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野田稔と伊藤真の「社会人材学舎」VOL.3NO.1
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野田稔と伊藤真の「社会人材学舎」VOL.3NO.1

2014-04-07 06:00

    野田稔・伊藤真の「社会人材学舎」VOL.3 NO.1
      
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    コンテンツ

    今週のキーワード
    「要介護上司」

    対談VOL.3  岩瀬大輔氏 vs. 伊藤真
    他人のほうがうまくできることは
    他人に任せよう。そして自分は、
    自分にしかできないことを恐れずやり切ろう

    第1回 司法試験に受かったコンサルタントがまずは誕生する

    企業探訪:理想のワークプレイスを求めて
    第2回 ライフネット生命保険
    その1:パフォーマンスもメンテナンスもわかりやすい組織

    粋に生きる
    4月の主任:「玉川奈々福」
    第1回 あのベタ記事が、協会のキャンペーンだったとは……

    誌上講座
    テーマ2 組織を活性化するリーダーシップ
    第4回: リーダーシップで一番大事なのは土壌づくりだ

    連載コラム
    より良く生きる術
    釈 正輪
    第9回 新興宗教と既存の宗教は何が違うのか

    Change the Life“挑戦の軌跡”
    「あられ屋です」。その言葉にプライドあり!
    第1回 「好きだから」、最もシンプルで純粋な起業理由

    NPOは社会を変えるか?
    第9回 「国境なき教師団」をご存じだろうか?
    ――公益財団法人CIESF(シーセフ)

    政治・行政にやり甲斐はあるか?
    4月のテーマ: 国政調査権と政治家の覚悟
    第1回 JR福知山線の脱線事故での陣頭指揮の意味


    今週のキーワード
    「要介護上司」

     大企業の管理職は、とかく主体性を失いがちのようだ。会議も部下がおぜん立てをして、準備してくれる。自分は手ぶらで出かけて報告を聞くだけ。会議を仕切ることもないし、今、何が問題なのかも本当にはわかってはいない。

     大企業ではそんな管理職がいわば当たり前の存在となっている。“組織自体が個人の能力をスポイルする”といわれるが、まさにそうなのだ。多くの管理職は、個人としての能力をスポイルされ、要支援、あるいは“要介護上司”になってしまう。

     事務処理もできない。コピーやファックスも扱えない。エクセルやパワポも無理……その代わりに発揮すべき、意思決定や部下育成など、マネジメント能力もない。さらに言えば、これまで阿吽の呼吸の中で仕事をしてきたから、論理的な説明力もない、人とのコミュニケーションも不得手とすれば、それはもう、フリーライダーといわれても仕方がない存在だ。



    対談VOL.3
    岩瀬大輔氏 vs. 伊藤真

    他人のほうがうまくできることは
    他人に任せよう。そして自分は、
    自分にしかできないことを恐れずやり切ろう

    本誌の特集は、(社)社会人材学舎の代表理事である野田稔、伊藤真をホストとし、毎回多彩なゲストをお招きしてお送りする対談をベースに展開していきます。ゲストとの対談に加え、その方の生き様や、その方が率いる企業の理念などに関する記事を交え、原則として4回(すなわち一月)に分けてご紹介していきます。

    今月のゲストは、ライフネット生命保険株式会社の代表取締役社長兼COOである岩瀬大輔氏です。
    同社は、何と第二次世界大戦後初、日本国内では74年ぶりに設立された独立系生命保険会社。現在のアクサダイレクト生命保険に次いで、国内2社目のネット生保。つまりは生命保険会社としてはごく珍しいベンチャー企業なのです。
    元日本生命のエリート、出口治明氏と、30歳のハーバードMBA卒業生である岩瀬大輔氏が組んだ誠に珍しい成功事例。今回は、その岩瀬氏に、恩師でもある伊藤真伊藤塾塾長(社会人材学舎代表理事)が聞きます。



    第1回 司法試験に受かったコンサルタントがまずは誕生する

    業界のタブーを破って
    新たな生命保険会社を作った

     それまでブラックボックスとなっていた「保険料の内訳」を公開。具体的には直接販売する保険商品に関して、保険料を純保険料と付加保険料に分けて開示した。後者はいわば生命保険会社の運営経費。これを開示することは、それまで業界ではタブー中のタブーであった。

     そもそもは、生命保険業界にある情報の非対称性をなくしたい。業界の常識を覆し、営業職員を持たず、インターネットで直接生命保険を顧客に提供するネット生保を作る。もって顧客が求める「シンプルでわかりやすく、安い商品」「利便性の高いチャネル」を実現したい。

     そういう思いから、保険業界のベテランと、業界から見れば若い新参者のコンビが設立した生命保険会社であるから、そうしたタブー破りは当然だった。
     そして、そうした姿勢はマスコミからも、市場からも歓迎された。

     2008年5月の開業から半年後、08年年末の「原価開示」のニュースがヤフートピックスで大きく取り上げられた。そして翌年の3月11日に発売された週刊ダイヤモンド誌上で展開された、ファイナンシャルプランナー20名に聞く「自分が入りたい保険はどれか?」という企画で、死亡保障部門の1位に同社の「かぞくへの保険」が選ばれたのだ。

     つまりは、保険のプロが自分が死亡保障で生命保険を選ぶならば、ライフネット生命の保険を選ぶと公言したわけである。
     この企画をきっかけに、同社は飛躍への道を登り始めた。

     同社の代表取締役社長兼COOの岩瀬大輔氏は、実は一般社団法人社会人材学舎の代表理事である伊藤真の伊藤塾での教え子であり、司法試験合格者でもある。

     彼は、弁護士の道を選ばず、経営コンサルタント、投資ファンドなどを経て、なぜ生命保険会社を設立したのか。さらにこの先、何を目指しているのか、親子ほどの年齢の違いがある出口治明氏との二人三脚は果たしてどのような効果をもたらせたのか。さまざまな角度から、彼の想いを聞き、そこから多くの示唆を得たいと思う。

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    親代わりの二人の大人が

    異口同音に口にした、「君は弁護士になれ」

    伊藤:なぜ弁護士にならなかったのか。そこを聞きたいのだけど、その前に、ではなぜ弁護士になろうとしたのか。その点について改めて教えてくれますか。
    岩瀬:人生の流れがあって、身近な大人の人たちに勧められたという経緯があります。
     小学校の頃、父親の仕事の関係でイギリスに住んでいました。その影響もあって、高校生の頃はずばり、外交官になりたかったですね。あるいは商社マン。ところが、高校3年の頃に、仲良くしていただいていた担任の先生と、もう一人、ひょんなことから知り合いになったジャズシンガーの女性から、別々に、あなたは弁護士になるのがいいと思うといわれたのですよ。
    伊藤:向いていると思われたのかな。
    岩瀬:そうですね。「向いていると思う」と言うのです。それがきっかけで司法試験を目指すようになったのですから、彼ら二人の影響は大きかったわけです。
    伊藤:なぜそう思うということだったのだろう。
    岩瀬:当時の担任の先生はたまたま新聞で、「エンターテインメント・ロイヤーが足りない」という記事を読んだらしいのです。海外とやり取りをする弁護士なので、私が向いているというわけです。
    伊藤:知財関連のロイヤーだね。
    岩瀬:そうですね。特に映画業界や音楽業界などが専門なのかもしれませんが、英語を流暢に話す弁護士というイメージだったのだと思います。それまでは司法試験などというものは眼中になかったし、分厚い本を読みこなすというイメージで、自分には絶対無理な世界だと思っていました。
    伊藤:もう一人のジャズシンガーというのは?
    岩瀬:ライブハウスとかジャズバーなどで歌う、ジャズのボーカリストですね。実は、僕はピアノを弾いていたので、少しだけそういう方面にもつながりがあったのです。先生には、高校の食堂に置いてあったピアノを時折弾いていたのを見られていたのですね。そんな自分を応援してくれていました。
     その頃は、両親は海外にいて、一人暮らしだったので、その二人の大人が、親代わりというと大げさですが、よく面倒を見てくれていました。
     で、そのお姉さんが、国際弁護士と名乗る人と会ったというのですね。そうしたら、僕を思い出した、似ているというのですよ。だからあなたは国際弁護士になりなさいと言うわけです。英語もできるし、よくしゃべるし、ペンも立つし……。
     二人とも強い理由があったわけではなく、イメージが僕に合うというだけだったのですが、何か、そういう理由も強く入ってくるものなのですね。
    伊藤:なるほど、そういう後押しがあって、じゃあ、弁護士もいいかと。背中を押されたわけなんだ。

    合格後を考えたら、
    弁護士ばかりがあるべき道ではないと知った

    岩瀬:とは言っても、大学に入ってからすぐに勉強を始めたわけではありません。ところが見回すと、高校の同級生は皆、勉強を始めているのですね。それこそLECの通信教育のテープなどを聞いて、勉強しているわけですよ。それで大学1年の秋くらいから僕も始めました。それで伊藤先生の授業も聞いていたのです。
     2年生になる頃に、「どうも、伊藤真が新しい塾を作るらしい」と聞いて……。
    伊藤:それで来てくれた。
    岩瀬:初日に並びましたね。会員番号53番でした。よく覚えています。
    伊藤:ありがたいですね。
    岩瀬:それで授業を聞いて、「本物だよ」って仲間と言い合っていました。それまではカセットテープだったし、しかも、倍速にして聞いていたりしたので、生声は新鮮でした。
     それからは塾とアルバイトとジャズのサークルの3カ所に入り浸る生活でした。3年生のときに、まず択一試験に受かって、夏休みにLECでバイトをし始めて、その後、論文試験に受かって、今度は伊藤塾でバイトするようになったのですよね。
    伊藤:何か、うちの塾のPR用の文章を寄稿してくれたことがあったよね。
    岩瀬:そうですね。覚えていますよ。「伊藤塾で私は何を学んだか」。後から振り返ってみてわかることなのですが、特に印象的だったことが2つありました。
     1つは合格後、どうありたいかを考えろということ。もう1つは、弱者を助けて、社会のためになる人間になれということです。それを、授業でも繰り返し聞くし、授業中でなくても、今度はテープで聞く。週何十時間も伊藤先生の授業を聞いているのですから、まさに洗脳ですよね(笑)。宗教のようなものなのですが、それでも、感情的ではなくてロジカルなので納得感が高いのですね。
     思い起こせば、そういう話のほうが、皆、顔を上げて聞いていたように思いますね。
     ノブリス・オブリージェというか、恵まれている者には責任があるということをとにかく学びました。もちろん、合格するための勉強やビジネスに役立つこともたくさん学んだのですけど、そうしたことのほうが大きくて、すごく考えさせられましたね。
    伊藤:そう言ってもらえると嬉しいね。洗脳と言うと言葉が悪いけど、私が本当に言いたかったことは、まさにそういうことだったからね。
     確か大学3年のときはずっとアルバイトをしてくれていたと思うけど。それから確か、アメリカに視察にも行ったね。
    岩瀬:そうですね。準合格者のような立場になってから、ずっとアルバイトスタッフとして伊藤塾に出入りをして、そのアメリカ行きは、実は転機でした。
     大学4年に上がる春休みで、日弁連の刑事弁護の先生方が、30~40人で視察団を作って、アメリカの司法制度を勉強しに行くというツアーだったのです。そこに伊藤先生と法学館の西澤社長が一緒に行くということで、僕を含めて、若い4人がお供をさせてもらったのです。
    伊藤:そうだった、そうだった。あれが転機になったのか。
    岩瀬:その時に、ハーバードやコロンビア大学などのロースクールの学生や、アメリカの法律事務所、検察庁、裁判官など、いろいろな人と話をして、大いに刺激を受けました。まず、日本語がしゃべれる人が結構いて、素直にすごいと思いました。それと、刺激的だったのが、質問の意図にも沿うところでしょうが、ロースクールを卒業して弁護士にならない人が結構いるということがわかりました。
    伊藤:確かに、欧米ではそうだね。企業経営者や政治家にもロースクール出身者は多い。
    岩瀬:経営コンサルタントになったり、都市銀行で活躍したり、政府の仕事をしたりと、いろいろなキャリアがある。ロースクールを出ても弁護士にならないほうが、むしろ格好いいとさえ思えたのです。
     それまでは、そんなことを考えもしませんでした。日本では司法試験合格は、最高峰といったイメージで、視野が広がるどころか、狭まってしまうのですね。弁護士こそが最高のキャリアだというふうに見えていたわけです。
     それでたまたまその前後に、コンサルティング・ファームでインターンをする機会があって、翌年、司法試験に受かるのですが、悩んだわけです。それで司法修習にはいつでも行ける。だからまずは就職しようと考えました。

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    自分のキャリアを決める上で、

    一番大事なのはロールモデルだった

    伊藤:法律事務所も回っていたよね?
    岩瀬:はい。弁護士としての専門は、企業法務がいいなと考えていました。それで法律事務所もいろいろと回ったのですが、残念ながら、そこで出会った弁護士先生に、「こうなりたい」というロールモデルが見いだせなかったのです。皆少し疲れていて、明るさがなかった。
     それに比べてコンサルティング・ファームでは、自分はこうなりたい、こういう人たちと働きたいと思える人たちに囲まれていたのですね。それで、2年くらいはコンサルタントとして働いて、それから修習所に行こうかなと思うようになったのです。
    伊藤:それでボストン コンサルティング グループ(BCG)に入った?
    岩瀬:BCGから内定をもらって、しばらく悩んでいたのですが、近藤剛さんという切り札がリクルーターとして颯爽と登場したのです。彼は、帰国子女で、東大法学部卒で、新卒でBCGに入って、その後弁護士になった人です。後に出馬しましたけど、その人に言われたのです。
    「弁護士もいいけど、いい弁護士になりたければ、まずボスコンに入れ!」って(笑)。
     すごく格好がよかった。彼が僕のロールモデルになったのです。彼が村上龍さんが主催していたJMMというメルマガに寄稿して、社会問題や政治経済に関わる問題について発信しているのを読んで、すごいなと思ったのです。僕もいつか、こういう問題について文章を書いて、発信していきたいと思いました。
    伊藤:大事なのは、“ロールモデル”というわけだ。
    岩瀬:そうなのです。BCGに入ったのも、彼というロールモデルがあったから、それを追い掛けたのです。
     キャリアにおいて、こうなりたいというロールモデルはものすごく大事だと思います。その後、両者を知っている人には、私が彼に似ているといわれます。しゃべり方とか、物腰とか。実際、文章をさまざま書いて発信するようにもなりましたし、自分でも彼を真似していると思います。
     それで進路を決めたわけですけど、ある時、伊藤塾の企画で、「明日の法律家講座」というのがあって、合格した後を考えようという趣旨で、久保利英明先生がいらしたのですね。久保利弁護士は、高校の大先輩なのです。懇親会に連れていってもらって、「司法試験受かったのに弁護士にならないのですよ」とある人にからかわれたのですが、ものすごく喜んでくれて、「お前、変わっているな。俺も1年間は放浪したよ」と言われました。
    伊藤:そうそう、アフリカに行っていたね。
    岩瀬:それで、「お前、頑張れよ」と言われて、それが22歳の時です。それでライフネット生命を作った後に、顧問弁護士になってくださいと言いに行ったのですよ。改めて紹介してもらって、「覚えています?」と聞いたら「覚えているよ」と言ってくださって、今でも株主総会の前のリハーサルでは厳しくご指導いただいています。
    伊藤:なるほど、自分が弁護士になる代わりに、先輩の偉い弁護士を指名する人間になったわけだね(笑)

     
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