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【さんたく!!!朗読部『羊たちの標本』】ショートストーリー第三話『水月』
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【さんたく!!!朗読部『羊たちの標本』】ショートストーリー第三話『水月』

2019-05-17 17:00
    さんたく!!!朗読部『羊たちの標本』
    ショートストーリーを
    チャンネル会員限定にてブロマガで順次配信。

    第三話『水月』
    (作:古樹佳夜)

    ------------------------------------

    かちゃ、かちゃ。
    古く錆びついた鍵穴に、
    細いピンを差し込む。
    
    月明かりに照らされた廊下は青く、
    まるで深海にでもいるみたいだ。
    手元が陰ってよく見えないけれど、
    両手は塞がっているしランプは足元だ。
    僕は額にかかる銀髪を払った。
    少し邪魔くさい。
    
    切りそろえれば目にかからないのに……。
    
    ……がちゃり。

    かすかな手応え。 小心者の僕の心臓は跳ね上がる。
    ……きぃ……。
    まるで僕を招き入れるように、 標本室の扉は開いた。 壁にずらりと並んでいるのは
    見知らぬ子供たちの標本だ。 僕は薄目を開けて、足早に前を通り過ぎる。
    あの子は一体どこにいるの? コツコツと聞こえるのは
    自分の足音のはずなのに、 心臓が裂けそうなほど鼓動している。
    誰かに追いかけられているみたいだ。
    は、はやく……早く逃げなくちゃ……!
    僕は『あの時』の事を鮮明に思い出していた。 ❇︎❇︎ 「皆既月食?」 「う、うん……羊君は、し、知ってる?」 庭でスケッチをしていた羊君は 隣に座る僕に向き直り、首をかしげた。 「言葉は聞いたことが……」 「カキフライ定食?」 羊君を挟んで向こう側に座る海月君は
    身を乗り出す。 「流石にその聞き間違いは無理があります」 「だって、お腹減っちゃってさ」 「え、えーと……
    一夜のうちに満月が欠けていって、
    見えなくなっちゃう、
    め、珍しい現象のことで……」 「満月が欠ける?」 海月君の眉間にシワが寄る。 僕は膝の上の分厚い図鑑を指差しながら、
    必死で説明した。
     
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    更新頻度: 不定期
    最終更新日:2024-09-14 09:50
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