閉じる
閉じる
×
子どものころ、ほとんど何も分かっていなかった。いまと同じである。
大人は確固とした世界観、倫理観をもち、明確な原理に基づいて行動していると子ども心に思っていた。そうでなければ、わたしにはどうでもいいように思えること(たとえば弟と将棋をするなど)に父がなぜ激怒したのか、説明できない。初めて訪れた外国で自分の知らないゲームをしているのを見て怒ることができるだろうか。世の中の仕組みや善悪の基準がはっきり分かっていなければ、怒る理由がない。天才棋士への道を断たれたわたしは大人には善悪の明確な基準があるに違いないと思っていた。
だが大人になって分かったが、何事についても確固たる基準や原則はなく、気まぐれで怒り、行き当たりばったりで暮らしている人ばかりだった。わたしもめでたくその一人になった。
この記事は有料です。記事を購読すると、続きをお読みいただけます。
入会して購読
チャンネルに入会して、購読者になればこのチャンネルの全記事が読めます。
入会者特典:当月に発行された記事はチャンネル月額会員限定です。
週刊文春デジタル
更新頻度:
毎週水,木曜日
最終更新日:2024-11-01 18:00
チャンネル月額:
¥880
(税込)
ニコニコポイントで購入
この記事は月額会員限定の記事です。都度購入はできません。