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『ドルフィン・ソングを救え!』~ドアをノックするのは誰だ?~
2015-10-24 14:53樋口毅宏著『ドルフィン・ソングを救え!』1989年にタイムスリップしたフリーターの女性が、憧れのミュージシャン(モチーフはフリッパーズ・ギター)の解散を阻止すべく奔走する――。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『ドルフィン・ソングを救え!』を読みながら、僕は高校生の頃に同じクラスだったTさんのことを思い出していた。
Tさんと僕は隣同士の席だったけれど、交わす言葉といえば、クラスメイトとしての義務のような挨拶程度で、特別、話し込むなんてことはなかった。けれどある日、どういう理由からか、僕と彼女はほんの少しだけ会話をした。そこで彼女は、これまたどういう会話の流れからか、「オザケンが好きなの」と僕に言った。
僕はその頃、オザケン――小沢健二のことを「なんかナヨナヨしている女の子みたいな人」という認識しか持ち合わせておらず、
だから彼女の言葉も「 -
バック・トゥ・ザ・未来
2015-10-21 00:008バック・トゥ・ザ・フューチャーPart2にて、空飛ぶデロリアンがマーティとドク、そして恋人のジェニファーを乗せて飛んでいった未来。デロリアン内部の操作盤に表示された日付は、『2015年10月21日』つまり今日だ。映画の中では、車もスケートボードも空を飛び、上着も靴も自動でサイズが合う。街を歩けば画面が飛び出し、カフェに店員はおらず、自動で注文が出てくる。そんな未来が、やって来ているだろうか。幾つかは現実になりつつあるらしいけれど、目玉の車はまだ飛ばない。僕がこの映画を初めて見たのは、多分小学生の頃だったと思う。「未来ってこんなことになるのか!」そう純粋に感じていたかどうかは分からないけれど、この映画で描かれている「未来」と同じ時間に自分がいるだなんて、想像もしていなかった。映画の未来はもっとずっと遠い先の話で、自分とは関係のない世界だと思っていた。映画の中でマーティとドクは、不幸になってし -
良い加減ゲーム
2015-10-13 14:40どうも、鉄塔です。僕の人生の中で幾つか、これは遊び倒したな、舐め尽くしたかな、というゲームがありまして。「これはもう流石に味がしなくなったな……いや 塩を振るとまだいけるぞ! ほら塩の味がする!」そんなシワッシワになるまで遊んだゲームを、もう新作が出ないと分かりつつも、ひょっとしたら出るんじゃないかという期待を込めて、一つ紹介します。それは、2009年にPSP用タイトルとして発売された『PixelJunk MONSTERS DELUXE』どういうゲームかというと、いわゆる「タワーディフェンス」と呼ばれる系統のゲームで、マップの様々なところに、敵を自動で攻撃するタワーを設置し、waveごとに襲いかかってくるモンスターたちを倒し、それで得たお金で新たなタワーを設置、またはアップグレードして、拠点を守りきればステージクリア、という単純な内容です。僕はこの『PixelJunk MONSTERS D -
彼方、新世界へ
2015-10-11 15:044「Instagram」というものが世の中にあるのだが。皆さんはご存知だろうか。この「Instagram」、オシャレ界隈、オシャレ横丁あたりでとても賑わっているやつで、ツイッターが文字ベースならば、こちらは写真ベースが特徴らしい。そのオシャレ惑星での盛り上がりが、ようやく地球に住む賽助氏の耳に届いたのは、つい先日のことである。「はッ! くだらなそう!」彼は最初こそ鼻で笑いもしたが、結構流行っている的な感じになっていると聞くと、途端気になってきてしまうのだから、彼もやはりミーハーなのである。「やっぱり、市井の人たちが何に熱狂しているのかは知っておかないといけないし、 そういう新たなツールからアイディアって、出てくるものだからね。 たとえば携帯電話が普及したことでミステリ事情は大きく変わったわけで……」体の良い言い訳を用意できた彼は、ではさっそく登録してみようとアプリを入手したものの、まずその入 -
『体育祭』
2015-10-10 12:151電車の車窓から、どこかの学校の校庭が見えた。たくさんの人たちが、校庭に大きな輪を作っている。その輪の中心で、小さな人影がいくつか、懸命に動き回っていた。どうやら体育祭のようだ。(体育祭かぁ……懐かしいなぁ体育祭。……あれ、体育祭? 何やったっけな?)体育祭に関する思い出が無いのは、僕が文化系の人間であったからで、文化系の人間はきっと皆そうだろうと思う。小学校、中学校時代の僕は背が低く、運動関係はまったく駄目だった。視力に加えて性格まで捻くれていたので、「体育祭……読んで字の如し、体が育った人間たちの祭りだ。 頭は育ってないが、体だけは頑丈だという輩が、今日1日だけ輝けるんだ」そんなことを思ったりもしたが、実際のところ勉強さえも出来なかったのだから、もうどうしようもない。そう、僕は勉強が出来なかった。だから上記の『体育祭に関する心の声』は多少成長した今だから書ける文章で、正確には「たいくさい -
彼方からお知らせ
2015-10-08 17:04賽助という小説家がいて、これがまた酷い男である。どれほど酷いのか、枚挙に暇がないので割愛するが、10月25日の日曜日、彼は墨田区のとあるホールで和太鼓を演奏することになっている。町の小さなイベントで、1階ではおでんとか綿あめとかが売られているらしい。演奏時間も15分ほどだし、客席もとても少ないのだが、彼はそのアットホームな感じがとても気に入っていた。思えば1年ほど前、彼が所属する和太鼓集団「暁天」が渡露する前に、同じ場所で和太鼓の演奏を披露したことがある。演奏終了後、館長と思しきご婦人が壇上に立たれ、「彼らはね、この『BIGSHIP』で太鼓を叩いたあと、ロシアで演奏するの。 『BIGSHIP』というのは、大きな船、色々な芸術家を船出させたいという意味があるんだけど、 彼らも、私たちの元を離れ、日本から出て、ロシアに船出して行きます。 そしてまたこの『BIGSHIP』に帰ってきて、太鼓の演奏
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