有料メルマガは、しばしば「ファンクラブ商売である」と言われています。実際、そのような側面もあり、「有料メルマガ=ファンクラブ会報誌」説は一定の説得力を持っていると思います。しかし、こうした言説が広まる一方で、ファンクラブの実態があまり知られていないことに違和感を覚えます。そこで、田村ゆかり「姫」のファンクラブに入会し、有料メルマガとの比較をすることにしました。(※「ファンクラブ会報誌」とは、ファンクラブ会員限定で配布される紙の印刷物・小冊子を指します。)
◆「有料メルマガ=ファンクラブ会報誌」説
有料メルマガ「Magalry」を開始したグリー、ソーシャルメディア戦略を語る(CNET Japan)
2013年2月21日に掲載された上記の記事を読んでいて、気になった一文がありました。それは「Magalryで目指すのは、メルマガではなくファンクラブサービス」という記述です。「有料メルマガはファンクラブ会報誌である」という主張は、以前から存在します。
有料メルマガは「ファンクラブ会報誌」の域を抜け出せるか?(ihayato.書店)
2012年11月23日掲載の記事にて、イケダハヤト氏は「僕は『個人の有料メルマガ』は、『ファン会報誌』でいいんじゃないかなぁ、と思っている派です」との意見を述べています。この一文に関しては、私も、イケダ氏の意見には賛成です。
さて、私は実際に「Magalry(マガリー)」で配信されている有料メルマガを8タイトルほど購読したのですが、ある疑問が浮かびました。それは「そもそも『ファンクラブ会報誌』とは、どのようなものか?」ということです。
私は、遊佐未森さんのファンクラブ「ソラミミ倶楽部」と、遠藤久美子さんのファンクラブ「駄菓子なENKUMIポケット」に入っていたことがあります。しかし、それは20年近く前の話です。つまり、「ファンクラブの会報誌がいかなるものか」という漠然としたイメージを持ってはいるのですが、現在発行されているファンクラブの会報誌の実情は知らないということになります。
おぼろげな昔の記憶だけで何かを語るということは、私の主義に反します。そのため、取りあえずファンクラブに入ることに決めました。今やファンクラブはインターネット上から簡単に入会できます。私が選んだのは、人気声優・田村ゆかりさんのオフィシャルファンクラブ「Mellow Pretty」でした。なお、入会理由は省略します。入会理由を説明する上では、姫(=田村ゆかり)の魅力を記す必要があり、それはとてつもない長文となるからです。いや、要するに「世界一かわいい女の子」にメロメロになっているだけなのですが・・・。
◆マガリーはファンクラブ会報誌のデジタル版である
3月1日(金)に「ローチケ.com」経由で、姫のファンクラブ入会を申し込んだのですが、ファンクラブ会報が届いたのは3月12日(火)でした。登録した瞬間から閲覧できるマガリーに比べると「遅い」のは間違いありませんが、紙に印刷された会報誌を郵送するのです。そこを問題にするつもりはありません。
また、会報誌と同時に、ファンクラブ会員証(カード)も送られてきました。実際に会員証を手に取ることで、「これで王国民になれたのだ!」という実感を持つことができます。こうした触覚による感動は、一部の例外を除いて、有料メルマガには存在しません。ちなみに、一部の例外とは『虚構新聞友の会会報』のことです。会員登録後、住所などの個人情報を連絡することで、「友の会会員証」が送付されます。(※現在も送付を行っているかは不明です。)
さて、ファンクラブ会報誌(52号)は、次のような目次となっています。ちなみに大きさは、縦210 mm × 横115 mmです。
03 ― 22ndシングル「W:Wonder tale」特集
06 ― ウサギさんの報告会
09 ― お姫様の秘密
12 ― 神様Take me!!リベンジ編
14 ― チャレンジゆかりん♪
16 ― ウサギと子猫のゆうびん屋さん
17 ― これは素敵な1枚の絵なの
18 ― めろぷりさんの日常
19 ― ウサギさんの日常
19 ― 次号投稿コーナーテーマ
20 ― ゆかり王国公認 通信販売事務所
22 ― お姫様からのプレゼント
23 ― レギュラーチェック
23 ― information
これらのコンテンツは、マガリーの有料メルマガのコンテンツと共通している部分があります。
例えば、有料メルマガ『淳の休日気ままに現場主義』では、田村淳氏がさまざまな場所を訪れている様子を、動画を含めて配信しています。これは、姫のファンクラブ会報誌内「神様Take me!!リベンジ編」に相当します。ちなみに、姫は東京タワーを訪れており、その時の模様は、ファンクラブ公式サイト内で動画配信も行っています
有料メルマガ『ねこのあしあと』では、中川翔子氏が読者からの質問に回答しています。これは姫のファンクラブ会報誌内「お姫様の秘密」に相当します。ちなみに、姫は「インターネット」に関する質問など、合計10の質問に回答しています。
以上のことから、マガリーの有料メルマガは、ファンクラブ広報誌で行われているコーナーを切り取り、配信を行っていることが分かります。
ファンクラブ広報誌はコーナーがバラエティーに富んでいますが、発行頻度は低い(年4回)。対して、マガリーの有料メルマガは、コーナーの種類は限られていますが、発行頻度は高い(週1回)。このような傾向が明らかとなります。また、写真をふんだんに利用しているという点では、両者に共通しています。こうしたことから、「有料メルマガ=ファンクラブ会報誌」説には、ある程度の説得力がある意見であると結論付けられます。
◆「伝書鳩」はファン向けメルマガの理想形
さて、「有料メルマガ=ファンクラブ会報誌」説が成立することは分かりましたが、ここで1つの疑問が生じます。田村ゆかりオフィシャルファンクラブ「Mellow Pretty」の入会案内には、次のような一文が記されています。
会員特典
その7.ゆかりんからリアルタイムでメールが届く!メールマガジン配信
これは一体なんでしょうか? このメールマガジンは「伝書鳩」と呼ばれているのですが、ファンクラブ公式サイト内では、次のような言葉で説明されています。
伝書鳩とは…姫が王国の皆様に気の向くままにお送りするメールマガジンです。いつ送られてくるかは姫次第!登録がまだの方、姫からのメールを受け取ってみませんか?是非登録をお待ちしております!
どうやら、マガリーの有料メルマガのように、ファンクラブ広報誌の1コーナーを切り取ったような内容ではなさそうです。「伝書鳩」への登録は任意のため、早速、登録することにしました。そして、衝撃を受けることになります。
「伝書鳩」の内容は、姫と王国民の間にある「信頼関係」に基づいて記されているため、その文章を掲載することは、はばかられます。そこで、一番最初に届いたメルマガの全文を、ほぼ伏せ字にて紹介します。
2013年3月12日22:30配信
件名:○○○ー!!
○○○○○○○○○○○○○!
○○○、○○○○○○○○○○○○○○○○!!
たむらゆかり
2013年3月22日までに11通の「伝書鳩」が届いていますが、文字量は最初に届いた1通と同じ程度でした。
このメールを受け取った時、私は感動しました。この短いメールから、姫の素顔を垣間見た気になれたからです。ファンにとって、これほど、うれしいことはないと思います。
これは、熱心な王国民から聞いた話なのですが、姫のライブは、映像化されるライブと映像化されないライブでは、MCが「別物」なのだそうです。それは、文化放送で放送されるラジオ番組「田村ゆかりのいたずら黒うさぎ」と、インターネットラジオ「喫茶 黒うさぎ ~秘密の小部屋~」の関係に近いと考えられます。そして、「表」のTwitterに対して、「裏」のメールマガジン。そう、姫の魅力は、熱心なファンには、惜しみなくギャップを見せるところにあるのです。これは、王国民の訓練度が高い理由でもあるのですが、話がそれるため、ここでは省略します。
「有料メルマガ=ファンクラブ会報誌」は、印刷物をデジタルに置き換えるという点で、先進的と評価することは可能です。しかし、姫のファンクラブでは、従来のファンクラブ会報誌をそのままに、メールマガジンを魅力的な「新しいコンテンツ」へと昇華させることに成功しているのです。
つまり、「有料メルマガ=ファンクラブ会報誌」は成立しますが、「有料メルマガ=ファンクラブ」ではないのです。有料メルマガ「Magalry」の主な価格帯は月525円ですから、年間に直すと6300円となります。対するファンクラブの会費は、年間4000円+入会費1000円+申込手数料です。額面だけを見るならば、有料メルマガの方が割高となっています。
もし、有料メルマガをファンクラブビジネスとして考えているのであれば、「有料メルマガ=ファンクラブ会報誌」で満足せず、「ファンクラブ」のレベルまで昇華する工夫が必要ではないか。私はそのように考えています。
コメント
コメントを書くゆかりんの鳩には気まぐれで王宮へ帰れ企画があるのはご存じないのかな?
本当にごくまれに返信アドレスがついてきて選ばれた数名はゆかりんと数回のメールのやり取りができるというものです。
この時は全ての王国民が仕事そっちのけでメールに集中することになります(笑
こんなサービスは嬉しいですよね
そうなんですか。おそらく、自分は受信したことがないので、楽しみにしています。