便利な世の中になったものだ。
人類は、動物の丈夫な皮膚を失うかわりに、気温に応じて細かく暖かさを変えられ、その上、ドブネズミからヒョウまで模様も変えられる衣服を発明した。
動物の鋭い聴覚を失うかわりに、必要に応じて補聴器から耳栓まで聴覚を調節できるようになった。視覚も、望遠鏡から顕微鏡まで、暗視鏡からアイマスクまで調節できる。
動物の速く走る能力を失うかわりに、人類は用途に応じて多様な移動手段を発明し、陸上だけでも、レーシングカーから車椅子まで、乳母車から霊柩車まで使い分けられるようになった。
中でも目ざましいのは、知的能力を増強したことだ。