新東宝の戦争映画といえば、前回の『明治天皇と日露大戦争』のような、天皇を軸にした復古調の内容ばかりだという印象を持っている年配の方も少なくないかもしれない。
 ただ、それは大蔵貢が社長に就任して自ら企画に携わるようになった一九五六年の『軍神山本元帥と連合艦隊』以降のこと。それ以前は、どちらかといえば、正反対の作風であった。つまり、戦地で死にゆく者たちの葛藤を描いた、反戦メッセージの強い戦争映画を作っていた。
 今回取り上げる『戦艦大和』も、そんな一本だ。 
週刊文春デジタル