• このエントリーをはてなブックマークに追加
【さんたく!!!朗読部『羊たちの標本』】ショートストーリー第一話『マナ』
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

【さんたく!!!朗読部『羊たちの標本』】ショートストーリー第一話『マナ』

2019-04-05 19:00

    さんたく!!!朗読部『羊たちの標本』
    ショートストーリーを
    チャンネル会員限定にてブロマガで順次配信。

    第1話は3月31日放送で
    冒頭を朗読した『マナ』編。


    5b6bde05b4a28b73f807490256b550f205be7ba8

    (作:古樹佳夜)

    その日、僕は春の匂いで目が覚めた。

    窓を開けると、屋敷の裏手は
    満開の白い花で埋め尽くされていた。
    あれはたぶん、草苺だ。
    照り出した朝日に花がほころんで、
    甘い香りを放っている。
    唐突に、喉の渇きを覚える。
    何か軽いものなら口にできそうな、
    そんな気分だ。
    こんなことはとても珍しい。
    僕は急いで身支度をして部屋を出た。
    一瞬、隣室の紫郎を起こそうかと思ったが、
    彼が人一倍の低血圧で
    寝起きが最悪であることを思い出し、
    止めた。








    「瑠璃……?」

    声に気づいて振り向くと、
    茂みの向こう側から
    柔らかそうな銀髪がのぞいた。
    新緑よりも深い緑色の目が僕を捉えて
    ホッとしたように垂れ下がる。


    「サーシャ。どうしたの? 早起きだね」

    「うん……気づいたらまた外にいた。
     きっとアレキサンドラのせいだ」

    「ああ、そうだったんだね。
     夜中は羊と一緒に過ごしていたのかな」

    「いや。アレキサンドラは
     標本室に居たに違いない」

    『標本室』。


    不意に発せられた言葉に、
    胸を掴まれたようだった。
    あの部屋に長居するのは、
    良い影響を受けないだろう。
    殊に、サーシャの場合は。


    「……あんまりあそこに行っちゃダメだよ」

    「俺に言われても」

    「アレキサンドラに言い聞かせて」


    サーシャの眠りは羊同様に浅い。
    彼の中にいる何人かの人格が、
    ひっきりなしに身体を使って
    夢ノ淵院を彷徨っている。
    サーシャ自身もその行動を
    制御することは出来ないのだ。

     
    この記事は有料です。記事を購読すると、続きをお読みいただけます。
    入会して購読

    チャンネルに入会して、購読者になればこのチャンネルの全記事が読めます。

    入会者特典:当月に発行された記事はチャンネル月額会員限定です。

    ブログイメージ
    『さんたく!!!ぷらす』ブロマガ
    更新頻度: 不定期
    最終更新日:2024-03-02 14:40
    チャンネル月額: ¥550 (税込)

    チャンネルに入会して購読

    ニコニコポイントで購入

    この記事は月額会員限定の記事です。都度購入はできません。

    コメントを書く
    コメントをするにはログインして下さい。