週刊文春デジタル
寺田農(みのり)が亡くなった。
教養と知性と狂気とを内包した独特の眼差しと、なんともいえない太々しい雰囲気が、この名優の若手時代から晩年まで一貫した魅力だった。そのため、チンピラ、殺し屋、軍師、権力者、粋人、腹の底の見えない野心家――幅広い役で凄みを見せつけている。
また、声の仕事も素晴らしく、ナレーションも得意だった。明瞭な口跡に加え、声だけの時もあの知的で太々しい感じは漂っていたため、彼の語る内容は「真実」として有無を言わさないものがあった。その説得力の高さは、寺田が師と仰いできた三木のり平をして「したり顔というのはあるが、お前の声は《したり声》だ」と評さしめたという。
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