど、政権の支持は冷め、求心力は急速に低下する。

野田との歩み寄りが映す“政治感覚”


石破首相が野田氏に歩み寄った背景には、「国民受け」を狙う計算があった可能性が高い。
世論調査では、「与野党が協力すべき」という回答が半数を超えることが多く、対立構造にうんざりしている有権者は少なくない。

しかし、政党政治の現実は甘くない。
国民受けするポーズが、必ずしも党内での支持拡大に繋がるわけではない。
むしろ、派閥力学や政策の整合性を重視する党内政治の論理と衝突するケースが多い。

代償としての党内求心力低下


野田氏との接近後、自民党内の保守派からは以下のような声が漏れ始めた。

「石破さんはもう我々を見ていない」
「保守層を切り捨てて野党と手を組むなら、次は支えられない」

こうした声は、政権を維持する上で最も重要な「党内基盤の結束」をじわじわと侵食する。
首相官邸の政治判断は、党内多数派の支援なしには実行できない。
それを失えば、どれほど世論で一定の支持を得ても、政権は長続きしない。

過去事例から見える未来予測


中間派首相の孤立と短命は、過去にも繰り返されてきた。
海部・羽田両政権の後、党内基盤を失った首相は、ほぼ例外なく短期間で退陣している。
しかも、その多くは「突然の辞任劇」という形を取る。

石破政権も、このパターンに当てはまるリスクが高まっている。
退陣のきっかけは、世論調査での支持率急落か、党内での不信決議か。
いずれにしても、「歩み寄り」の代償は予想以上に重いものになる可能性がある。

読者への問いかけ

あなたは、政治において「中間的立場」を取ることをどう評価するだろうか。
バランス感覚を重視する賢明な姿勢と見るか、それともどっちつかずで信頼できないと見るか。

石破首相の野田氏との歩み寄りは、理想と現実の間で揺れる日本政治の縮図でもある。
だが、その理想が党内政治の論理と衝突したとき、理想主義者はしばしば最も孤立した存在になる。

次章では、この状況を踏まえ、私たち国民が何を見極め、どう行動すべきかを考える。

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第五章 国民が取るべき行動

報道の“切り取り”が生む印象操作

テレビや新聞、ネットニュース――
私たちは日々、政治家の発言や動きを報道を通じて知る。
しかし、その報道が常に全体像を映しているとは限らない。

例えば、今回の石破茂首相と野田佳彦代表の“歩み寄り”も、見出しだけを見れば「改革に向けた協力」と映る。
だが、その裏には野党間の溝を広げ、自民党内の分断を加速させる狙いが潜んでいた。

2009年の民主党政権誕生時にも、マスコミは「政権交代で日本は変わる」と連日報じたが、現実には政策の迷走と支持率低下が続き、3年で政権は崩壊した。
報道は、その時々の政治的空気や編集方針に影響される。
つまり、私たちは常に「切り取られた政治」を見せられているという前提を忘れてはならない。

情報の“源流”をたどる

政治の実態を理解するためには、情報の源流に近づくことが重要だ。
一次情報――つまり、国会議事録、記者会見全文、公式発表、法案文書などだ。

例えば、戦後80年談話に関しても、首相官邸や外務省の公式発表を直接読むことで、報道のフィルターを通さない表現やニュアンスが見えてくる。
逆に、報道だけを見ていると、編集者の意図によって強調された部分や省略された部分だけが印象に残ってしまう。

SNSの普及により、国会中継や記者会見の映像は誰でもアクセスできる。
有権者が自ら一次情報を確認する習慣を持てば、政治家やメディアによる“印象操作”の影響を最小限にできる。

過去事例に学ぶ

情報を見極める上で、過去の事例と照らし合わせることも有効だ。

森喜朗退陣劇(2000年)
 メディアは森氏の失言や不祥事を連日報じたが、その裏では派閥間の主導権争いが進んでいた。
 報道では「国民の声で退陣」と見えたが、実態は党内力学による決着だった。

第一次安倍政権退陣(2007年)
 健康問題が引き金とされたが、実際には参院選敗北後の党内求心力低下が原因。
 報道の焦点と実態が異なる典型例だ。

消費税増税決断(2012年)
 当時の野田佳彦首相は「財政再建のため」と説明したが、政治日程や党内調整の事情が強く影響していた。
 経済的必然性だけでは説明できない決断だった。

こうした事例を知っていれば、現在の石破政権の動きも単なる報道の枠を超えて読み解くことができる。

SNS時代の情報戦

現代は、テレビや新聞だけでなくSNSも政治情報の大きな流入口になっている。
しかし、SNSには特有の危険がある。

拡散速度が速すぎる
 一度拡散された誤情報は、訂正されても完全には回収できない。

同調圧力が強い
 フォロワーや仲間内で同じ情報を共有し合うことで、異なる意見や事実が見えにくくなる。

感情的反応を誘発しやすい
 怒りや恐怖を煽る投稿は拡散されやすく、冷静な議論を妨げる。

有権者がSNSで政治情報を得るときは、「その情報の出所はどこか」「一次情報と一致しているか」を必ず確認する習慣が必要だ。

国民ができる具体的行動

一次情報を確認する習慣を持つ
 国会中継や記者会見全文、法案テキストを直接読む。

複数の媒体を比較する
 新聞・テレビ・ネットニュース・海外メディアの報道を比較し、共通点と相違点を把握する。

政治家の過去発言と行動を検証する
 今回の野田氏の発言も、首相時代の行動や結果と照らし合わせることで、意図が見えやすくなる。

選挙で意思表示する
 不満や疑念をSNSでつぶやくだけでは政治は変わらない。
 投票こそが唯一の直接的な意思表示だ。

周囲に情報を共有する
 一次情報や信頼できる資料を、家族や友人と共有し、政治に関心を持つ人を増やす。

読者への最後の問いかけ

あなたは、石破首相と野田氏の“歩み寄り”をどう評価するだろうか。
それを改革への一歩と見るか、それとも政局の道具と見るか。

そして、どちらの立場を取るにせよ、その判断を報道やSNSの切り取りではなく、自ら検証した事実に基づいて下しているだろうか。

私たち有権者が主体的に情報を選び取り、意思を示すこと。
それこそが、日本政治を変える第一歩なのだ。

あとがき ― 歴史は繰り返すのか、それとも変えられるのか

“歩み寄り”の本当の意味

今回見てきた、石破茂首相と野田佳彦代表の歩み寄り。
報道では「与野党協調」「政治改革の一歩」として取り上げられたが、その内実はもっと複雑で、危うさを孕んでいた。

企業・団体献金の禁止問題では、野田氏が提示した“落としどころ”が、維新や共産との亀裂を生み、野党の足並みを乱した。
戦後80年談話では、野田氏が石破首相を後押しすることで、保守派の反発を引き出し、自民党内の分断を加速させた。

これらは偶然ではない。
政治家があるテーマを選び、あるタイミングで発言する背景には、必ず戦略がある。
その戦略が、国民の利益に沿うものか、それとも政局の駆け引きか――それを見抜くのは、私たち有権者の責任だ。

歴史が教えるもの

日本の戦後政治は、何度も同じパターンを繰り返してきた。

森喜朗退陣劇(2000年)
 党内の空気が変われば、首相は一気に孤立し、辞任を迫られる。

第一次安倍政権退陣(2007年)
 選挙敗北後の続投表明は、短命化の予兆でしかなかった。

海部俊樹政権・羽田孜政権
 中間派首相は与野党双方から距離を置かれ、支持基盤を失えば一気に崩れる。

これらの歴史は、「政治的孤立は一瞬で訪れる」ことを教えている。
そして、その孤立は多くの場合、選挙や世論よりも党内力学によって決まる。

今回の石破政権も、まさにそのパターンに近づきつつある。
参院選敗北による求心力低下、保守派の反発、野党間の亀裂――。
その全てが、首相の足元を同時に崩し始めている。

国民の選択が未来を変える

では、私たち国民はこの状況で何をすべきか。
第五章で述べたように、必要なのは主体的な情報の収集と判断だ。

メディアやSNSが見せる「切り取られた政治」ではなく、一次情報や過去事例に基づいて政治を読み解くこと。
それは一見地味で、すぐには結果が見えないかもしれない。
しかし、情報を選び取る習慣を持つ人が増えれば、政治家や政党も軽々しい印象操作では動かせなくなる。

政治は“遠い世界”ではない

多くの人が「政治は自分には関係ない」と思っている。
だが、税金、社会保障、安全保障、経済――政治の決定は必ず私たちの生活に直結する。

例えば、消費税増税は買い物のたびに財布からお金を奪う。
外交の失敗は、物価や雇用、エネルギー価格に影響する。
防衛政策の変更は、安全や地域の生活環境を変える。

政治は、私たちの日常のすぐ隣にある。
だからこそ、誰が舵を握るのか、その人物がどんな発言をし、どんな歩み寄りをするのかを見極める必要がある。

あなたへの最後の問いかけ

この長い分析を読んだ今、あなたは石破首相と野田代表の歩み寄りをどう見るだろうか。
それは「国民のための協力」か、それとも「政局のための仕掛け」か。

そして、あなたはその答えを、誰かの意見や報道の見出しではなく、自らの判断で下しているだろうか。

歴史は繰り返す――しかし、それを変えられるのは私たち自身だ。
次の選挙の一票、日々の情報の選び方、そして政治への関心。
そのすべてが、日本の未来を形作る力になる。

あなたがこの文章を読み終えたとき、政治を“遠い世界”ではなく“自分の世界”として感じてもらえたなら、この分析は意味を持つ。


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※高倉 龍之介(政治フリージャーナリスト・映像クリエイター)