週刊文春デジタル
真田広之はデビュー以来、飽くなき挑戦心をもってさまざまに役柄の幅を広げていった。そして、四十代を迎える二〇〇〇年前後には早くも、その芝居は円熟味すら感じさせるようになっていた。
だがその一方で、日本映画は真田の成長に反比例するように、その質もスケールも、大きく落としていく。そのため一観客、一真田ファンだった身としては当時、「真田広之の表現力に映画の中身が追いついていない」という実感があった。劣化が著しかった日本映画のちっぽけな枠に、もはや真田は収まらないように思えた。出演作を観る度に実力を持て余し気味に映り、もったいない気がしていた。
そうした中でも刺激的だったのが、悪役だ。作品そのものをも凌駕する存在となった真田が悪として立ちはだかれば、それは最強の敵として映し出されることになり、必然的に作品はスリリングに盛り上がる。そう気づかせてくれたのが九九年のテレビドラマ『刑事たちの夏』だ。真田は黒幕の官僚を嫌らしいまでに冷徹に演じ、役所広司や大竹しのぶすら圧倒していた。
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