石のスープ
定期号[2013年6月4日号/通巻No.81]

今号の執筆担当:村上和巳


「東京電力定例会見のオモテとウラ〜第1回」の続き)

■「チョッキ」か「えーと」か

さて会見場に入ると、普段から参加している記者は20人弱ほど。大手新聞と常時会見中継を行うインターネットメディアのニコニコ動画、IWJ(Independent Web Journal)、それにフリー数人というメンツだ。原発で何らかの問題が起きたりすると、記者の数は激増する。

私はたいがい正面向かって左端の列のテーブルに陣取る。これは会見中メモをとるパソコンの電源を取るのにちょうどいいからだ。さらに言うと、前述のネットメディアの生中継時に顔が写りにくい場所だからという理由もある。

正直、国有化となっている「敵陣」で電源を無償で使わせてもらうのは気も引けるが、2時間以上に及ぶことも珍しくない会見ではパソコンのバッテリーがもたなくなるので仕方がない。だったらメモとペンでやればいいではないかという声も聞こえてきそうだが、定例会見で説明される内容は多岐におよび、会見中に東電ホームページで過去データを参照することもあるため、そうはいかないのだ。

会見開始直前に広報部員が用意した資料を受け取ってから再び着席する頃に会見は始まる。出席した当初の会見担当者は、メインスピーカーが当時、原子力・立地本部長代理だった松本純一氏(現同社原子力設備管理部部長代理兼原子力改革特別タスクフォース事務局長代理)、司会を務めていたのは広報部の寺澤徹哉部長(現・日本原燃出向)のコンビだった。

松本氏は記者からどんな変化球を投げられても、表情を変えることなく、饒舌に回答していた人物で、一方の寺沢部長は地黒の顔の眉間にいつもしわを寄せ、記者の質疑が長くなったり、やや面倒な質問をすると、それを遮ろうとするため、ある種の「悪評」がつきまとう人物だった。

ちなみに東電会見出席者は東電側も常連記者もニコニコ動画ユーザーからコメント欄であだ名をつけられることが多く、松本氏は円谷プロの特撮番組に登場する怪獣ブースカに容貌が似ているとの理由で「ブースカ」、寺澤氏はお笑い芸人・ノッチに似ているとのことで「ノッチ」と呼ばれていた。

昨年9月11日を境にこのコンビは新たに原子力・立地本部長代理となった尾野昌之氏、広報部の司会担当者は主には石橋すおみ氏へと引き継がれた。尾野氏がニコニコユーザーから拝命したあだ名は「オノデン」秋葉原に店舗を構える家電量販店・オノデンにちなんだもので、石橋氏は「ノッチ子」あるいは「すおみん」と呼ばれている。ノッチ子は寺澤氏(ノッチ)の後任で、女性だからという意味らしい。

記者側のあだ名は東電の追求で有名なフリーの木野龍逸氏が「きのっぴ」、またニコニコ動画の七尾功氏は「7703(ナナオサン)」、「回答する記者団」代表の佐藤裕一氏が「怪盗さん」である。この他にガム子(某民放記者、会見中にガムを噛んでいるから)、電気子(業界紙・電気新聞の女性記者)などがある。

私はというと、暑い時期にTシャツの上にベストを着て会見に参加していたせいか「チョッキむらかみ」(というかチョッキって死語だろう)、質問時に「えーと」という口癖があるため「えーとむらかみ」とか言われていたらしいが、今はどうか知らない。

当初は会見に出られなかった日の内容を確認するためニコニコ動画を見ていたのだが、Twitter上で会見のやり取りを書き起こししている方々のツイートまとめをチェックする方が短時間で済むため、今は全く見ていないからだ。(だが、頻繁に視聴している某大手紙の知り合いの記者がわざわざ「コメント欄で……と言われていた」などと余計なことを教えてくれる)

 
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[キャプション]東電定例会見の様子。中央で立っているの
が現在のスポークスマンである原子力・立地本部長代理の尾
野昌之氏、右奥が広報部課長の石橋すおみ氏